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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター5 2年生編 / 二学期
68/105

M57 準備をしよう



 お料理倶楽部に生徒会から依頼が来ましたとさ。


『お料理倶楽部で料理の提供をして貰えませんか?』




 ・・・いやいや、そんな余裕は何処にも無いんですが。




 とも言えずに、外面の良いあたしは見た目クールビューティーの副会長様に


『承りましたわ。』


 と微笑んで受けてしまったんだ。




「で、どうするの?」


 高等部の厨房にお料理倶楽部のメンバーが集まる中、セーラが尋ねてくる。


「うーん・・・。」


 唸るあたしの横でフレアが呟く。


「レイナー様達もアリエッタさん達もご自身のクラスの出し物が有るし、私達も仮装喫茶の方の食事提供が有るし・・・。」


 アイナが問題点を口に出してみる。


「人手よね。みんなクラスの出し物に対して何らかの役割を与えられているから、此方に掛かりきりになれない。」


「うーん・・・時間割を作ってシフトを当てるしかないか・・・。」


「・・・なんて?」


 レイナー様が首を傾げる。


「2日間の担当を時間で区切ってみんなに振って行きます。」


「・・・?」




 頷いてるけど、表情を見る限り良く判ってないな。


「つまり、みんなのクラスの割り当てを最優先にして貰います。2日間、丸々外れられない人はクラスの出し物に掛かりきって下さい。」


 何人かがホッとした顔になる。


「手が空く時間の有る人達で、調整しながら担当者を決めて行きましょう。」


 みんなの表情が得心のいったモノに変わる。


「じゃあ、一度みんなで作れそうな時間を確認しましょう。そして明日ソレを教えて貰います。」


 あたしがそう纏めるとみんなが頷いた。




 まあ、いい顔したかったのには、ちゃんと理由が在るんだけどね。




 生徒会の要望を快く引き受けて上手く熟せば評価が上がって部費が増える!是れが一番の狙い。ソレに些細な事かも知れないけど存在感をアピール出来るんだよね。


 そうしておけば、来年以降にアリエッタちゃん達がお料理倶楽部を継続させていきたいと望んだ時、活動して行き易いと思うんだ。




 ま、取り敢えずの流れは決めた。


「あとはメニューか・・・。」


 あたしは呟く。


「・・・あんまり沢山のメニューを用意しても対応出来ないよね。」


 マリが言う。


「そうね・・・。この前の勧誘会みたいな感じで良いんじゃないかしら?」


 セーラがそう言うと、1年生の子達が眼を輝かせる。


「あの・・・部長。」


「なあに?」


「私達、其れが良いです。」


「其れって勧誘会の事?」


「はい。」


 新しく入って来た子達の眼がキラッキラしてる。


「あの一体感に憧れてるんです。」


 ああ、そういうこと・・・。




 うーん、でもなぁ・・・。


「アレ、大変だよ?戦場になるからね?」


「大丈夫です!頑張ります!」


「・・・。」


 勢いに圧倒されてあたしが口を閉じるとセーラが笑った。


「1年生が『是非に』と言うなら、もうソレしか無いでしょ。あの時は私も楽しかったし、もう1度味わいたいわ。」


「・・・。」


 セーラを見て2年生達を見る。




 みんなの期待の視線を受けてあたしは苦笑した。みんな物好きだなぁ。


「じゃあ、そうしましょうか。」




 一気に出し物まで決まってしまった。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 前々から何となく思っていたけど、この世界の貴族はあたしが本で読んだ中世ヨーロッパの貴族の様な、堅苦しいイメージが無い。


 例えば貞操観念も若干緩いし、意識に於いて貴族と平民の間に決定的な格差がある訳でもない。要は貴族が平民に馴染んでいるんだ。




 学園でも「オホホ笑い」は殆ど聴かない。言葉遣いは丁寧だし相手を敬いながら話すスタンスはイメージ通りだけど、其れでもかなりフランクだ。


 口を開けば家自慢に終始したり身分を大事に考えたりと、ウザい部分も有るには有るけど、思ったよりは随分と付き合いやすい。




 そのお陰かどうかは知らないけど、こういう学園祭でも現代と変わらないノリで楽しむ事が出来るのは嬉しい。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




「多分ね、ソレは違うよ。」


 だから夜に部屋でマリに真っ向から即否定されてあたしは面喰らってしまった。




「え・・・違うの?」


「うん。私、前にセーラさんから去年の学園祭の話を聴いたの。」


「うん。」


「そしたらね、あんまりクラスの人達は出し物には乗り気じゃ無かったんだって。」


「へぇ・・・。」


「他のクラスの人達も似た感じのこと言ってた。」


「へぇ・・・。」




 そうなんか・・・。


 ウチのクラスはあんまりそんな感じはしなかったなぁ。えっと・・・エロルだかエルロだかのあの一派くらいじゃなかったっけ?やる気無かったのは。あとはみんなノリノリだった様な気が・・・まあ、いいけど。




「つまりね。」


「あ、うん。」


 いかんいかん。マリの話がまだ途中だった。




「ヒナちゃんがみんなを盛り上げて引っ張ってってくれてるんだと思う。」


 ・・・。


 いや、ソレは違うでしょ。


「いや、ソレは違うでしょ。」


 心の中の感想をそのまま口にする。


「あたしは寧ろ『嫌だ嫌だ』って言ってるような気がするけど・・・。」


「うん、最初はね。でもヒナちゃんって気分が乗ってくると、何だかんだでアイデア出してくれるし、成功までの道筋を引いてくれるし、問題も解決してくれるしで、一緒にやってるとなんか楽しくしてくれそうな、そんな気がしてくるんだよ。」


「・・・。」


 色々とやり過ぎてるんだろうか?




 まあ、でも楽しいのが一番だから良いんだけどさ。




 うーん・・・でもそうすると、今後もあたしは色々と役割を振られるという事に・・・。基本的にあたしは後ろから付いて行く方が楽で好きなんだけどなぁ。




「うーん・・・。」


 コタツに頭をくっつけてムニャムニャと動かす。


「・・・ふふ。」


 やべ、マリに笑われてしまった。




 あ、そうだ。マリに1つ確認をして置こう。確認するまでも無いんだけど。




「ねえ、マリ。」


「なあに?」


「最近、元気無いね。」


「え、そう?」


 マリが首を傾げる。




 ああ、今の言い方だとピンと来ないか。確かに元気が無いって訳じゃ無いもんね。ええっと・・・。


「元気が無いって言うか・・・2学期に入ってテンションが以前に戻ったと言うか・・・。」


「そうかな?」


「うん。修学旅行からコッチ、夏休みくらい迄のマリってさ、羽目が外れてるって言えるくらいにテンションが高かったけど、今はソレが無くなった。」




 最初は何でか解らなかったんだけど、直ぐに理由が解った。




「・・・。」


 マリの視線が揺れる。


 あ、あたしの言いたい事が解ったかな?




 あたしは答え合わせをした。


「ゲス王子が復学してるね。」


「!」


 マリの顔が少しだけ引き攣った。




 やっぱりソレが原因か。嫌な奴が戻って来たら、そりゃテンション下がるよね。




「まーりちゃん。」


 あたしはニコニコ笑顔でマリを見つめる。


「・・・。」


「あたしが居るよ。」


「!」


 あたしがそう言うとマリの顔が一瞬だけ歪み泣き笑いみたいな表情になった。


「・・・うん。そうだね。」


 心の底から嬉しそうな笑顔が見られてあたしは超満足だ。


「マリ、今年の学園祭も楽しくしようね。」


「うん。」


 銀髪美少女が顔を赤らめて微笑む姿って・・・いやぁ、眼福眼福。




「・・・。」


 マリが無言で手を伸ばしてきて、机の上で手遊びしていたあたしの手を握った。


「!」


 ちょっと驚いて思わず手の動きが止まる。


「・・・。」




 コタツを挟んであたしとマリ、2人は暫く無言で手を繋ぎ合った。


「・・・大好き。」


 マリはそう呟くとあたしの手を離して立ち上がり自室に向かい始める。


「・・・。」


 あたしが無言でその背中を見送ると、マリは足を止めてコッチを見た。




 銀髪の美少女は、途轍もない情熱をエメラルドグリーンの双眸に湛えていた。その余りの美しさに息を呑むあたしに微笑みながらマリは言った。


「おやすみ。」


 そして静かに自室に消えて行く。




 ・・・し・・・心臓が爆発するかと思った。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 翌日からあたしは精力的に学園祭に向けての準備に勤しんだ。昨晩のマリの微笑みが何だか凄い力をあたしにくれている。




 さて仮装喫茶の方は衣装の採寸も済んでいて、予定では1週間後には届けられる手筈になっている。あとは喫茶の中心とも言える飲み物の類いだ。




 食通連でアイナとセーラに茶葉を選んで貰ったけど、選定したのは2種類だけ。前世の呼び名で言うとダージリンとアールグレイ。




「最低でも後7種類くらいはメニューを揃えたい。」


 あたしがそう言うとクラスのみんなが意見を出し始める。




 1つはフレアお勧めの黒豆茶が決まった。所謂コーヒーね。アレ、メチャクチャ苦いんだけど成人男性にはかなり人気のある飲み物。なんでアレのブラックを平然と飲めるのかが理解出来ない。




 担当はエオリア様とエリオット様。


 普段からブラックで飲んでいると、アイナとフレアから聴いている。


 2人は今日から美味しい淹れ方を研究するらしい。当然、アイナとフレアが付き添う。


『ウインナーコーヒーをメニューに入れるよう提案してくれ。』


 あたしはこっそりアイナとフレアに頼んで置いた。


 あの2人からの提案なら『コーヒーに何かを入れるなど邪道』と言って憚らない2人も受け容れざるを得ないだろう。




 あと6種類。ハーブティーとフルーツジュースで粗方は決まった。この紅茶類の幾つかにフルーツ果汁を垂らしてフルーツティーも加える。




 後は誰が茶葉を用意するかと器具の用意だ。みんな貴族だけあって、慣れ親しんだ紅茶に対しては妥協をする気が無いらしく意見交換と役割の振り分けは白熱していた。


 因みにこの辺、あたしは蚊帳の外。だって善し悪しが判んないモン。


 どんどん決めて行ってくれるみんなを頼もしく思いながらニコニコと眺めていた。




 ヤバい。去年よりメチャクチャ楽だ。ソレにみんなやる気に満ち溢れていて凄く楽しい。




 冗談抜きでクラスの出し物はみんなに任せて大丈夫そう。それに食べ物の方もクッキー類とパウンドケーキ系で良さそうなのであたし達5人から見れば然程に難しいモノじゃ無い。これはイケる。






 さてお料理倶楽部の方だけど。




 全メンバー65人中、参加が難しそうな人が7名。みんな同じクラスの人で去年のあたし達の様に小講堂を借り切って劇をやるらしい。ああ、それじゃあ抜け出す暇が無いよな。


 因みにタイトルは『星に願いを』・・・確か熱烈なラブストーリーだった筈。


 その名前を聴いたときにマリとセーラの目が輝くのを見逃さなかったぜ、あたしは。ホントそれ系が好きだな。




 ソレはともかく。残りの58名を慎重に割り振らなくちゃならない。特に1年生は入部したばかりの子が殆どだから、一瞬でも1年生しか居ない時間を作っちゃダメだ。あと、料理を作るのは敢くまで2年生が前提なので、必ず2年生の人数が多い状態を作っておく。まあ、普通に2年生は1年生の倍くらい居るので必然的にそうなるんだけど。




 とは言え、みんな入って来られる時間も居られる時間もバラバラなので、極端に人数が減る時間が在ってもマズい。




 うーん・・・コレ意外と面倒臭え。


 あたしはウンウン言いながら丸1日掛けて割り振った。




 そしてメニューを決めて行く作業。基本的には1年生達の要望通り、勧誘会で出した料理を出す方針だ。アレ意外と評判良かったし、まあ良いんじゃないかしら。




 なんだかんだで授業と準備を並行させながら熟している内に1週間が過ぎた。






「衣装合わせするよー。」


 そんなある日のフレアの陽気な声がクラス全員の意識の全部を持って行った。




 今回は去年と違って全員が仮装する。量が半端ない。


 男子が次々と置いていく箱の上に、タイトルが書かれている。各々が自分が扮する衣装を手に取っていく。


 更衣室は男女に分けて既に用意しているので、みんなイソイソと衣装を持って更衣室に足を運んでいく。




 去年のリトル=スター組はみんな違う物語の衣装を選んでいる。クラスメイトからは反対されたけどさ、やっぱ違うのを着たいじゃない?




 つー訳でマリは『星に願いを』からヒロインのオルエッタさん。セーラはリトル=スターからアルテナ様。アイナは『生の慟哭・死の欠片』から悲劇のヒロイン・アウローラさん。フレアは『神々の黄昏』から剣の美姫エリエーン様。




 みんな可愛くなるんだろうなぁ・・・。




 そんであたし。『帝王の咆哮』から覇王エーランド。近隣諸国に虐殺王として恐れられた王様だってさ。




 ・・・なんでだよ・・・。あたしは其処までマスラオじゃねーよ(泣)





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― 新着の感想 ―
[一言] >うーん・・・コレ意外と面倒臭え。 シフト管理は大変です。 >あたしは其処までマスラオじゃねーよ(泣) 「マスラオ」と言えば「うさみみ」(ぉ)
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