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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター4 2年生編 / 一学期
58/105

M50 湖



 さて邪念は振り払って真面目にやるか。何しろ水の事故はマジで危険だからね。




 此処で1つ考える。




 泳げない人が泳げる様になる課程において、一番の最難関は『息を止めて水に潜って目を開けられる様になる』ところだ。


 コレが出来なくてみんな泳ぎ方を学ぶレベルに達せない。じゃあ何で出来ないのか。答えは簡単。水が怖いからだ。


 つまり水への恐怖心を取り去る事。コレが肝心要。




 でもマリは一番難しいココをクリア出来てる。


 なら後は泳ぎ方を教えるだけ。そしてこの子はハイスペック少女だ。教えた事は直ぐにモノにする。これじゃあ特訓と言うのが烏滸がましいレベルだ。




 まあ、いいや。一応確認して置こうかな。




「じゃあ、マリ。水の中でジャンケンをしよう。」


「ジャンケン?」


「そう。先ずマリが潜って。そしたらあたしも潜るから水中ジャンケンしよう。」


「解った。」




 マリは頷くと勢いよく水に潜った。


 続いてあたしも水に潜る。ボヤけた視界の中でマリが水中に浮かんでいるのが見える。


 あたしが腕を動かすと、マリもあたしの腕の動きに合わせてくる。




 ――ジャンケンポン。あたしはチョキでマリはグー。ちぇ、負けちまったぜ。




 あたしが立ち上がると、マリも立ち上がってきてニッコリ笑った。


「私の勝ちだね。」


「だね。」




 うん。まったく問題無い。




 その後、あたしはマリの手を引いて基本的なバタ足を教える。


「腿から動かしてね。」


「うん。」


 普段から足腰を鍛えているだけあって、マリのバタ足から上がる水飛沫は力強い。うん、推進力は充分。


「じゃあ、手を放すから、水に顔を浸けてそのまま進んでみて。」


「え・・・?」


 不安顔になるマリにあたしは安心させる様に微笑む。


「大丈夫。足が着く場所だし、あたしが直ぐ後ろから追い掛けるから。1人じゃ無いよ。」


「うん、わかった。」


 ちょっとだけ緊張した面持ちでマリが頷いたので、あたしはそっとマリの手を放す。




 顔を水に浸けたマリが、そのまま結構な速度で前に進んでいく。


 ホラ、もう泳げる様になった。


 優秀過ぎる弟子にあたしは苦笑いしながら、顔を上げたままのブレストストロークでマリを斜め後ろから見守る様に付いて行く。




 っつーか、長くないか?結構進んだぞ?息は保っているのか?




 少し心配になった頃、マリが立ち上がった。




「・・・ハァ・・・ハァ・・・。」


 肩で息をしながらマリが進んできた行程を振り返り、あたしを見た。




 あたしも立ち上がって笑って見せる。


「お疲れ様。随分と泳いだね。」


「・・・。」


 マリがあたしに抱きついた。


「やったぁ、嬉しい。ヒナちゃん、ありがとう。」




 オッフ・・・胸の膨らみが・・・いやいや。




「後は息継ぎを覚えれば体力の続く限り、何処までも泳いでいけるよ。」


「うん。」


「やってみる?」


「やる!」


 クッソ、笑顔がマジ可愛いな。




 せっかくバタ足を身に付けたのでそのままクロールを教える。腕を回転させる時のポイントと水の掻き方、ソレに息継ぎのタイミング。




「息を吸うときは水の中で肺の空気を吐き出してから、真上を向く位の気持ちで勢い良く頭を振りかぶってから息を吸って・・・そうそう。」




 スイミングスクールで教わった事を思い出しながらマリに伝えていく。




「ヒナちゃん、息継ぎが大変。」


 あたしに訴えてくるマリに微笑む。


「慣れれば自然と出来る様になるわよ。」






 それからマリは夢中になって泳ぎ続けた。


 あたしは其れを眺めながら昔の自分を思い出す。


 泳ぐのは割りと好きで熱心に通っていた記憶がある。スクールの最上級コースに移動してからは毎週の様に同コースの人達とメドレーリレーをして楽しんでたっけな。後はどれだけバタフライを華麗に泳げるかを競ったり。中学に上がってスクールは辞めてしまったけど、なかなか良い思い出だったわ。




 気が付くとマリは随分とスムーズに泳げる様になっていた。


「あらら、モノにしちゃった。」


 マリのハイスペックぶりにあたしは苦笑を漏らす。




 あたしは波打ち際で腰まで水に浸かりながらペタンと座る。


 あたしが知っている海とは違って波が小さい。浜辺に砂は無くて、代わりに有るのは河原で良く見る丸い小石で埋め尽くされた浜辺の風景だ。




 海より水も冷たいけど暑がりのあたしには心地良い。両腕を後ろに着いて上半身を支え、両脚を投げ出す。強い陽差しとソヨソヨと吹く風に身を晒し、名も知らない虫の鳴声に耳を傾ける。




「はぁ・・・はぁ・・・。」


 満足したのかマリが荒い息を吐きながら上がって来た。




 うん、エロいわ。水着が透けてんじゃん。セルマさんが言っていたサポート代わりの下着が見えてるよ。


 ・・・ン?ひょっとしてあたしも!?


 と思って自分の胸を見たけど大丈夫。透けて無かった。






「お疲れ。随分と泳げる様になったね。」


 あたしが言うと疲れた顔に笑みを浮かべてマリは頷いた。


「うん、ヒナちゃんの教え方が上手だから。」


 まあ、教え方が理に適っていたのは間違い無い。だってスイミングスクールの先生が教えてくれた事をまんま伝えたんだし。


 でも習得までの時間が相変わらず早いのはマリのスペックの高さよね。




「ふふ。此れで悪党に襲われても水の中に飛び込んで逃げられるね。」


「あ、そっか、そうだね。」


 マリがハッとなって頷く。




 にしても。何で座らないの?


 マリはじっとあたしを見下ろしている。お顔が赤いのは気のせいでは無いよね?




「マリ、座らないの?」


「う、うん、座る。」


 マリはモソモソとあたしの隣に腰を下ろす。




「あのね、ヒナちゃん・・・。」


「うん?」


「水着、透けてる。」




 え!?あたしは自分の身体を見る。・・・いやいや、やっぱ透けて無いじゃん。


「嘘ばっかり。」


「ホントだよ。胸じゃなくて下の方が。」


 !?


 あたしは慌てて立ち上がって確認した・・・。うわっ!マジだ!マジで透けてる!さっきは水と光の具合で見えなかったのか!?


「わっ!」


 思わず叫んでまた慌てて水の中に腰を下ろす。




「ね?」


 マリが紅い顔で同意を求めてくるけど・・・。


「マリも透けてるよ。マリは上も下も透けてる。」


「!?」


 マリは自分の姿を確認すると


「ぎゃあ!」


 と珍しい叫び声を上げて両腕で上と下を隠す。




 成る程、セルマさんが「人前では着るな」と念を押す訳だ。


 まあ、この世界の倫理的観念から考えれば透けてようが透けて無かろうが、この水着姿を他の人に見せられる訳無いんだけど。見られた相手がマリじゃ無かったら大惨事だ。


 ・・・倫理的に商品化は当然出来ないけど、其れにしたって未だ未だ改良の余地は在りそう。




 に、してもだ。


 真っ赤な顔をして身体を隠す銀髪美少女・・・絵になるわぁ。




「マリちゃん、めちゃくちゃエロい。」


「ヒナちゃんもエロい。」




 思わず顔を見合わせて笑ってしまう。




「きっと乾いたら見えなくなるよ。」


 安心させようと思ってあたしがそう言うとマリは「そっか。」と呟いた。




 あたしの胸の部分だけ透けて無かったのは乾いていたからだと思う。




「パシャリ」


 水が飛んできた。


「わっ」


 ビックリしてマリを見るとマリが悪い笑顔であたしにもう1度水を掛けてくる。


「ちょ・・・マリ。」


 あたしが腕で水を防ぐとマリが言った。


「じゃあ、濡らしちゃえばヒナちゃんも私と同じだね。」




 その後はキャーキャー言いながら2人で水の掛け合いっこが始まった。やっば。ちょー楽しい。




 マリが逃げるあたしに後ろから抱きついてきた。


「うわっ」


 バランスを崩して倒れそうになるのをマリが支えてくれる。




 けど、そのまま離してくれない。


「マリ?」


「・・・ヒナ・・・。」


 うわっ。呼び捨てモードになってる。いつも急だな!




「マ・・・マリ、何で急に・・・?」


 思わずマリの腕を掴む。


「ヒナが・・・あんまりエッチで可愛いから・・・。」


 いや、なんもしてないけど。




「それに・・・。」


 それに?


「暫くは御実家に居るでしょ?・・・今しかチャンス無いもん。」


 ソッチが本音か。




 制限が掛からなければ普通に我慢出来るけど、いざ制限が掛かっちゃうと我慢出来なくなるって言うアレか。人の心って複雑よの。・・・ってそんな場合じゃ無い!




 どうする?どうするよ!




 マリの手がスッと動いてあたしの膨らみに触れる。この体勢、修学旅行の夜と同じ格好じゃん!めちゃくちゃドキドキしたあの時と同じじゃん!




 あたしだって我慢してたんだ!


 もういいや!




 あたしはマリの腕を掴んでいた手を離した。マリに任せる。後ろのマリがどんな顔をしてるか分からない。でも、強く背中に押し当てられる胸と甘い吐息はマリを感じさせるに充分だ。


 彼女の繊やかな指があたしの両の膨らみの上を踊る。




「・・・ッ!」


 思わず声が漏れそうになる。


 彼女の柔らかな唇が後ろから首筋に押しつけられる。そのまま舌が首筋を這っていって、耳に届く。吐息がより強く感じられる。


「うあっ」


 思わず身体が仰け反った。


 ダメ。立ってらんない。




 しゃがみ込もうとした時、マリの腕があたしのお腹に回ってグッと力が入り、しゃがむのを阻んだ。そして艶っぽい声が耳元に囁かれる。


「・・・座っちゃダメ。」




 そんな事言われても・・・。あたしはガクガクと震える脚に何とか力を込めて立ち続ける。




 息が荒くなるあたしをマリが覗き込んで小さく尋ねてくる。


「ヒナ、気持ちいい?」


「・・・うん。」


 あたしが頷くとマリは「そっか」と満足そうに呟く。




 あたしの膨らみの上を動いていたマリの手が移動して、あたしの太腿の上を這い回る。その手がやがて脚の付け根に・・・。


「マ・・・マリ・・・!」


 あたしはマリの手を掴んで首を振った。


「そ・・・ソコは恥ずかしい。」


 そう言うとマリは直ぐに手を退かしてくれた。




「・・・ハァ・・・ハァ・・・。」


 あたしは肩で息をしながら身体をクルリとマリの腕の中で入れ替える。




 あたしと視線が合うと、忽ちマリの顔がこれ以上無いってくらいに紅く染め上がる。


「マリ・・・。」


 あたしは彼女の名を囁くと、その柔らかな唇に自分の唇を落とした。


 そしてそのまま吸い付いていく。


「む・・・う・・・。」


 喉から漏れるマリの声があたしを加速させる。




 あたしは彼女の両脚の間に自分の脚を差し込むと、腿を彼女に押しつけた。さっきマリが手であたしにやろうとした事を脚を使ってやり返す。


「ひゃっ!」


 マリは心底驚いたのか可愛い声を上げて身を引こうとする。けど、あたしはグッと抱き締めて逃さない。


 そのまま脚で刺激し続けると、マリが身体を震わせながらあたしの名を呼ぶ。


「ヒ・・・ヒナ・・・。」


 あたしの肩を掴む手に力が入って痛いくらいになる。


「マリ、可愛い・・・。」


 囁くと、マリの身体がビクンと震えて全身の力が抜ける。




 あたしは崩れ落ちそうになるマリの身体を慌てて支えた。


 ・・・ちょっと虐め過ぎたかな?






 疲れて小石が敷き詰められた浜辺に上がるとあたしは腰を下ろした。マリもその隣に座る。


「少し乾かそう。」


「・・・うん。」




 お日様ぽかぽか。あったかい。


 さっきまでの、トンデモナイ欲情が嘘の様に収まっていく。




「・・・。」


 ん?マリちゃん?




 マリは真っ赤な顔であたしに向けて揺れる瞳で見つめてくる。


「・・・さっき、あんな事・・・。」


 あ、やべ。スッキリしてるのあたしだけ?


 マリから仕掛けてきたから、てっきり良いのかなと思ったんだけど、自分がされるのはイヤだったかな?


「ああ・・・ゴメン。イヤだった?」


「ううん。」


 マリは首をふる。


「その・・・良かった。」


「そ・・・そう・・・。」


 ポソリと感想を言われて、なんかあたしも恥ずかしくなる。誰かにああ言う事したのは初めてだったけど、嫌な思いをさせなくて良かった。




「でも・・・。」


 マリはジロリとあたしを見る。ん?なんか視線の雰囲気が変わってない?


「あんな方法を知ってるなんて、ヒナちゃん前世でああいう事した事あるの?」


「な!?・・・無いよ!」


「ホント?」


「ホントだよ!ホントにマリが初めて!」


「・・・」


 マリの頬が緩む。


「そっか。」


 嬉しそうに微笑む。


「私が初めてか・・・。」




 ああ、クソ!可愛いな!もっと虐めたいゾ!




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 その夜、マリがお父様に呼ばれて2人で何かを話してた。まあ、何の話かは想像が着くから知らん顔して置こう。きっと、今後の事についてだろうから。




 なんて思っていたら話し終わったマリがあたしの部屋に飛び込んで来た。


 なんかスゲー泣いてる。




 マリは


「ヒナちゃん!」


 と叫ぶとあたしを思いっきり抱き締めてきた。


 痛い!痛い!


「マ・・・マリちゃん、痛いって。」


「ヒナちゃん、有り難う!色々・・・ホントに色々と有り難う!」




 ハハハ・・・喜んでくれて何より。でも、痛いよマリちゃん。






 一週間の滞在期間はあっと言う間に過ぎ去った。楽しい日々ってあっと言う間に過ぎちゃうよね。




 ちぇ、願わくばあと1回くらい水着を着たかったな。







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