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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター4 2年生編 / 一学期
53/105

M45 婚約事情



「!!?」


 まさかの此のタイミングでのノック音に、あたしとマリは心底仰天した。




 お互いにバッと身体が離れ、あたしは扉に向かって返事をする。


「ゥヒャ・・・ハ・・・ハイ!」


 噛み捲り、裏返り捲りの声を出しながら扉を開けると、ソコにはアイナが1人で立っていた。


「あ・・・あら、アイナ。いらっしゃい。」


「・・・うん・・・お邪魔して良いかしら?」


 ん?


 何か様子が変だ。


「ええ、どうぞ。」


 あたしはアイナを部屋に導く。




 パタパタと紅茶とお菓子を用意したマリにアイナはお礼を言うと、紅茶を一口含んだ。


「・・・」


 コタツに入って、あたしとマリは視線を合わせる。




「・・・急にご免なさいね。」


 アイナが口を開く。


「あ、いや、良いんだけど・・・何かあったの?」


 あたしが尋ねる。


「う、うん。」


 アイナがコクリと頷く。


 落ち込んでいるって様子では無いけど、なんか戸惑っている様な感じ?


「アイナ?」


 あたしの声にアイナは意を決した様な表情であたしとマリを見る。


「あのね、エリオット様がね、今度・・・実家に来ないかって言ってきたの。」


「え・・・」


 マリが口を両手で覆う。




 おお・・・エリオット様、遂に動いたか。まあ、エリオット様の気持ちはわかる。




 実際、アイナを狙う御令息は多いと思う。


 スタイルは今更言うに及ばず、顔の造形も艶っぽさが滲み出ていて男心を擽るような造りだし、性格は見た目に反してかなり清純。


 そして実家のシルバニー子爵家は、領内で発見された大鉱脈を元手にハナコ商会と直接取引をしていて、財力的にも飛ぶ鳥を落とす勢いだ。鉱脈地帯を中心に大規模な町造りも急ピッチで行われているとか何とか。




 先を越されては叶わないとエリオット様も必死だったと思う。どう見てもアイナ個人にベタ惚れだったもん。




「そっか、良かったね。」


 あたしが返すとアイナは少し不安そうな表情になる。




「コレってどう言う意味かな?」


 ・・・は?




「いや・・・どう言う意味って・・・どうもこうも・・・。」


 訊かれた意味が判らなくて口籠もるあたしを、アイナは不安そうに見つめる。




 あれ?・・・ひょっとしてエリオット様、アイナに実家に誘う理由を話してない・・・?




「ねえ、アイナ。エリオット様は実家に招く理由を話していないのかしら・・・?」


 あたしが尋ねるとアイナはコクリと頷いた。




 Oh・・・。あたしは呆れる。




 エリオット様・・・。聡明な方だけど、女性の心の機微には疎いと言うか、ヌケてる処があるのね。


 多分、今までの関係から『言わなくても意味を判ってくれる』くらいに思っているのだろうけど、心を寄せる殿方の実家に招待されるなんて言うのは女性にとっては大事件な訳で・・・だからこそ、確りと招待する目的を告げて欲しいモノなのですよ。


 そうじゃ無いと、実家への招待が婚約者候補としての両親への紹介・・・等では無く、単なる遊びの誘いだった時に受けるショックが計り知れないですからね。




 まあ、エリオット様の様に普段は気の利く方の、意外な疎さは可愛らしく感じるけど。




「判ったわ、アイナ。あたしから其れと無く訊いてみるから。」


「ヒナ・・・ありがとう・・・。」


 アイナは申し訳なさそうに、でもホッとした様にお礼を言ってきた。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 翌日、あたしとマリはエリオット様を閑散とした通路に呼び出して昨日のアイナの話をしてあげた。


「・・・!」


 精悍な美少年が見る見る内に表情を青ざめさせていくのを目の当たりにして、あたしは滅多に見れない光景に思わず興奮してしまいそうになる。・・・いやいや落ち着け。




「ア・・・アイナに伝えなくては・・・!」


 慌てて教室に戻ろうとするエリオット様をマリが止める。


「エリオット様、みんなが居る教室で言うのは却ってアイナさんを晒し者にしてしまいます。此処は一旦落ち着いて、放課後に2人きりになってから伝えるのが宜しいかと。」


 エリオット様はハッとした表情で頷く。


「あ、ああ。仰る通りだ、マリーベル嬢。」


 マリはニッコリと微笑んだ。


「場所は学園裏のパーゴラは如何でしょう。彼所なら人は来ませんし。」


「そう・・・そうですね。そうしよう。」


「でしたら、今から教室に戻った後、アイナにはそう伝えておきますわ。」


「感謝します。マリーベル嬢、ヒナ嬢。」


 エリオット様はペコリと頭を下げた。




「因みに・・・」


 あたしは訊いてみたかった事を訊いてみる。


「差し出がましいようで申し訳無いのですけど・・・御両親にはもうお話はされているのですか?」


「ヒナちゃん・・・!」


 マリが慌ててあたしを止める。


 やっぱ、差し出がましかったかな?




 でもエリオット様はニッコリと笑った。


「勿論。貴方に教えて貰ったあの直ぐ後に、実家に帰って両親に告げたよ。」


「ほう・・・」


 そんな速攻で動いてたのか。


「どうやら両親は俺の妻には侯爵家以上の御令嬢を見繕いたかったようで、最初は子爵家の令嬢と聞いて余り良い顔を見せなかったんだけどね。」




 なんですと!?そんな家にウチの可愛いアイナはやれませんよ!?




 あたしの表情を見てエリオット様は苦笑した。


「でも、アイナがシルバニー家の娘だと判ったら態度が急変してね。『調べるから少し待ちなさい。』と父上に言われて、先日『是非、連れて来なさい。』と言ってくれたんだ。・・・どうやら親同士で既にやり取りを終えてるらしい。現金なもんさ。」




 ああ、そう・・・。連れて来いって言ってくれたのね?まあソレなら良いんじゃない?


 貴族同士の結婚だもん。まず家の利益有りきよね。理由はともあれ、先ずは両親に受け入れて貰う事が肝要だわ。




「では、後はアイナの頑張り次第ですね。」


「その点は余り心配していない。アイナは母上の好みに即しているからね。」


「そうなんですか?」


「ああ。うちの母上は清廉潔白を好む人でね。貴族である以上は多少の融通は利かせるけど、余り小聡明い人間は好まないんだ。」


 ああ・・・ならアイナは大丈夫だ。あたしら5人の中では1番の常識人だし、感じの悪い事全般を嫌う。偶に口が悪くなる時は在るけど、まあご愛敬。




「そうなると・・・。」


 あたしは思案する。両親への紹介だと告げられてアイナが考えそうな事・・・。


「・・・多分、アイナは準備した方が良い物は何かと考えるでしょうね。」


「別にそんな物は・・・。」


「いいえ、エリオット様。招かれる側としてはそんな気楽では居られませんよ。例え必要が無いとしても、御両親が好みそうなモノを教えてあげるのは優しさですよ。」


 エリオット様は息を呑んだ様な表情であたしを見つめる。


「・・・成る程・・・とても参考になるよ。放課後までに考えておく。」


「是非、そうなさいませ。」


 あたしはニッコリと笑って見せる。




「しかし・・・何だな。」


「?」


「君達2人と話していると時折、凄く年上の女性と話をしている様な錯覚をする事が有る。とても頼りになると言うか・・・」


「!!」


 あたしとマリの笑顔が引き攣る。


「まあ、エリオット様ったら。そんな事を女性に言うのは失礼ですよ。」


 マリが微笑みながらそう言う。


「す・・・済まない。確かにその通りだ。失礼した。」


「ウフフ。」


「オホホ。」


 乾いた笑いが通路を吹き抜ける。






 教室に戻ってアイナに「放課後、学園裏のパーゴラに行くように。」と伝える。教室の反対側に居るエリオット様を見つめるアイナが可愛すぎて思わず抱きつきたくなる。・・・いやいや自制自制。






 その夜。


 アイナは再びあたし達の部屋を訪れてエリオット様との話の結果を伝えに来た。準備していた方が喜ぶだろうと思われるモノも教えて貰ったと安堵した表情で話してくれる。




「良かったね。」


 そう言うと、アイナはコタツから出て居住まいを正すとあたしとマリに頭を下げた。


「本当に有り難う御座います。貴女達のお陰で確りとしたご挨拶が出来そうです。」


「!」


 いきなり畏まった御礼を受けてあたし達も慌ててコタツを出て頭を下げる。


「あ、いえいえ。大した事もできませんで・・・。」


 思わず日本人っぽい処を全開にして返礼する。




「フフフ。」


 アイナが微笑む。


 うーん・・・美しい・・・。あたしとマリは薄い金色の髪をサラサラと揺らし微笑む美少女に思わず見惚れる。


 アイナが言った。


「もし、2人に素敵な人が見つかったら、それが誰であれ、私は全力で応援するからね。」




 スミマセン。実はもう見つけています。貴女の目の前に居る2人が既にそんな感じです。・・・とは言えず、あたしとマリは苦し紛れの引き攣った笑顔で答えた。


「アリガトウ。」


「あ・・・ありがとう。」




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 夜も更け始めて頃、またパラパラと雨が降り出して来た。消灯している部屋も在るせいか寮全体が静寂に包まれており、その中では雨が窓を叩く音がやけに大きく聞こえてくる。 




「また降ってきたね。」


 あたしがボケッと窓の外の闇を眺めていると、マリがそう言ってきた。


「うん・・・。」




 ・・・マリはアイナの話をどう聞いただろう?


 さっきからあたしは何となくそんな事を考えて居た。




 アイナはとても幸せそうだった。素敵な男の子に恋をして、その彼から婚約前提で両親に紹介して貰えるのだ。ソレはもう、この上無い幸せだろう。




 じゃあマリは?この子だって幸せになって良い筈だ。素敵な男の子に出会って、彼女が憧れた恋愛ストーリーの様に夢のような恋をして、結ばれる未来が在っても良い筈だ。


 でも現実は・・・。彼女はあたしを見ている。好感を持ってくれている。でも本当に良いんだろうかと思う時も在る。あたしとじゃ結婚は難しい。少なくともこの国で同性婚は認められていないらしい。ふと気になって、学園の書庫室で自分で調べた時は結構ショックを受けた。




 羨ましく思わなかったんだろうか?




 あたしは視線を窓の外から、コタツの向かいに座るマリに移した。彼女は静かに今学期の終わりに提出するレポートを纏めている。




「ねえ、マリ。」


「ん?」


 マリは手を止めてあたしを見た。




 呼びかけはしたけど何て言って良いか解らない。


「・・・アイナ、嬉しそうだったね。」


「そうだね。私も嬉しくなっちゃったよ。」


 マリはニコニコと無邪気に笑いながら答えてくる。




「マリも・・・マリも、あんな恋がしてみたいと思う?」


「・・・」


 マリから笑顔が消える。


「どうして、そんな事を訊くの?」


 あれ・・・?怒ってる?


「え・・・あの・・・」


「・・・」


 マリはスッとコタツから抜け出して立つと、あたしの隣に座った。凄く近い。


「マリ・・・」


「私は今、恋をしているよ。凄く幸せな恋をしてるよ。」


 マリはジッとあたしを見ながらそう言った。




 マリから放たれる熱い程の情熱をぶつけられてあたしはシドロモドロになる。


「う・・・うん。」


 視線を逸らすあたしにマリは更に近づいた。


「ヒナちゃんは?」


「あ、あの・・・」


 体格があたしと同じくらいになったせいか、彼女から感じられる圧が凄い。


「・・・ヒナ。」


 殆ど囁くように耳元に口を寄せられてあたしはピクリと震える。顔が熱い。鼓動がヤバい。あたしは声を振り絞った。


「あ・・・あたしも恋してる。」


「誰に・・・いや、いいや。・・・そっか。」


 マリはニコリと笑う。




 マリはそのままあたしを見つめ続ける。染まった頬が彼女の昂ぶりをあたしに教えてくれている。そんなマリのエメラルドグリーンの瞳に見つめられると、あたしはどうにも目が離せなくなる。鼓動を押さえられなくなる。




「・・・」


 マリがそっと手をあたしの顔に寄せると、その繊やかな指であたしの唇に触れた。ツツッとその指が滑り、そのままあたしの唇を一撫でする。




 あたしの中で良く判らない感情が溢れて来て、ペロリと舌を出すと彼女の指を舐めた。


「!」


 マリは一瞬驚いた様な顔をして指を引っ込め掛けたけど、そのまま指をあたしの唇に置き続ける。だからあたしは彼女の指をもう一度舐めた。


 彼女の指が動いた。あたしの唇を割って入り込み口の中に入ってくる。


「もっと舐めて・・・」


 掠れるような声でマリは熱っぽく囁いてきた。




「・・・」


 あたしは黙って舌を動かし彼女の指を舐め続けた。


 彼女はうっとりとした表情で指を舐めるあたしの顔を見つめている。・・・なんか酷く恥ずかしくなってきた。


「・・・」


 だから軽くマリの細い指に歯を立ててみた。




 彼女はピクリと身を震わせて指を抜く。


「・・・急に噛んだらビックリするよ。」


 少しだけ不満げに頬を膨らませるマリが可愛くてあたしは思わず微笑む。


 マリはそんなあたしを見ながらもう一度指をあたしの口に突っ込んだ。


「もう1回噛んで。」


 あたしはもう1度軽く歯を立てる。


「・・・う・・・。」


 マリは小さく声を上げるとあたしの口の中で指を動かした。あたしはその指を追い掛けるように舌を動かす。




 静かな部屋にあたしの舌を動かすノイズ音だけが響く。




 やがてマリはあたしの口から指を引き抜くと、その指を自分で咥えた。




 カァーッと顔が熱くなる。


「マリ・・・エッチぃよ?」


 そう口にするとマリはあたしを見て蠱惑の笑みを浮かべる。


「うん、判ってるよ。」




 ああ、もう堪らない。もう夜だし、寝る時間だけど、此処は未だベッドじゃない。こんな所で色々する訳にいかない。


「き・・・今日は・・・一緒に寝ようか?」


 あたしはそう提案する。




 一度自分の部屋に戻って寝る前の準備をして、パジャマに着替えて、部屋の明かりを消して・・・。




 視界がひっくり返った。


「!・・・え?」


 背中に軽い衝撃を覚えてあたしは声を上げる。




 あたしは押し倒され、マリは覆い被さる様にしてあたしを見下ろしていた。


「マリ・・・」


「我慢できなくなった。・・・今すぐ・・・」


 そう言ってマリは顔を寄せてくる。




 彼女の唇があたしの首筋にピトリとくっつく。


「!」


 あたしは身を震わせて言う。


「マ・・・マリ・・・此処、コタツ・・・。」


「うん。」


 そう言いながらも彼女は動きを止めない。




 首筋を舐められてあたしは身を捩る。くすぐったい。でも気持ち良い。良く判らない感覚があたしを支配していく。マリの舌が上に向かっていき耳を舐めた。


「ひゃ・・・」


 思わず声が漏れる。


「ふふ。」


 マリの笑い声があたしの耳に吐息と一緒に届く。


「ヒナ・・・首が弱いのは知ってたけど・・・耳も弱いんだ。」


 もう、何言ってんの。


「強い人なんて居ないでしょ?」


 恥ずかしくて少しだけ抗議の視線をマリに向けると、マリはあたしの優しく瞼を撫でて、再び耳を舐め始める。


「・・・あ・・・あ・・・」


 我慢しきれずに声が漏れてしまう。


 彼女の舌が動く度に「ピチャリ」と音がして、ゾクゾクする感覚があたしに襲い掛かる。




 何コレ・・・。こんな感覚は知らない。前世でも首筋を舐められた事は在っても耳まで舐められた事は無い。




 あたしは身を捩りながらギュッとマリの腕を掴む。




 マリがスッと離れた。


「はぁ・・・はぁ・・・」


 激しく肩で息をするあたしを見下ろしてマリは微笑んだ。




「ヒナ、可愛い・・・」




 なんかもう頭が働かない。そんなあたしを見てマリはあたしのブラウスのボタンを外し始める。


「・・・」


 あたしはされるが儘にマリに全部を任せた。




 服を脱がされ、下着を外され、マリはそのまま露わになったあたしの胸に口づける。舌が肌の上を這い回り、そして吸い付かれる。


「あっ!」


 あたしの身体が激しく震えた。




「そ・・・それは・・・ダメ・・・。」


 あたしは辛うじてそう言った。




 マリは一度顔を上げるとあたしを見つめ、また黙って胸に口づけする。そして手であたしの膨らみに触れながらまた口を耳に寄せて囁いた。




「ヒナはさ、私が貴女をどう思っているか、今ひとつ良く判っていないみたいだから・・・今日はソレを判って貰うんだ。」




「わ・・・判ってるよ・・・。」


 あたしが言うとマリは首を振った。


「まだ足りない。だから・・・」


 マリの瞳が怪しい程に艶やかな色を映し出す。




「まだ止めてあげない。」




 あたしは抵抗を諦めた。

 

 ああ・・・長い一晩になりそう。







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