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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター4 2年生編 / 一学期
47/105

M39 修学旅行 1



「ヒナちゃん、準備は大丈夫?」


「大丈夫よ、行きましょう。」


 マリの問い掛けにあたしはサムズアップで答える。




 エントランスでアイナ達と合流して10人乗り用旅客馬車の1番最後の馬車に乗り込んだ。予想通り、あたし達以外には誰も乗り込んで来ない。


 フッフッフ。実はマルグリット先生からリサーチ済みで、馬車は22台用意されているけど、馬車の利用人数が213名という事で最後の馬車には端数しか乗らない事は判ってたんだ。だから予めあたし達5人が端数となって最後の馬車に乗っておけば、誰も乗ってこないと言う寸法さ。




「うーん・・・流石はヒナちゃんだね。」


 とマリ。


「良くそう言う事に頭が回るね。」


 とフレア。


「何その言い方。誉めてんの?貶してんの?」


「感心してるの。」


 セーラが頬を染めて言う。


「・・・」


 なんか釈然としない。




 ソレはさておき、いよいよ修学旅行の本番だ。




 目的地は王族直轄地であるロアンナ地方。王都の隣にある自然溢れる地域で、ディラーン音楽堂を代表とする文化遺産の保護地区だ。『何人たりとも、この地に於ける争いは御法度』となっている場所らしい。


 学園からは馬車で半日余りの距離で別に其処まで離れているわけじゃない。でも初めての集団旅行に、みんなのテンションは絶賛『爆』上がり中だ。




 前乗りした生徒達の分の馬車が減り、合計22台による旅客馬車の大行進が、王都の朝を「カポカポ」と馬蹄を響かせながら進んで行く。




 貴族の令息令嬢が集団移動すると言うことも在って、護衛の兵士さん達が至るところで見張りをしている。コレがロアンナまでズッと続くらしい。凄い人数を割いているよな。




 とは言え、生徒達は初めての集団旅行を前にそんな事を気に掛けて居られなかった。




「キャー犬だわ!」


「キャー猫だわ!」


「キャー人だわ!」


「キャーキャー!」


 もはや騒ぐ要素は何でも良いらしい。特にあたしが。


 御令息方の乗る馬車は静かなモノだけど、御令嬢方の乗る馬車はかしましいったらありゃしない。特にあたし達の乗る馬車が。




 王都を出るまでは大騒ぎだったが、ロアンナ地方に入る頃には疲れて少し大人しくなったあたし達が居ました。


「・・・」


 グッタリして静かになったあたし達はポケーッと窓の外を見ている。


「・・・なんで目的地に近づくに連れてテンション下がっていくのよ。」


 アイナが呆れた視線をあたし達4人に向けている。




 途中の昼食タイムでまた元気を取り戻したあたし達は、再び大騒ぎでロアンナの窓景色を堪能した。


 いやー、かしましい。


「やかましい!」


 遂にアイナがぶち切れてしまう程にはかしましかった。




 ロアンナ地方が自然豊かで風光明媚な場所という謳い文句はホントだった。




 遠くに見えるクザス連峰。その中腹にディラーン音楽堂を中心とした温泉街が在る。


 有名デザートを食べる予定の『星皇ヶ原高原』もその近くだ。そしてお魚料理を食べる予定の『クインシアの滝』は高原を流れるレース河を辿ると現れる。更にショッピングする予定の『ブランニュー通り』はと言えば、温泉街の隣を走っている。序でに言えばみんなから却下を喰らった『レインモート遺跡』はクインシアの滝の近くにある。




 ホントに名所が集中しているな。


 ノンビリと過ぎていく草原の景色を眺めながら、あたしはこの牧歌的な光景に前世を思い浮かべていた。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 前世で最後に行った学年旅行は高校2年生の時の修学旅行だったな。確か北九州を一周したと思う。4泊5日の強行軍で、みんなヘロヘロだった。




 そして2日目の夜、あたしは呼び出しを受けた。・・・女子から。


「何?アヤ。こんな所に呼び出して。」


「うん。」


 アヤは・・・ストレートロングの髪に付けたゆるふわレイヤーの毛先を弄りながら俯いている。1年の始め頃から仲が良くって、あたしにやたらとセクハラめいた事を言ってくる超美人さん。気心も知れていて結構色んな事を遠慮無く言ってきた仲だ。そんな彼女があたしに対して何かを言い淀んでいる。




 ・・・何だ?なんか言いにくい事?




 に、しても相変わらず綺麗な髪だな。撫でながら匂いを嗅ぎたいゾ。・・・なんてゲスい事を考えてたら、アヤはキリッとコッチを見た。


「あのね。ヒナは好きな人はいるの?」


「?・・・居たけど。」


「!」


 アヤは相当にショックを受けた顔をしてる。




 ・・・まあ、確かに誰にも言ってないしな。言わなくてゴメンよ。でも言い辛いよ。その人は既に彼女持ちです、なんてさ。


「・・・知らなかった。」


「ま・・・まあ、言わなかったのは悪かったよ。」


「・・・」


 アヤは俯いている。




 うーん・・・仕方無い。言うか。


「でもさ、言いにくかったんだよ。その人、もう彼女居るんだよね。」


「え?」


 アヤの顔が一瞬だけ輝く。


 おい、何で嬉しそうなんだよ。


「じゃ・・・じゃあ、もうその人の事は諦めたの?」


 何を期待してるんだ、お前は。




 あたしはアヤの両肩に手を置いて話す。


「アヤ・・・」


「な・・・何!?」


 ・・・あんた、顔が真っ赤よ?大丈夫?・・・まあいいや。


「あのね、人の気持ちなんて、そんなに簡単じゃ無いのよ?」


「・・・」


 アヤの顔が悲しげなモノに変わる。


「あたしね、必死だった。忘れよう、忘れようと思って、必死になって剣道に打ち込んで・・・。」


「ヒナ・・・」


「他にも色んな事に挑戦して忘れる努力をしたわ・・・」


「ゴ・・・ゴメン・・・もう、い・・・」


「その甲斐あって綺麗さっぱり忘れてしまったわ。」


「・・・は?」


 アヤは何か言い掛けた言葉を止めてポカンとあたしを見た。




「何よ、その顔は。だから忘れたって言ったの。まあ今からでも言い寄られたら、速攻でヨロける自信は在るけど。」


 アヤの貴重なポカン顔を愛でながらあたしは言う。


「だ・・・だって、さっき『居る』って言った・・・」


「『居た』って言ったの。もう・・・人の返事は良く聴きなさい。」


「・・・」


 アヤがジッとあたしを見つめてる。


 おい、やめろ。美人には弱いんだ。そんな何時までも見つめるんじゃ無い。何か言え。




「じゃ・・・じゃあ、今は居ないの?」


「残念ながらね。」


 あたしがぶっきらぼうに答えるとアヤは嬉しそうに微笑んだ。


「そう・・・。」


 何だよ。乙女かよ。何か今日はムチャクチャ可愛くないか?訳も解らずにあたしは1人でドギマギしてしまう。しかも何か壮絶な色気が漂い始めたのは気のせい?




 何故かあたしは中学の時に告られた時の事を思い出す。・・・いや、何故かじゃ無い。コレはあの時と同じだから思い出したんだろ。とぼけるな、あたし!




「ねえ、ヒナ。」


「は・・・はい!」


 アヤの瞳に凄まじいばかりの艶っぽさが漂っている。


「ヒナは・・・私じゃ・・・ダメ?」


 やっぱり。やっぱりかー!でもアヤがそうだったなんて知らなかった。ホントに気付かなかった。


「ダ・・・ダメって言うか・・・」


「・・・」


 そ・・・そんな眼で見ないで。


「ア・・・アヤは素敵だと思うわ。美人だし、胸も大きいし、手足も長いし、コミュ力もメチャ高いし・・・あたしの事も良く解ってくれてるし・・・」


 あれ・・・?言ってて気付いたけど、アヤって結構良いんじゃない?・・・いやいや、あたしら女の子同士でしょ!シッカリしろ風見陽菜!気を取り直して・・・。


「でもあたし達、女の子同士だよ?」


 よし言った。


 気の迷いだったと言ってくれ。そしたら、あたしもソレに乗っかって笑って流すから!




「・・・」


 アヤが無言でヌズイと距離を詰めてきた。近い、近いよ、アヤちゃん!


「私は気にしない。」


 そ・・・そんな事言わないで。


「ヒナが好き。ライクじゃなくてラブの意味で。」


 誤解しようも無くハッキリと言われてしまった・・・。


 どうしよう。




 アヤが更に距離を詰めてくる。


「!」


 くっついてる!身体がピッタリとくっついてるから!!アヤの身体と壁にガッチリと挟まれてあたしは逃げ場を失い狼狽える。


「ねえ・・・ヒナは?」


 アヤの声が耳元に囁かれる。


「あ・・・あたしは・・・。」


 わかんない。わかんないよ。この子をそんな目で見たこと無いもの。でもアヤを傷付けたくは無い。


「・・・わかんないよ・・・。」


 あたしはそう言うのが精一杯。




「そっか・・・わかんないか・・・」


 お願いだから耳元で囁くのはやめて。あたしは込み上げてくる感情を抑えるように、キュッと目を瞑る。顔が火照って仕方が無い。心臓のバクバクが収まらない。




 アヤは少しだけ上半身を離すとあたしを見た。そしてあたしの表情を確認する様に見ると、1つ頷いて紅色の頬で満足げに微笑んだ。


「嫌って言われなかっただけマシかな?・・・うん、今はソレでも良いか。」


「アヤ・・・」


「じゃあヒナの恋人の席『予約』させて。」


「え?」


 意味が判らずにアヤを見たあたしの顔にアヤの綺麗な顔が近づいた。




「!」


 温かい。柔らかい。湿ってる。・・・あたし、キスされてる!?生まれて初めて味わう感覚は、あたしを激震させた。


 アヤはあたしを腕ごと抱き締めて、唇を動かし吸い付いてくる。うー・・・ムニュムニュする。唇から漏れるリップ音が気持ちいい・・・。


 どうしよう・・・コレ・・・戻れなくなりそう・・・。




 長い長いファーストキスが終わって、あたし達はホテルロビーのソファに腰を下ろしていた。


「あたし、ファーストキスだったんだけど。」


「私もよ。」


「・・・なんであたしなの?」


「そこらの男より漢らしいから」


「・・・」


「言っとくけどホメてるんだからね?」


「ホントかなぁ?」


 憮然と唇を尖らせるあたしにアヤは笑って言った。


「そんな顔をされるとまたキスしちゃうよ?」


「・・・エッチだよ。」


「そうよ。ヒナは無防備だから色々したくなっちゃう。・・・コレからも色々するからね?」


「・・・!!」




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 あの蠱惑的な微笑みは、今思い返してもゾクゾクする。




 チラリと隣のはしゃぐマリを見る。この子も夜になると、あの魅惑の微笑みにソックリな笑みを浮かべるんだよなぁ。それにマリにもセーラにも以前に同じ事を言われた。『無防備だ』って。


 ・・・そんなに無防備かなぁ?そんな言われる程では無いと思うんだけどなぁ。ああ、でもエロルの件では確かに無防備と言うか不用心だったとは思うけど。






 夕方。




「うー・・・腰が痛い・・・」


 あたし達はヨロヨロと馬車から這い出した。いくら長距離旅客用に振動を抑えた造りになっているとは言え、朝から夕方まで馬車に乗ってれば腰も痛くなると言うモノ。




 とは言え、ようやく宿泊先のホテルに着いた。宿泊するホテルは4軒。男子と女子で2軒ずつに分かれている。まあ貴族の子供達だしね。特に御令嬢に対しては、間違っても『間違い』が起こらない様にって配慮だろうな。しかしホテルを分けてしまうとは徹底してるね。




 ホテルの部屋はシングル、ツイン、4人部屋に分かれている。


 部屋割りは事前に学園に希望を出して予約する形だったけど、シングルはアッと言う間に埋まってしまったらしい。ツインもその直ぐ後に埋まる。


 だからあたし達は最初から4人部屋を希望しておいた。侯爵令嬢のマリは学園側でシングルを割り当てていたようだ。




「私もみんなと同じ部屋が良かった・・・」


 馬車の中でポツリと呟いたマリに、あたしはカッとなって立ち上がった。


「何言ってんの、マリ!夜に部屋を抜け出して友達の部屋に遊びに行くのが楽しいんじゃない。ソレこそが修学旅行の最大の醍醐味なのよ!・・・チクショウ!羨ましいなんてモンじゃ無いわ!」


 あたしが心底悔しくて力説すると、4人はポカンとあたしを見上げた後、盛大に笑いだした。


 なんだ!?なんで笑う!?


「ヒナの価値の基準ってホントに判らないわ。」


「最大の醍醐味って・・・!」


 解せぬ!


 何故、この無念を誰とも共有出来ないのか!




 御夕飯はこの地方で獲れる川魚のムニエルをメインにしたコース料理だった。


「マリ様やヒナちゃんと食べるのって久しぶりだね。」


 フレアがニコニコ顔を隣に座るあたしに向けた。くーっ・・・初い奴め。


「そうね、マリさんとヒナって、いっつも自室で作って食べちゃうんだもん。」


 アイナさん?チョット不満げなお顔かしら?


「・・・今度、2人の料理を食べてみたいなぁ。」


 セーラが呟く。


「私も。」


「私も。」


 じゃあ、今度食べに来なさいよ。簡単なモノで良いなら出したげるわよ。




 さて、御夕飯が終わると湯浴みタイムだ。文字通りの温泉で、大人数が一緒に入れるスタイルだ。前世の修学旅行と違い、金に物を言わせてホテルごと借り切っているので就寝時間まで自由に入れる。




 ・・・ただ、まあ。


 御令嬢が、例え同性同士とは言え、裸体を人前に晒すのは抵抗があるらしく・・・。




 脱衣所に入るとガランとしていた。人っ子一人いない。


「・・・」


「誰も居ないね・・・。」


 5人娘は入り口に立ち竦む。




 あたしの中で何かが迫り上がってくる。這い出して来る。盛り上がってくる!


「貸し切りだー!!」


 あたしは奇声を上げて脱衣所に闖入した。




 あたしはワンピースを脱ぎ捨て下着をその下に隠すと、タオルを身体に巻いて立ち竦む4人を見た。


「何やってんの!?早く来なさい!貸し切りよ、貸し切り!こんなチャンスそうそう無いわよ!」


「え・・・ええ。」


「そ・・・そうだね。」


 4人も互いに少し離れた場所で衣服を脱ぎ始める。




 マリは意外にもスパッとワンピースを脱ぎ捨てていた。・・・うん。何故抵抗が無いかの理由は考えるまい。っつーか恥ずかしくてまともに見れない。


 アイナとフレアも恐る恐ると衣類を脱ぎ大急ぎでタオルを身体に巻き付けていた。


 しかし、あたしはバッチリ見たよ。


 アイナ、あんたやっぱり反則だわ。何!?その『たわわ』な実りのモノは!?14歳にあるまじきよ。


 そしてフレア。貴女も意外に有るわね。でも、適正よ。14歳として・・・いや、もう彼女は15歳か。誕生パーティーを先月あたしの部屋でやったもんね。




 そして最後まで抵抗を感じていたのはセーラだった。この子は普段、1人部屋だから殊更そういうのに恥じらいを感じちゃうのかもね。


 衣服までは脱いでいるけど下着に手を掛けたまま躊躇っている。




 漆黒の長い髪と真っ白な素肌のコントラストが得も言われぬ禁断の美を醸し出している。・・・様に見える。要はエロい。


 あたしは恥ずかしがるセーラの後ろ姿にムラムラして来た。




 そっと近づいて


「セーラちゃん。」


 と耳元に囁き掛ける。まるっきり変態だな、あたし。


「うひゃあっ!」


 身体を震わせて驚いたセーラが真っ赤な顔でコッチを見る。


「な・・・何!?」


 あたしはニヤリと笑う。


「何やら脱衣に手詰まって居られるご様子。宜しければあたしがお手伝い致しましょうか?」


「ば・・・馬鹿!何言ってるの!?全然平気よ!」


 セーラはそう言うと勢いよく下着を脱いでタオルを身体に巻き付けた。ちぇー。


「・・・」


 視線を感じてマリを見ると銀髪美少女はジトリとあたしを見ていた。・・・ヤベ、調子に乗りすぎた。




 扉を開けるとソコは湯気とお湯と岩が溢れる露天風呂だった。うん、流石は日本人が作ったゲームの世界。この辺は良く分かってる。




 当然シャワーなんて無いから、桶で湯を汲みながら身体を洗っていく。石鹸の香りが芳醇で、あたしはこの世界の石鹸がお気に入り。コレを初めて作った人はマジで天才だと思う。しかも歴史を辿れば紀元前には既に石鹸の原型は在ったとか。やっぱり、美と清潔への欲求は人の本能なのかもな。




「な・・・なんかさ・・・みんなで並んで身体を洗うのって・・・落ち着かないね。」


 おや?フレアちゃんがなんか可愛いこと言い始めたよ?


「ば・・・馬鹿、フレア!そんな事言ったら、ヒナが・・・!」


 アイナがフレアを制止するも、あたしは聴いちゃったよ?


「フレアちゃん・・・」


「な・・・なあに?ヒナちゃん・・・」


 あたしに引き攣り笑いを向けるフレア。その横でアイナが言わんこっちゃ無いって感じで顔を顰めている。


「じゃあ、落ち着く方法を教えてあげようか?」


「だ・・・大丈夫だよ、ヒナちゃん・・・」


 フレアの顔が青ざめて見える。いや、ソコまで怯えんでも・・・。




「遠慮なんて不要よ。・・・フレア、落ち着かないなら楽しんでしまえば良いのよ。」


 あたしはそう言うと4人に言った。


「みんな、円を組んで座って。」


「?」


 4人は意味が判らずに怪訝な顔で言う通りに動く。そうかマリもピンと来ないか。


「はい、じゃあ前の人の背中を優しく洗ってあげて。」




「!」


 マリが輝く瞳であたしを見た。そう、こう言う時の定番、背中の流しっこよ。




 あたしがセーラを、セーラがマリを、マリがフレアを、フレアがアイナを、アイナがあたしを、それぞれ洗い始める。




 前の人の背中を擦っていたみんなの表情が段々と変わってきた。先程までの不安げな表情が消えていき、楽しげなモノに変わっていく。




「ふ・・・ふふ。」


 みんながクスクスと笑い始める。


「何をさせるのかと思ったけど・・・コレ楽しいわね。」


「でしょ?・・・はい、じゃあ今度は反対を向いて下さい。今、洗ってくれた人の背中を洗ってあげましょう。」


「はーい。」


 みんな可愛いな。




 ・・・あの・・・セーラさん?素手じゃなくてタオルで洗って下さらないかしら?




 身体を洗い終えると、みんなで温泉に浸かる。


「広すぎてチョット落ち着かないけど・・・楽しいわ。」


 アイナがウットリした表情でそう言った。


「・・・ココ、周りに壁が無いけど、誰も見てないよね?」


 フレアが心配げに言う。


「大丈夫よ。こういうのって覗かれない様に計算されて作られてるんですって。」


 マリが答える。




 明るいところでマリの胸って初めて見るけど・・・ホントに大きくなったな。あたし、アレを揉んだのか・・・2回も・・・。・・・いやいや、何を思い返しているんだ、あたしは。




「ねえ、ヒナ。」


「!?」


 突然、耳元で囁かれてあたしはセーラを見た。いつの間にかピッタリと身体を寄せられている!?




 セーラがあたしの顔を見てニヤリと悪い笑顔になり、身体をくっつけてくる。


「ヒナの背中ってスベスベね。」


「な・・・何を言ってるの?」


 そう言う事を言わないで。流石に恥ずかしい。


「・・・ゾクゾクしちゃった・・・。」


 色っぽい。そんな艶めかしい顔で上目使いをするんじゃない。ドキドキするだろうが!


「コッチはどうかしら・・・?」


 セーラはポツリと呟く。




 コッチ・・・?と思った瞬間にあたしの全身が震えた。


「!?」


 セーラがフワリとあたしの胸を触ってきた。


「セ・・・!?」


 あたしが彼女の名前を叫ぼうとするとセーラがもう片方の手であたしの口を塞ぐ。


「静かにして。」


 そう言って彼女はあたしの胸から手を離した。




「セ・・・セーラ!」


 あたしが小声で諫めるように睨むとセーラは


「ゴメン。」


 と囁く。


「触ってみたくて、触っちゃった。」


「も・・・もう!」


 そんな素直に謝られたら怒れないじゃない。あたしはプクリと頬を膨らませて見せる。


「ごめんなさい。お詫びに私のも触って良いわよ?」


「ば・・・馬鹿。する訳ないでしょ!」


「ホントに?」


「ホントよ!」


「残念。」


 セーラは楽しそうだ。・・・マジで驚かされたけど、まあいいか。






 就寝時間が過ぎた。


 そろそろ、マリが部屋に来る時間だ。




『コンコン』


 来た。


「はーい。」


 ノックされた扉をあたしは開ける。


「いらっしゃ・・・」


 あたしは言葉を失った。


「?」


 そこには訝しげな顔をしたマルグリット先生が立っていた。




 え!?何!?異世界でも先生って見回るモンなの!?


「今、何か言い掛けましたか?」


「い・・・いえ、何も。」


 マルグリット先生の問いかけにあたしは笑顔で応える。


「皆さん居ますね?」


「はい、ご覧の通りです。」


 3人が引き攣った笑顔で先生に応えている。


「・・・。・・・宜しい。就寝後に出歩く事は禁止ですから気を付けて下さいね?」


「はい先生。」


「では、お休みなさい。」


「お休みなさい、先生。」




 立ち去る先生の足音にあたしは崩れ落ちた。


「馬鹿、ヒナ!迂闊よ!」


 アイナの諫める言葉もあたしの耳には届かない。


「ふ・・・ふふふ・・・」


「ヒナちゃん?」


「コレよ!この緊迫感こそ修学旅行の醍醐味よ!マリ、この危機を乗り越えてくるのよ!・・・ああ、出来る事ならあたしが変わってやりたい!」


 3人の白けた視線があたしに突き刺さる。


「・・・コレだけは付いて行けないわ・・・」




 暫くして、マリは寒さに凍える小鳥の様にカタカタと震えて部屋にやって来た。その愛らしいお顔は真っ青だ。


「こ・・・コワかった・・・もう少しでマルグリット先生に見つかる処だった・・・」


「良く頑張ったわ、マリ。良い思い出が出来たわね!」


 マリを賞賛するあたしに3人がツッコむ。


「そんな筈ないでしょうが。」




 こうして修学旅行1日目の夜は、かしましく更けていく。




誤字の指摘、ありがとう御座いました。

適用させて頂きます。

しかし、今回の誤字は流石に恥ずかしかった///

何であんな間違いをしたのか自分でも理解出来ません。風光明媚にせよ連峰にせよ間違えるような言葉では無いのに。

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