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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター2 1年生編 / 二学期
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M32 聖夜までのアレコレ



 あたしの脚立とマリの車椅子。2つの商品化がお父様主導の下、ハナコ商会と鍛冶ギルドで行われる事になった。


 ギルドマスターのオリゲックさんが、わざわざあたし達の所にお礼を言いに来てくれた。かなり大きな仕事になるらしく大喜びだった。何かあたし達まで嬉しくなる。


 いやー、商会の娘として経済の一端に携われたのは嬉しい限り。




 そう思っていたら、学園から打診が掛かった。女子寮ロビーに置いてある『聖夜ツリー』を学園の中央ロビーに移さないかというもの。


 御令嬢達の高評価が学園の運営陣の耳にも入り見に来たそうだ。


『コレは珍しい。来客にもウケるのでは無いか。』


 と算段が立ち、起案者のあたしに声が掛かったそう。




「どうかしら?」


 マゼルダ婦人が困った様な顔であたしに訊いてくる。


「はぁ・・・。」


 まあ別にあたしは良いけど・・・。そう思いながらマリを見るとマリは凄い顔をしていた。何やら大反対の模様。でも、学園の頼みじゃバッサリと断り辛いよな。


「・・・あのツリーはあたしとマリーベル様だけで無く、たくさんの御令嬢方にも手伝って頂いたので皆さんの意見も訊いて下さい。皆が良ければ構いません。」


「そうね。そうするわ。」


 マゼルダ婦人は何故か笑顔になって立ち去って行った。


「?」


 要領を得られずにあたしが首を傾げているとマリが言った。


「実は寮母様もツリーの移動は反対みたいなの。寮母様もツリーを気に入って下さってるから。『動かしてしまうのは寂しいわ』と仰ってたわ。」


「じゃあ、何でマリはあんなに怒った顔をしてたの?」


「・・・学園は格好付ける事ばかり考えていて、生徒達の気持ちを考えてないからソレに腹が立ってたの。」


 あ、成る程。マゼルダ婦人に怒ってた訳じゃないのね。




 後日、怒り狂った御令嬢達から猛反対を喰らった学園は、仕方無く新しいツリーの発注を農林ギルドと裁縫ギルドに出したそうだ。最初っからそうしとけば良いのに。




 届いたのは2本のツリー。脚立は未だ販売されていない為、あたし達が持っている2脚のみ。なのでソレを御令嬢達に貸し出して飾り付けをお願いした。忽ち脚立の取り合いが始まりましたとさ。


 まあ、皆様の嬉しそうなお顔の愛らしいこと。因みに男子寮にも1本ツリーが立った。当然、御令息達にも脚立を貸し出しましたよ。




 それにしても、マリとの思い出作りの為に始めた事だけどね。まさかこんな事態に為ってしまうなんて。しかもこのツリーは学園の恒例行事にするそうだ。面白い。


 お父様からも打診が来ている。来年に向けてこのイベントを生み出していきたいそうだ。


 ほーん。やっぱ、名前は無くともクリスマスツリーが人の心を沸き立たせるのは、万国・・・いや万界共通なのね。よきかな、よきかな。






「聖夜って何でこの日が聖夜なの?」


 あたしはマリに訊いてみた。


「ロンディール様がアルテナ様と結婚した日なんだって。ロンディール様はアルテナ様にガーネットのブローチを贈って、アルテナ様はロンディール様に白いパンジーの花冠を贈ったそうよ。」


「へー。」


 なんてロマンチック。


「因みに今までの聖夜祭って何をしてたの?」


「王都では教会主導のミサが開かれて、後はお祭りをするらしいよ。私は行った事無いけど。」


 ああ、そっか。


「じゃあ、あたしと行こっか?」


 マリは残念そうに首を振った。


「多分、時間が無い。学園でも聖夜パーティーが開かれるから。」


 そっか。ソレは残念。






「ヒナちゃんとマリ様に訊きたかったんだけど。」


 フレアが尋ねてくる。


「何?」


「あのツリーのさ・・・所々ぶら下がってるお爺さんの人形は何?」


 おや?サンタクロースに興味がお有りかい?


「聖夜ツリーの精霊よ。」


「・・・」


 微妙な顔でフレアが後ろに立っていたアイナを振り返る。アイナが残念そうに言った。


「ヒナのセンスって・・・解らないわ。」


 何でだよ。素敵じゃないか、サンタクロース。




「マリーベル様、ヒナさん。」


 セーラがニコニコ顔で話し掛けてくる。


「アイナさんとフレアさんから聞いたわ。おのお爺さんの人形、ツリーの精霊なんですって?」


「そうよ。」


「・・・」


 セーラの肩が震えてる。


「何よ、マリーベル様だってツリーにはコレしか無いって言ってるんだから。」


「アッハッハ。」


 セーラは伯爵令嬢らしからぬ声を上げて笑いだした。


 マリは真っ赤だ。


「いいわ。本当に最高。マリーベル様とヒナは本当に楽しいわ。」


 誉められてんだか落とされてんだか解りゃしない。




「因みに今回のツリーの飾りにもコンセプトはあるの?」


 コンセプト・・・かぁ。クリスマスツリーを再現しただけだしな。


「まあ・・・」


 あたしがボヤッと返事をするとセーラは目を輝かせる。


「綿は雪をイメージしているのでしょう?鈴は?」


「精霊のお爺さんのペットに付いている鈴よ。」


 セーラの肩がピクリと震えた。


「ペ・・・ペットって?」


「トナカイ。」


 セーラは意外そうな顔をする。


「へー・・・まともね。トンデモナイ名前が飛び出してくると思ったのに。」


 どういう眼であたし達を見てるんだ。このお嬢さんは。




「じゃあ、お爺さんの服の色が赤と白なのは何で?」


 それは・・・そういうモノだから・・・じゃ納得しないよなぁ。


 その時、マリからの助け船。


「ロンディール様がアルテナ様に贈ったガーネットのブローチの赤と、アルテナ様がロンディール様に贈ったパンジーの花冠の白をイメージしたの。」


「・・・」


 セーラが眼を見開いた。


「素敵!!」


 ああ乙女心を良く理解してるなあ、マリ。




 セーラはこの色合いに夢中になってしまった様だ。忽ち女子寮にこのコンセプトは伝わって行った。






「ねえ、ヒナ。」


 鋭いな。聖夜パーティーも後2週間といった頃、アイナにフレア、それにセーラが3人揃ってあたし達の部屋に遊びに来た。


 そこで唐突にアイナがあたしに詰め寄った。


「な・・・何?」


 お顔が美し・・・いや近いんですが。


「聖夜パーティーでもマリさんと2人で何かお揃いのドレスを着るの?」


 うぉっ!?何て鋭いんだ!


「何でわかるの?」


 あたしの返事にマリは苦笑いしている。バレちゃったね・・・ってところか。


「・・・やっぱり。」


 セーラが頷く。


「あたし達も同じのが着たいよ、ヒナちゃん!」


 フレアが珍しく眉根を寄せて言い寄る。


「わ・・・解った。未だ2週間あるし間に合うから落ち着いて。」


「ホント!?未だ間に合う!?」


「大丈夫よ。ただ、採寸しないとね。セーラは初めてだから当然必要だけど、アイナとフレアももう1度測って貰わないと。」


「え、学園祭からはそんなに経ってないから大丈夫だと思うけど。」


 フレアが若干面倒臭そうな口調で言う。


「ダメよ。2人とも大きくなってるわ。特にアイナ。貴女、サイズが変わってないなんて言わせないわよ。」


 何処とは言わない。言って堪るか。でも、彼女は間違い無く大きく育っている。


 アイナは顔を赤くするだけで反論して来ない。くそっ、14歳でその大きさは反則ではなくて?




 翌日、あたし達は恒例の衣服屋さんに来て貰って3人の採寸をお願いして貰った。




 最近知ったんだけど、この衣服屋さん、裁縫ギルドが運営するチェーン店の本店だったらしい。だから、ここの処、仕事をお願いしまくっていたあたしの来訪依頼にも即日対応だったそうだ。


 それに農林ギルドやハナコ商会と組んで来年から普及させていく予定の聖夜ツリーイベントに向けて新事業を立ち上げていくとの事でソレについても店長からお礼を言われた。更にはこの服も流行らせたいらしい。




 何か良いじゃない。みんなで仕事して、みんなで儲けて、みんなで楽しくやれるって素晴らしいわ。




「・・・ところでさ。」


 あたしは3人に尋ねた。


「貴女達、あたしとマリがどんな服を着ようとしてるか知らないでしょ?ソレなのに注文しちゃって良かったの?」


「え?だって・・・」


 フレアがセーラを見る。セーラが言った。


「貴方達2人が着る物でしょう?素敵に決まってるじゃない。」


 ・・・そっスか。






 聖夜パーティーは楽しみだけど。その前には定期考査がある。


「勉強だけはしっかりやっときましょう。」


 あたしが言うとみんな頷いた。


「流石、1学期の成績トップが言うと説得力があるわ。」


 ・・・ああ、そうだった。




 数学、語学、魔学は問題なし。社会学もマリに手伝って貰って問題なし。武術は大幅に変更が入って隣のクラスの女子と合同で試験を受ける事になった。男子も隣のクラスと合同で試験を受ける形。


 隣のクラスも御令嬢が1人学園を去ったために奇数になっていたそうだ。うん、まあソレはさて置いても、コレが自然だよね。


 って訳で、あたしとマリ、アイナとフレアは対戦試験も勝利でクリア出来た。うむ。よくやった、我が弟子達よ。師匠として鼻が高い。


 セーラも勝利をもぎ取っていた。


 戦い方はあたしに少し似ている。無駄に動き回らずに、相手の隙を見つけて一瞬で勝負をつけるタイプ。静から動への移り変わりが素晴らしく、最初の踏み出しから相手の身体に剣を当てる迄がかなり速い。




 清楚系黒髪美人剣士。もう設定が盛り盛り過ぎて見惚れてしまうわ。


「セーラやるね。」


 あたしが声を掛けるとセーラは頬を染めて微笑む。


「貴女にそう言って貰えると嬉しいわ。」


 お・・・おおぅ・・・。あたしが男なら一発で落とされてるんじゃないか?コレ。




 そして試験の結果が発表された。




1位 ヤマダ=ハナコ




2位 マリーベル=テスラ=アビスコート




3位 アルフレッド=フレア=グレイバード




4位 エリオット=ルナル=カイハンズ




5位 セーラ=ステイ=リーズリッテ




        ・


        ・




8位 アイナ=シルバニー




9位 リューダ=ゼフロンド




        ・


        ・




12位 エルロア=スタンジール




13位 フレア=カール




        ・


        ・




19位 ケニス=アドウィン(宰相の息子)




        ・


        ・




77位 ライアス=グランフィールド(王子様)




 おお、スゲェ。あたしの知り合い、殆どが上位に食い込んでるじゃん。ってか、王子一派は大丈夫なのか?何か順位が落ちてる気がするけど。ま、どーでもいいか。




 またあのゲス王子が悔し紛れの嫌味でも言いに来るんじゃ無いかって警戒していたけど、特に何も無かった。平穏って素晴らしい。






 さて、明日は聖夜パーティーだ。衣装も届いたし、みんなに教えとかないとな。





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