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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター1 1年生編 / 一学期
20/105

S3 マリーベルの回想

マリーベル視点のお話です。

一学期と夏休みを振り返ります。



 ヒナちゃんと出会ってから私の学園生活は劇的に変化した。


 会話を交わす御令嬢が増え、お友達も増えた。ヒナちゃんと部屋が同じになって私の生活には楽しい事とドキドキが溢れている。


 偶に一緒に寝るときは、相変わらず胸の高鳴りを押し殺すのに必死だけどでも幸せを感じる事が出来ている。






 6月。雨の降る日に話したジューンブライド。


「マリはそう言う憧れとかはあるの?」


 ヒナちゃんの質問は私の心に呼び水を与えた。




 私の知る男性は前世も含めて忌避する対象だった。素敵だと思う男性は全て漫画やゲームの作られた存在に限られた。現実にはそんな男性はドコにも居ない。だからジューンブライドどころか結婚や恋人そのものに憧れは欠片も無かった。




 でも・・・。私の隣に居るこの人なら。私と同じ女の子だけど、とても素敵なこの人とずっと一緒に居られるなら。


 だから私は答えた。


「今までは無かった。・・・でも今は少し憧れるかも。」


って。


「あら、そうなの?」


 そう返すヒナちゃんは・・・多分、私の言葉の本当の意味が解っていない。それはそう。解る筈なんて無い。まさか女の子が自分をそんな風に見ているなんて思う筈が無い。




「ヒナちゃんは?」


 少しだけ期待して訊いてみる。


「あたし?・・・うーん。今は特にそういうのは無いかな。」


「・・・そう。」


 やっぱりな。


 でも、続けて言ったヒナちゃんの言葉は私をとても嬉しい気持ちにさせてくれた。


「何て言うか結婚ってピンと来ない。どちらかと言えば今はマリと色々遊びたいかな。」


「!」




 この気持ちが恋なのかなんて私には分からない。欲しくて堪らなかった友達に対して、感情を拗らせているだけなのかも知れない。でも・・・この気持ちは大切にしたい。






 7月。


「うー・・・コタツ~・・・」


 ヒナちゃんは泣きながらコタツを仕舞ってた。私も少し寂しい。




 そして学園に入って初めての定期考査の月だった。私はヒナちゃんと一緒にやる勉強が楽しくて仕方が無かった。ずっと憧れていたお友達との勉強会。


 そしてヒナちゃんは教えるのも凄く上手な人だった。単純な解き方だけじゃなくて考え方や何でこの方法を採るのか、まで説明してくれた。お陰で単純な理解だけじゃなくて意味まで知る事が出来た。剣術も凄く良く出来る。


「ヒナちゃんって何でも出来るね。凄いな。」


 私がそう言うとヒナちゃんは「ん?」って顔をした。その表情が可愛くて見惚れそう。


「剣術のこと?剣道に似ていて馴染みやすいのよね。」


 ヒナちゃんは何でも無い様にそう言ってブンブンと素振りをする。




 そうしながらヒナちゃんは言った。


「マリ。」


「なあに?」


 ヒナちゃんは言い辛そうに、でも意を決した様に言った。


「マリのお父さ・・・いや、違うな。そんな奴は父親じゃない。・・・侯爵は、マリをいつか疵物にするつもりなのよね。」


「・・・うん。」


「負けるな、マリ。」


 ヒナちゃんは私を見て言った。


「どんな手を使ってくるつもりか解らないけど、最低限、自分に襲い掛かる剣くらいは自分で撥ね除けるくらいになれ。」


 ヒナちゃんの綺麗なダークレッドの瞳が私の心を射貫く。


「・・・あたしも協力するから。きっと守ってあげるから。」


 胸が高鳴る。ドキドキが止まんない。


 私はヒナちゃんに恐る恐る抱きついた。ヒナちゃんは優しく私の背中に手を回してくれた。


「うん。頑張るよ。」


「よし。」




 私はきっと頑張れる。この人が側に居てくれたら、もう其れだけで頑張れる。


 ヒナちゃんに出会う前は諦めていた。味方になってくれる人が何処にも居ないこの世界で、疵物にされて殺されても良いとすら思っていた。・・・でも今は。ソレは絶対にイヤ。ずっとヒナちゃんの横に居たいから。絶対に諦めない。




 そしてヒナちゃんの強さは私の想像よりもずっと上だった。


 定期考査の最終日。学園の手違いから、ヒナちゃんとエロル様が対戦する事になってしまった。女の子と男の子が対戦するなんて。


 私は不安で仕方が無かった。女の子が男の子に勝てる筈が無い。




 でも、ヒナちゃんはそんな私の不安を余裕で撥ね除けてくれた。




 エロル様の攻撃の全てを打ち払う。私の位置からはエロル様は後ろ姿しか見えなかったけど、動揺しているのは明らかだった。


 そんなエロル様に対してヒナちゃんは舌でペロリと唇を舐めて笑って見せた。私はその妖艶とすら思える程の表情を見てゾクゾクと身を震わせた。


 ヒナちゃんはゆっくりと前に踏み出しながらエロル様に剣を打ち下ろしていく。エロル様は守るので精一杯。


 ・・・でも・・・あれ?ヒナちゃんの攻撃は随分ゆっくりだけど、アレも捌けないのかな?


 私は首を傾げた。


 そして・・・


「スパンッ」


 ヒナちゃんの胴打ちが決まった。エロル様が呻いて身体が折れ曲がる。ヒナちゃんはトドメとばかりにそのエロル様の頭に剣を振り下ろした。


「勝負あり!・・・勝者ヤマダ=ハナコ!」


 歓声が上がるなか、私は頬を染めて笑顔を見せるヒナちゃんに見惚れた。


――・・・凄い・・・カッコいい・・・。


 私の胸の高まりはその後、なかなか収まらなかった。




 そして。


――あの妖艶な微笑みを私にも向けて欲しい・・・。


 と思ったのは流石に自分でもどうかと思う。でも、思ってしまったんだから仕方が無い。






 夏休み。


 私はヒナちゃんの帰省に付いて行く事になった。


 私は実家には到底帰る気になれないので「寮で待ってる。」と告げたら「そんな事させる訳にいかない」ってヒナちゃんに言われて付いて行く事になったんだ。




 私の不安を余所にハナコ家の皆さんは、私をとても温かく迎え入れてくれた。ヒナちゃんと御両親の間に交わされる温かい会話。コレが家族なんだなって私は初めて知った。


 愛らしい弟のテオ君も交えて、私達は彼方此方を侍女のライラさんに案内して貰って夏休みを満喫した。ヒナちゃんの燥ぎっぷりが凄くてとても楽しかった。ボートからひっくり返った時は笑いすぎて大変だった。でも護衛の騎士さん達には少し申し訳なかったな。




 帰省は一週間のつもりが伸びに伸びて二週間の滞在になってしまった。帰り際にヒナちゃんのお母様のシルヴィアさんに言われた言葉。


「ヤマダ、マリーベル様。一生を通して付き合える友人は、生涯を通しても何人も出会えるものでは在りません。・・・お互い仲良くね。」


 ・・・一生を通して。その言葉に私は涙を堪えた。きっとそうなって見せる。ヒナちゃんにずっと「マリ。」と呼んで貰える様に頑張る。きっとそうなれる様に頑張る。




 そんな想いが高まり過ぎたのか。或いは久しぶりにベッドを共にした喜びに高揚してしまったのか。その日の夜、私はヒナちゃんに跨がって床ドンした上に、彼女の滑らかな頬にキスをしてしまった。




 翌朝、私は目を覚まして驚いた。


 ヒナちゃんが私の右頬に手を乗せていたんだ。


――・・・!・・・え!?・・・何が起き・・・!?


「ヒ・・・ヒナちゃん?」


 混乱した私が彼女の名前を呼ぶと、ヒナちゃんは物憂げに美しく微笑んで私の頬を撫でるようにしながら手を離して言った。


「起こしてしまってごめんね。」


 その柔らかな手の心地良さと何が起こったのか理解出来ない混乱で私は何と言って良いのか解らなかったけど


「う・・・ううん、気に・・・しないで・・・」


 やっとこさそう言った。




 でも気にするなとは言っても、私自身が気になって仕方が無かった。2人で「毎日やろう」と決めた日課と夏休みの宿題を熟しながらも私の頭は朝のヒナちゃんの事で一杯だった。




 そんな私の様子に気付いていたのかヒナちゃんは朝の事を謝ってきた。私は慌てて首を振った。ヒナちゃんが謝ることなんて1つも無い。私が昨夜変なコトをしたせいだと解ってる。そう伝えるとヒナちゃんは理由を尋ねてきた。


「マリ、何であんな事を?・・・別に責めてはいないわよ。ただ、理由を知りたいなと思って。」


 私は恥ずかしくて、でも本当の気持ちも話したくて・・・視線を逸らしながら答えた。


「・・・その・・・久しぶりにヒナちゃんと同じベッドに入ったら・・・盛り上がってしまって・・・つい・・・。」


 ヒナちゃんは優しく微笑んでくれた。


「ふふふ・・・嬉しいわ。」


 嬉しいって言ってくれた・・・!


「ホント?」


 思わず尋ねるとヒナちゃんは頷く。




 ヒナちゃんはそれから私に訊いてきた。


「貴女は・・・今、楽しい?」


 私はヒナちゃんがなんでそんな事を訊いてくるのか解らなかった。楽しくない筈が無い。


 私の人生は貴女と出会えてから始まったのだから。母様が亡くなってから貴女に出会うまでの私は死んでいたも同然だったのだから。


 貴女が私に一度失った生命の息吹を再び与えてくれたのだから。




 彼女が私にどんな答えを望んでいるのか解らない。だから私は思うがままを言葉にした。


「うん、もちろんだよ。私はヒナちゃんと会えて生まれ変わる事が出来たのよ。」


 そう答えたらヒナちゃんは微笑んでくれた。


「そう。それなら・・・本当に良かったわ。」


「!」


 余りにも・・・本当に余りにも美しい微笑みを向けられて私は思わず顔を背けてしまう。胸の高鳴りが止まらない。顔の火照りが収まらない。




 ヒナちゃんは美しい。ダークレッドの艶やかな髪と双眸、それに整った顔は見る人を引きつける。そしてその繊やかで華奢な肢体と膨らみのある胸はきっと男子の目を引いて止まないだろう。それでいて男子顔負けの強さが在ったり、学問で学年1位をとって飄々としていたり。子供の様に好奇心旺盛なところも在ればお姉さんの様な淑やかな雰囲気も持っていたりする。


 知れば知るほどに彼女は私を魅了する。




 でも今、そんな理由を飛び越えて、嘘を言わない彼女の美しい内面と私を心から思ってくれる優しさが私を撃ち抜いた。




『私はこの人が好き。』


 本当に心から強く自覚したのはこの時だったのかも知れない。




 だから。少しでも私は彼女と一緒に居たくて。私はヒナちゃんを私のベッドに誘った。




「マリのベッドも久しぶりだね。」


 ヒナちゃんの言葉が嬉しくて、でも何だかくすぐったくて照れ笑いが浮かんでしまう。




 人の少ない夏休みの女子寮。本当に静かで、まるで私達2人しか居ないような錯覚すら覚えるくらいだ。




 ふと私は思い出した。ヒナちゃんの実家に帰省した時にヒナちゃんが私に選んでくれた銀砂の砂時計。


『マリの髪の色と同じだね。コレを買って今日の思い出にしよう?』


 笑顔でそう言いながら私に手渡してくれた砂時計。




 アレを2人で見たくなった。


 私はベッドから下りると机に飾っていた砂時計を手にした。


「どうしたの?」


 ヒナちゃんが上半身を起こして此方を見ている。


「コレ。」


 私はヒナちゃんに砂時計を見せると、枕元の月明かりが差し込む場所に置いた。




 サラサラと銀色の砂が月明かりに照らされて落ちていく。


 ヒナちゃんは銀砂を私の髪の色に例えてくれた。なら、ヒナちゃんはこの部屋に差し込む月の光だ。銀砂はソレだけでは輝けない。大きくて優しい月の光を浴びて初めて輝ける。月の光が無ければ闇に沈むだけ。銀砂が輝くために必要な月の光は、まさに私にとってのヒナちゃんだった。




「綺麗だね。」


 その言葉に私は呟いた。


「・・・ヒナちゃんが私にくれた大事な贈り物。私の一生の宝物。」




「アハハ、そんなに思って貰えるなら嬉しいわ。」


 ヒナちゃんは少し顔を赤らめながら、照れ笑いをしてくれる。




 その笑顔が愛しくて。


「こんなに温かい贈り物を貰ったのは本当に初めてだよ。」


 私は彼女に想いを込めて微笑んだ。


 どうか・・・伝わって。




 ヒナちゃんは瞳を揺らめかせて私を見上げた。




「・・・」




 私はヒナちゃんの薄紅色に染まった柔らかな頬に触れた。その滑らかな頬を私は撫でる。その頬の横には紅く染まった綺麗な唇がある。本当は唇で触れたくて堪らない彼女の唇を、私は人差し指でそっと触った。




「・・・」




 私の胸の鼓動がどんどん早くなる。




「・・・」




 柔らかなヒナちゃんの唇を人差し指で届いて欲しいと想いを込めて撫でる。




「・・・」




 ヒナちゃんはずっと私を見上げてされるがままだった。




「・・・」




 そして私はその人差し指を自分の唇に持って行くと、瞳を閉じてそのまま唇に押し当てた。




――・・・大好きです。




 夏の夜風が吹き込み、私の髪をサラサラと弄んだ。






「マリ・・・」




 ヒナが私の名前を呼んだ。




「ヒナ・・・」




 私はヒナちゃんの名前を呼んだ。




――・・・届いてくれましたか?




 そう思った時。






 ヒナちゃんが私をグイっと引き寄せた。


「!」


 一瞬、視界が激しく流れて、気が付いたら私はヒナちゃんに押し倒されていた。




「ヒナちゃん?」




 私はビックリしてヒナちゃんを見上げた。




「・・・」




 ヒナちゃんは私を見下ろしながら自分の唇をペロリと嘗めて湿らす。その仕草に私はゾクリとする。とても綺麗でとても妖艶な仕草。




 そして彼女は顔を近づけてその紅色の唇を私の唇にそっと落とした。




「!!」




 私の身体がビクリと震えた。信じられない。そうして欲しいと想っていた事が今起きている。動いてしまったら消えて弾けて無くなってしまうのではないか、と動けなくなる。




 その間にも、ヒナちゃんは私の唇に何度も口づけを落とす。その情熱的な口づけに私は痺れるようにヒナちゃんの唇を感じて彼女に支配されていく。生まれて初めてのファーストキス。




 やがてヒナちゃんはゆっくりと唇を離した。




「・・・ヒナ・・・」




 私は思わず彼女の名前を呼んだ。顔が熱い。胸の鼓動が高鳴りっ放しだ。ヒナは私に囁いた。




「ごめん、急に・・・。でも何だか押さえられないの。だから・・・」




 押さえられない・・・。嬉しい・・・。どうしてそう思ってくれたのかは解らない。でも、今、彼女は私を求めてくれている。




 ヒナは、もう一度私に口づける。




「うぅ・・・」




 ヒナの激しさに思わず小さく呻く。嬉しい。でも・・・ヒナばかりが攻めて終わりにしたくない。私の想いも知って欲しい。




 私はヒナの肩に手を掛けると彼女と体勢を入れ替えた。




「わっ」




 ヒナは驚いたのか思わず声を上げる。




 私はヒナ押し倒して、彼女の華奢な身体に跨がっていた。




 彼女は白磁の頬を紅色に染め上げあたしを見上げている。




「マ・・・マリ・・・」




 ヒナが私の名前を呼ぶ。私は私の中に猛り始めた欲望が一気に吹き出さないよう必死にソレを押さえ込みながらヒナに囁いた。




「ヒナばかりズルい。」




 そして私は身体を前に倒しながらヒナに顔を近づけると、その整った唇に私の唇に落とした。私はヒナが怖がらない様に少しずつ想いを解放していく。




 キスをするのとされるのでは、こうも違うんだと驚く程に彼女をあたしは強く感じた。




 口づけては離し、私はヒナの唇を舐める。


 そしていつもは力強く私を引っ張っていってくれる愛しい人が、今は、私にされるがままで蕩ける様な表情を浮かべている姿を見て、更に愛おしさを強く感じる。堪らなくてまた口づける。私は何度も彼女の唇を貪り、頬に口づけ、首筋を舐める。ヒナは其れに成されるがままだった。






 ヒナがこんなにも私を受け入れてくれるなんて。




 私はヒナの愛らしさに翻弄されながらも喜びを感じていた。




 ふと気付くと、いつの間にか砂時計の砂は落ちきっていた。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 翌朝の私達は顔から火を噴く思いだった。でも、私の「ファーストキス」だった事をヒナちゃんに伝えたときの


「ソ・・・ソウデシタカ・・・。それは、その・・・ごちそうさまデシタ・・・。」


 って言い方は面白かったな。


 そっか・・・ごちそうさま、かぁ。確かに言い得て妙かも。




 私はニヤニヤと笑ってしまう。それにしてもヒナちゃんの顔が真っ赤だ。


「うふふ、どう致しまして。ヒナちゃん顔が真っ赤だよ。」


「う・・・うん。」


 可愛いな。




 ・・・でも、と私は思う。彼女はどうなんだろうか。こんなにも魅力的な人がキスを経験した事が無いなんてあるんだろうか。確認したくて私は話を続けた。


「で?」


「え?」


「ヒナちゃんは?初めてだった?」


 一応、笑顔のつもりだったけどヒナちゃんの顔が少し引き攣った様に見える。あれ?私、上手く笑えてない?




 ヒナちゃんは何度も頷きながら答えてくれた。


「もちろん初めてだったよ。あたしもファーストキスだった!」


 そうだよね。勿論、解ってたけど・・・じゃあ前世では?私が気になるのはソッチのほう。だから私は話しを終わらせなかった。




「で、前世から算えると?」


「は?」


 ヒナちゃんのポカンとした顔が可愛い。・・・いやいや。




「前世から算えてもファーストキスだった?」


 途端にヒナちゃんの目が泳ぎ出した。


「あ、・・・ええと・・・」


「・・・。」


 ああ・・・やっぱりな。


「ファーストキス・・・じゃ無いです・・・。」


 ソレはそうだ。こんなに魅力的な人だもん。前世の人だってきっとほっとかないよ。姿も今のままだって言ってたから尚更だ。




 私はホゥっと息を吐いて呟いた。


「やっぱりな・・・。」


「マリさん・・・?」


「ヒナちゃんモテそうだもんね。」


 私がそう言うとヒナちゃんは納得のいってなさそうな表情になる。無自覚かぁ・・・。




「ヒナちゃん・・・」


 私はもう1つ気になっている事を訊いた。


「あ、はい。」


 ・・・さっきから何故か敬語になっているヒナちゃんに私は笑いそうになるのを堪える。




「キスだけ?」


「え?」


「キスしかしてない?」


 ヒナちゃんは無言でコクコクと頷いた。


「ふーん・・・」


 ・・・一瞬、目が揺れた様な気がする。




 でも・・・まあいいか。前世でキス以上の事をしていたとしても、私がヤキモチ妬くのはおかしな話だもん。




 でも・・・いつか、その先にいけたらいいな。









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