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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター1 1年生編 / 一学期
19/105

M17 S?M?

新年明けましておめでとう御座います。

今年も頑張って書いていきますので、応援宜しくお願いします。



 ――朝。


 目覚めたあたしは隣で眠るマリを見て昨夜の事を思い出した。




 今思い出しても顔が火照ってくる。




 あたしは自分でも驚く程の激しい欲求のままにマリの唇を求めた。そして、そんなあたしを上回る程に激しくあたしを求めてきたマリ。




 ――やっちまった。


とは思う。昨日の朝にマリとの関係をしっかりと考える的な事を思った、その夜にはマリとあんなに激しいキスを交わしてしまった。


 でも後悔は一切無い。


 だって本当は答えは自分の中で既に出ていたから。




 ――マリが好き。恋人になりたい。




 これがあたしの昨日の朝に考えた事への答えだ。


 この答えが正しいかどうかは問題じゃ無い。自分に嘘をついて誤魔化してないかどうかが問題だ。そしてその点に於いてあたしに後悔は無い。




 ・・・まあ、まったく問題が無い訳じゃ無いけどね。




 もし今後、色々と進んだときに『恋人』と明確な関係にするべきなのかどうか。


 女の子が男の子にする様な普通の告白じゃ無い。女の子同士の告白なんて贔屓目に見ても少数派だ。マイノリティなんだ。




 前世でも高校の時に女の子相手にお付き合いめいた事はしていた。キスもしたし、少し制服が乱れる様な事もした。でも、その関係を言葉にする事はお互いにしなかった。


 アニメや漫画では関係を明確に言葉にしていた。・・・でも、リアルでは中々そうは行かない。


言葉にするのは意外と勇気がいる。相手が関係を明確にするのを嫌がるかも知れない。そうなったらと思うと怖い。だから、お互いに口にする事は無かった。




 じゃあ、マリは?・・・なんにもわかんない。




 あんなに激しかったけど、じゃあ・・・。・・・キス・・・ん?・・・キスだけ?




「!!」


 あたしはハッとなって布団を持ち上げ自分とマリのパジャマを確認した。・・・着ている。・・・良かった・・・ソコまではしなかったみたい。


 ホッと息を吐いた。




 正直、昨夜の後半はもう本能に任せていたフシが在るのでよく覚えていない。どっちでもイケるあたしならやりかねない。


 理性が働いたのか、疲れて眠ってしまっただけなのかは分かんないけど、キスだけで済んだようだ。




 ・・・ああ、あたしって男の子と変わんないくらい美少女にとっては危険な存在なのかも。




「う・・・ん・・・」


 マリが動いた。




 あ、起きた。




 あたしはドキドキしながらマリの起きる様を見ていた。


「あ・・・」


 あたしを見たマリが小さく声を上げた。そして見る見ると顔を真っ赤に染めていく。それを見てあたしの顔も再び火照り出す。




「お・・・おはよう・・・。」


「うん・・・おはよう・・・。」


 気まずそうに2人して照れっ照れで挨拶を交わす。




 けど、直ぐに視線を合わせると


「えへへ・・・」


 お互いにどちらとも無く微笑み合った。




 よし!ギクシャクしなかった。取り敢えずは問題無し!






 朝の日課を終わらせてお互い自分の部屋で湯浴みを済ませるとリビングに戻ってきた。


午後にはアイナとフレアが我が家に強襲して来る予定だ。あたし達はそれまで紅茶でも飲みながらマッタリする予定だ。




 真夏の正午だと言うのに、涼やかな風が真っ白なレースのカーテンを舞わせながら吹き込んできてくれるお陰で暑さをそんなに感じない。


「・・・風鈴でも在れば最高だね。」


 あたしが呟くとマリが頷く。


「・・・あと、あんみつが食べたいな。」


「あたしも!」


 それ良い!あたしも食べたい!


 今度、作り方を考えてみよう。って言うかお父様に材料が取り寄せられるか尋ねれば良いんだ。




 あたし達は1度は閉まったコタツを再度引っ張り出して、掛け布団を引っ剥がして、また使っていた。絨毯も夏用に絨毛の浅い奴を購入して敷いている。


 やっぱりペタンとお尻を床に下ろして座るのは落ち着くんだ。




 あたしもマリもコタツの上に頭を寝かせて夏の風を楽しむ。


「・・・気持ちいいね。」


 マリの呟きにあたしはピクリと反応した。




 うーん・・・あたしってばエロいなぁ。でもマリがどんな反応を見せるか知りたくなった。


 あたしは頭を上げるとマリを見る。


「うん、気持ち良い。・・・でも昨日のキスも気持ち良かった。」


「!!」


 マリの身体がビクンと動き、頭を跳ね上げてあたしを見た。




 まさかそんな事を言われるとは思って無かったんだろうな。そりゃそうだ。ビックリした顔がどんどん紅く染まっていくのが可愛い。


「ヒ・・・ヒナちゃん・・・」


 少し咎める様に口を尖らせるマリにあたしの悪戯心が加速する。


「あれ?昨日みたいにヒナって呼んでくれないの?」


「もうっ」


 照れ隠しに怒って見せる顔が可愛いなあ。あたしはニヤニヤしてしまう。


「でも・・・」


 マリの表情に色香が混じる。


「・・・あたしも気持ち良かった。」


「あ・・・うん。」


 一瞬であたしはドギマギし始める。自分から仕掛けておいてこのテイタラクである。


「ヒナちゃん。」


「は・・・はい。」


「昨日のキスは私のファーストキスだったんだよ。」




 うおおっ!?


 マリの告白にあたしは衝撃を受ける。ファーストキス。そらそうだ。初めてで当たり前だ。




 よ・・・良かったんだろうか?そんな大切な事の相手があたしで。


 いや、やっちまったモノは仕方が無い。あたしだって前世のファーストキスの相手は女の子だったんだ。それに昨夜の出来事に疚しい気持ちは無い。断じて。・・・そう言う問題では無いが。




 ただ、あたしとしては単純にマリのファーストキス発言に動揺してしまい、思わず俯いてしまう。


「ソ・・・ソウデシタカ・・・。それは、その・・・ごちそうさまデシタ・・・。」


 マリはニヤリと笑う。


「うふふ、どう致しまして。ヒナちゃん顔が真っ赤だよ。」


「う・・・うん。」


 あたしは何だか恥ずかしくなり過ぎて頭が回らなくなってきた。


「で?」


「え?」


「ヒナちゃんは?初めてだった?」


 さっきまで楽しそうな笑顔を見せていたマリだったけど。今も変わらず笑顔のままだけど。其の美しい双眸が、今現在まったく笑って居りません。




 怖い、怖いよ!


 大丈夫。あたしだって今世では初めてだ。


「もちろん初めてだったよ。あたしもファーストキスだった!」


 色気もクソも無い告白だったけどマリは頷いてくれた。良かったZE・・・。




「で、前世から算えると?」


「は?」


「前世から算えてもファーストキスだった?」


 え、何?マリって心読めるの?何かそんなスキルでも貰ってんの?


「あ、・・・ええと・・・」


「・・・。」


「ファーストキス・・・じゃ無いです・・・。」


「・・・。」


 マリはジッとあたしを見つめる。やがてホゥっと息を吐いた。


「やっぱりな・・・。」


 あれ?あんまり不機嫌そうじゃ無いな。


「マリさん・・・?」


「ヒナちゃんモテそうだもんね。」


 いやいや、まったくモテませんでしたよ?


「女の子がほっとかないよ・・・」


 は?今、何と?女の子?男の子じゃ無くて?・・・確かに一部の女の子にはモテた・・・のかな?




「ヒナちゃん・・・」


「あ、はい。」


 マリの瞳に艶めかしさが宿っている・・・様な気がする。


「キスだけ?」


「え?」


「キスしかしてない?」


 この子どんだけ鋭いの!?




 あたしはとにかく無言でコクコクと頷いた。


 基本マリに対して嘘は吐かないスタンスで行くけど『制服が少し乱れる様な事も時々してた』なんて事は知られちゃ駄目よ。ダメダメ。


「ふーん・・・」


 マリは疑わしげな視線をあたしに投げる。




 ・・・何だろう・・・ゾクゾクする。昨夜から思ってたんだけどマリってば微Sっ娘のケがない?




 そう言えば高校の時にお付き合いしてた子に言われたなぁ。


『ヒナってMだよね。』


 あの子は蠱惑的な笑みを浮かべてあたしに囁いてきたからあたしは


『あんたはSでしょうが』


て言い返したんだけど、言い当てられた気がしてドキリとしたんだ。




 昨夜の事を思い返しても、確かにあたしが主導権を握ったのは最初だけで、後は終始マリに主導権を握られていた気がする。


 それに蠱惑的と言えばマリもああいう時に見せる笑みがそんな感じだよな。普段がやや幼く見えるだけに、あんな笑みを見せられるとそのギャップにドキリとさせられる。忘れてしまいがちだけど、さすがは悪役令嬢。そんな小悪魔的な表情をさせれば天下一品の破壊力だわ。




 あ、マリにコレを言っといた方が良いな。


「マリ。」


「ん?」


 マリは首を傾げる。


「あのゲス王子にあたしに見せる様な顔を見せちゃ駄目よ。」


「え?」


「マリの色んな顔を見せたらあのゲス王子、何を考えるか解らないよ。」


「!」


 マリは一瞬怯える様な表情を覗かせた。




 あの女好きなゲス王子が、この子の本当の姿、実はクルクルと表情を変える愛らしい少女だと知ったら、ゲスい事を考え兼ねない。




「だ・・・大丈夫だと思うけど・・・あの人の前では無表情を貫いてるし・・・。でも、うん、解ったよ。有り難う、ヒナちゃん。」


 怯えさせちゃったな。でも言っとかないとね。






「ヒナ!マリさん!」


「ヒナちゃん!マリ様!」


 アイナとフレアがあたし達の部屋に突入してきた。




 実はマリがあたしを『ヒナ』と呼んでいる事がバレた後、2人もあたしをヒナと呼ぶ様になった。マリの事も『マリさん』『マリ様』と呼んでいる。


あたしも2人を呼び捨てにするようになったし、マリも『さん』付けで呼んでいる。


もちろん4人しか居ない時に限るけど。




「お帰り。」


「お帰りなさい、2人とも。」


 あたし達は2人を出迎えた。




 2人の紅茶を用意する。


「・・・」


 2人はコタツを無言で見ていた。


「どうしたの?」


「・・・コレ、何?」


 ああ、そうか。2人はコタツを初めて見たのか。


「異国の机だよ。」


「床に座るの?」


 まあ、抵抗を感じるかな?


「うん。リラックス出来て中々いいよ。下には絨毯を敷いているから綺麗だし。あ、靴は脱いでね。」


 怖ず怖ずと靴を脱いだ2人は腰を下ろした。


「・・・」


「どう?」


「・・・何か不思議な感じ。・・・でも良いわね。」


「床に座るなんて面白い。コレ良いよ。」


 うん、気に入って貰えたみたいで何より。


 2人に座布団を渡して4人でコタツを囲む。


 うーん、いい感じだ。




 その後、あたし達は帰省先で起こった出来事を報告し合った。




「アイナ、お見合いしたの?」


 あたしがビックリしてアイナに尋ねるとアイナは首を振った。


「違うわ。私が婚約候補を見つけられなかったら、お父様が見繕った殿方とお見合いさせるって言ってきたのよ。」


「うわぁ・・・」


 貴族社会の常識とは言え、リアルに聞かされると少し引く。




「フレアさん少し背が伸びた?」


「うふふ、分かる?2センチくらい伸びました。」


 フレアの満面の笑みにマリは羨ましげな表情だ。この子は残念ながら未だ背は伸び始めていない。


「課題は・・・終わった?」


「バッチリです。」


 おお、意外だ!


 でもまあ、成績は優秀な子だしね。




 て言うかここに居る4人って全員が定期考査で20位以内に入っているのよね。優秀じゃないの。これで気兼ねなく残りの日数を遊べるってもんよ。




「え、じゃあマリ様はヒナちゃんの実家に一緒に帰省したの?」


「そうだよ。」


「いいなあ!」


 フレアが羨ましがる。




「あ、そうだ、ヒナちゃんと言えば・・・」


 フレアがあたしを見た。


「お父様にヒナちゃんと仲良くなったって言ったら、挨拶をしたいって言ってたわ。取引したい物があるんだって。」


 へー。そう言えばフレアの家って交易で大きくなったんだっけ。


「あ、私の父もそんな事を言ってたわ。ウチの領地で採れ始めた鉱石で話をしたいみたい。」


 おー、アイナまで。


「いいよ。お父様に訊いてみる。お父様は来る者は拒まずの人だから多分OK出るよ。」


「「良かった」」


 2人の笑顔が眩しい。


「お父様に商売の話をしたいなら、メリットとデメリットをしっかりと話すように御実家に伝えてね。デメリットを隠す人の話はお父様は一切聴かない人だから。」


 あたしがそう言うと、2人は真剣にメモを取り出した。


「他には?」


「うーん・・・。初めての訪問でも、物とか計画書みたいな物は持って行ったほうが良いかも。お父様は無駄な手間を掛けるのを嫌う人だから。」




 実家に居た約2週間のほぼ毎日、お父様は商談を持ち込んでくる人の相手をしていた。あたしも予定の無かった日は、同席させて貰ったり後から話を聞いたりしていたから、何となくお父様の好みのやり方を理解していた。




 そしてあたし達は残りの夏休みを遊び倒した。




 色々あった夏休み。4人の仲もかなり近づいた。特にマリとは・・・うん、近づいた。言っとくけどあの日以降は何にも起きてないからね。ホントだからね。





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