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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
ファイナル・チャプター 高等部
102/105

M87 世界の仕組みと断罪と



 エクスキューショナーの人に両脇を抱えられ、元主神は引き摺られる様に退場させられた。




「・・・。」


 その様子を黙って見送ったあたし達は最後に残ったエクスキューショナーのリーダーっぽい人を見た。彼はユラ様を見ると言った。


「ユラ=レーン=シルト様に通達致します。」


「はい。」


「貴女の報告により、問題が大事になる前に処理出来そうです。その点に関して評議会は貴女の功績を高く評価しております。」


「有り難う御座います。」


 ユラ様は静かに頭を下げた。


「ただ、一時的にとは言え主座が居なくなる事への失態は無視し得ない。」


「はい。」


「コレはA-7エリア天界全体の責任となります。」


「承知しております。」


 ユラ様は静かに微笑んだ。


「そしてムフバルト=ガンマ=ベスタブールが主座から外された今、この天界で最も地位が高いのは貴女です。」


「はい、覚悟は出来ております。」




「・・・え・・・?」


 其れまで沈黙を保っていたアリスが初めて動揺の声を上げた。


「待って下さい!」


 叫ぶ彼女にエクスキューショナーの人が振り返る。


「何か?」


「ユラ様は何も悪くありません! 一番悪かった人・・・いえ、唯一の悪かった人が排除されたのなら問題は解決・・・。」


 ユラ様が手でアリスを制した。


 その仕草にアリスは黙る。


「人の世に於いては其れで許される事も在りましょう。ですが此処は天界。幾十億もの人々の運命を預かる場所です。『許される』と言った温情は存在し得ない。1つの悪が幾億もの人々を死に追い遣ることさえ在るのです。捌きは厳正に苛烈に。其れが神の代行者を名乗る私達に課せられた最低限のルールなのです。」


「そんな・・・。」


 アリスは泣きそうな表情で声を詰まらせた。


「では何で私の提案を受け容れたのですか? ・・・責任を取らされると判っていたのなら断ることだって出来た筈なのに。」


「其れはアリスさん、私が貴女の提案を是としたからです。もう随分前からこの天界は機能していないと感じていました。そして『このままではA-7エリアに住む4つの星の人達は大変な災厄に見舞われてしまう』とそんな焦りが私の中に常にあったのです。ですが何も出来ないまま私は見つめ続ける事しか出来なかった。元主神と私は同罪なのです。」


「違う!同じじゃ無い!」


 アリスはブンブンと首を振ってユラ様の言葉を否定する。


「ユラ様は私が報告した地上の問題を主神に代わって奇跡を使って救ってくれていたじゃ無いですか!真摯に向き合ってくれていたじゃ無いですか! なんでそんな良い人が・・・。」


 両手で顔を覆って泣き出すアリスが見ていられなくてあたしとマリは彼女の背を摩った。




 ユラ様は寂しげに微笑むとエクスキューショナーの人を見た。


「覚悟は出来て居ります。どうぞ続きの方を。」


 エクスキューショナーの人はその声に再びユラ様を見ると一礼した。


「解りました。では続けます。」


 ユラ様が頷く。




「・・・やめて・・・。」


 アリスが俯いて涙を零しながら、か細く呟いた。




 学園で会ったときの快活なアリスからは想像も付かない程に打ち拉がれてる彼女を見て、ユラ様とアリスの間に深い信頼が在るんだなって解ってしまう。




 でも・・・あたし達では何も出来ない。


 あたしはやるせない思いでユラ様とエクスキューショナーの人を見つめた。




「ユラ=レーン=シルト様に通達致します。主座不在の罰として主神補佐の貴女に評議会から命令が下りました。」


「はい。」


「ユラ=レーン=シルト殿。前主神ムフバルト=ガンマ=ベスタブールに代わって貴女に主神代行を命じます。」


「・・・え?」


 ユラ様の表情が驚きに包まれる。


「あの・・・罰なのでは・・・? 昇格などと・・・。」


「罰ですよ。先触れ無く主神代行を言い渡すのですから、コレより先は貴女の仕事も大変になるでしょう。」


「でも・・・。」


「もっともコレまでも前主神の代わりに仕事をして居たのなら余り変わらないでしょうが。」


「はあ・・・。」




 ユラ様には本当に意外な処置だったらしく呆け気味だったけど、管理される側のあたし達から見ればちゃんと仕事してくれる人に神様になって貰いたいってモンだわ。




「ユラ様、了承を。」


 美貌の女神様の戸惑いには頓着せずにエクスキューショナーの人は返答を求める。


「あ・・・はい。承りました。」


 ユラ様が表情を取り繕いながら慌てて了承する。


「ユラ様の了承を確認致しました。・・・では私共はコレで評議会に戻らせて頂きます。」


 エクスキューショナーの人は一礼する。


「お疲れ様でした。」


 ユラ様も頭を下げる。




 エクスキューショナーの人達が帰ってしまうと、暫くあたし達は黙っていた。


 気が抜けたと言うか毒気が抜けたというか、何かみんな放心状態だったんだ。




 けど。


「良かった・・・。」


 アリスの声でみんなはハッと我を取り戻して彼女を見た。


 アリスは涙を流しながらも微笑みを浮かべてユラ様を見ていた。




 こんな姿を見ているとやっぱりこの子はヒロインなんだなって思う。




 ユラ様もアリスに向かって微笑み返す。


「有り難う御座います、アリスさん。私の身を案じて貴女が叫んでくれたとき・・・本当に嬉しく思いました。」


 アリスは鼻を啜りながら照れ臭そうに笑った。


「当たり前ですよ。転生してからずっと付き合ってきた仲ですよ。心配だってします。」


「はい。」




 ・・・なんかメッチャ良い雰囲気なんだけど。


 まあでも訊いておこう。




「ねえアリス。」


 あたしはアリスに話し掛ける。


「なに?」


「此処に入る前に『企んでいる事が在る』って言ってたのはこの事だったのね?」


 アリスは頷いた。


「最初にあの爺さんに会ったときから『ふざけた奴だな』って思ってたんだけどさ。6歳の時から色々と地上の問題を『報告』をしてたんだけど『ゲームの進捗状況はどうか?』って全然どうでも良い事しか訊いてこないし、問題の対処は全部ユラ様がやってたから凄い不安になってね。」




 OH・・・。


 確かに自分トコの神様がそんな奴じゃ不安しか無いわ。




「それでユラ様と相談して、もう直接ユラ様に報告する様にしたの。そんであの爺さんが失脚する様に今回の件を企んだの。聖女の私が見聞きしている事なら天界は把握出来るらしいからソレをユラ様が評議会に転送して普段の態度を見て貰ったのよ。まさかユラ様が主神になっちゃうとは思わなかったけど、それは嬉しい誤算よね。」


「ほう・・・。」


 アリスも本当に苦労してたんだな。


 まあ一番苦労してたのは間違い無くユラ様なんだろうけど。




「あの・・・。」


 アルフレッド様が声を上げた。




 おお、どうした? アルフレッド様。




「はい。何でしょう。」


 ユラ様がアルフレッド様を見る。


「その・・・他にも色々と説明が欲しいところ何ですが・・・。」




 ああ、確かに。




「はい、何でも訊いて下さい。答えられる範囲内でお答えします。」


 ユラ様が頷いた。


「有り難う御座います。」


 アルフレッド様は頭を下げてから質問を開始する。


「では、この・・・天界? と神様についてなんですが。」


「はい。」


「失礼な言い方なのは承知しているのですが敢えてこの様な言い方をさせて頂きます。皆さんは神様なのですか? ・・・先程、ユラ様はアリスさんに向かって自分達のことを『神の代行者』と名乗っておられましたが・・・。」


 ユラ様は苦笑した。


「其の通りです。我々は貴男方が思い浮かべる『神』では在りません。単なる神の代行者で。元は只の人族です。」


「・・・代行者と仰いますが、では神様はどうされたのですか?」


「神は・・・。」


 ユラ様の表情に寂寥感が漂う。


「神はもうこの星の海・・・貴男方の星で呼ぶところの宇宙の何処にも居らっしゃらないのです。」




 え、居ないの?




「な・・・何でですか?」


 思わずあたしは尋ねてしまう。


 


 ユラ様はかむりを振った。


「解りません。解るのは数千年前に神様はこの宇宙を去ってしまったと言うことだけです。」


 女神は一瞬だけ俯いたが直ぐに気を取り直した様に話を続ける。


「神はその時、宇宙中から選んだ12人の人々に自分の力の一部を渡しました。『以降はお前達がこの力を管理し、世界を導け。』と言付けて。其れが我々が評議会と呼んでいる『星海の12賢者』達です。私達は彼等に『神の力を執行する役』として各星々から選ばれた人族で、彼等を最高指導者として仰ぎ、宇宙に数万個在る人の住まう星々を各天界から見守り管理しているのです。」




 数万個!?


 人の住む星ってそんなに在んの!?




「え、あの、人が住む星ってそんなに在るんですか!?」


「ええ、在りますよ。」


 ユラ様はあっさりと肯定する。


「ただ、人の住む世界同士がコミュニケーションを図れることは在りません。距離が離れすぎているので。貴方達に解る言葉で言うなら・・・1億光年以上離れていますし。」




 1億光年・・・何だか小学生が誰かにイキる時に使うような単位が出て来たんだけど・・・。




「因みに私達が管理するA-7エリアはチキュウを含めて4つの星を管理していますが、どの星も最低で6億光年以上離れています。接触は不可能ですね。」


「・・・。」




 デケェ・・・。話がデカすぎる。あんまりデカ過ぎて感想が浮かんでこない。




「解りました。神様の件については理解しました。」


 エリオット様が了承する。


「話を聴いていると、やはり皆さんは評議会の方も含めて人間の様ですね。そして神様の遺した力を使って神様の代わりをしていると言う事ですね?」


 ユラ様は少し思案顔になったあとに言った。


「はい。貴方達に解りやすく言うなら・・・そう、ここは『市役所』みたいなモノです。」




 市役所・・・。


 何か一気にグレードが下がっ・・・・親しみ易い言葉が出て来たな。


 でも何か凄いしっくり来た。ずっと此処に感じていたイメージは正にそんな感じだ。




 まさかの神様のお仕事がお役所運営されていたとは。


 コレは知ってビックリの新事実やで。




「それで・・・。」


 アルフレッド様は質問を続ける。


「あのエクスキューショナーという人達はどう言う人達で、あと元主神はどうなるのですか?」


「エクスキューショナーは評議会で決定した事を実行する為に必要なありとあらゆる事を任される治安維持も兼ねた実行部隊です。そして元主神ですが、彼は恐らく『洗浄』されるでしょう。」


「洗浄とは・・・?」


「つまり、神失格となり普通の人となります。そして魂の輪廻に戻されて『魂の洗浄』が行われ、完全に記憶を失った状態で新たな命に転生します。」




 それだけ・・・?


 随分悪辣な奴だったのにソレじゃあ普通じゃない?




「ソレだけですか? 沢山の人達に凄い迷惑を掛けてたのに。」


 堪らずに訊いてみるとユラ様は苦笑した。




「確かに物足りなく感じるかも知れませんが『魂そのもの』に罪は在りません。罪は『生きてきた過程』に存在するのです。ただ、彼の場合は余りにも魂が汚れすぎているので1000年単位の長い洗浄が必要となるでしょう。・・・ソレに通常は死者となっている『無意識のうち』に洗浄が行われるのですが彼の場合は『コレから記憶を全て消される』と解っているのです。恐らく彼にとってはこの上無い恐怖となるでしょう。」




 うわ・・・それはエグいかも。




「じゃあ『天国』って無いんですか?」


 マリが少し悲しそうに尋ねる。




 そっか。直ぐに魂を洗われちゃうのなら善行を施しても記憶は無くなっちゃうのね。なんか寂しいわ。




 でもユラ様は首を振った。


「在りますよ。記憶だけを留める空間は用意されて居ます。貴方達が想像する天国の様な場所で『善行を積んだ記憶そのもの』は望む限り永久に住まうことが可能です。」




 おお!




「じゃあ、善行を積んでおいて損は無いと言うことですか?」


「その通りです。」




 良いじゃん!


 じゃあ、あたしも天国に行けるように頑張るか!


 あたしは俄然やる気が出て来た。




「質問は以上で宜しいですか?」


 ユラ様が尋ねてくる。




 そうね・・・取り敢えずはそんな処かしら?


 あたしはマリとアルフレッド様を見た。


 2人も特には無いようで


「大丈夫です。」


 とアルフレッド様が答えてくれる。




 ユラ様は1つ頷く。


 そして言った。


「解りました。では、これからの貴方達の処遇ですが・・・。」




 うん?


 処遇・・・?




「通常、人の住む星はその星で完結しているんです。生まれて育ち、子を成して死ぬ処までを全部1つの星で行います。そうしないと星々は独自の速度で文化形成や技術発展をしていっているのに違う世界の人々が来てしまうと健全な発展が見込めなくなってしまうからです。」




 そらそうだ。




「だから貴方達の存在は今皆さんが住んでいる『バゼル』にとって極めて異常な存在、イレギュラーなんです。」




 え・・・。


 ちょっと待ってよ。




「ですから私は貴方達を審査してどうするかを決めなくては為りません。」




 いやいや、ちょっと待ってよ。


 勝手に呼んでおいてソレは無いんじゃないの!?




「ただ、今回の場合は前主神に全ての非が有りますのでソレを考慮に入れる必要が在ります。」




 お、おお・・・。


 だよね。


 流石はユラ様。ポイントは押さえてくれているわ。




「当然だな。俺達はあの爺に勝手に呼びつけられたんだ。自由にさせて貰う権利くらい貰わないと割に合わないぜ。」




 クソ野郎の声が聞こえてくる。


 お前は散々好き放題やって来ただろうが。


 ユラ様はクソ王子を一瞥したけど何も言わずに話を続けた。




「判断の基準は2つです。バゼルの健全な発展を阻害して居ないか、そしてバゼルの人々を不当に傷付けて居ないか、です。」




 ・・・。


 あたしは背中に冷や汗が流れるのを感じた。




 いや、あたしヤバいかも。


 色々と前世のイベントとかブッ込んじゃったし、コタツとか脚立とか提案しちゃったし。あとエロルだかエルロだかも排除しちゃったし。襲われたとは言え刺客も傷付けちゃったし。




 あれ?


 ・・・マジでヤバい?




「では1人1人吟味します。先ずはアルフレッド君。」


「はい。」


 アルフレッド様が返事をする。


「貴男は前世での最高年齢は23歳。仕事帰りに事故に遭って落命。バゼルでの生活では、特に前世の記憶を利用するでも無く世界の発展に寄り添って生活していました。評価は極めて良好ですのでこのままバゼルに戻って頂きます。」


「有り難う御座います。」




 そっかぁ。アルフレッド様って23歳だったのかぁ。道理で大人だなぁって思ってたんだ。




「次にマリーベルさん。」


「は、はい。」


 マリがメチャクチャ緊張した表情で返事する。


 だよね。緊張するわ。




「貴女は前世での最高年齢は12歳。病気に因って落命。バゼルでの生活では『車椅子』を提案していましたがコレに因る悪影響は認められていません。貴女が提案しなくても10~20年後くらいには出来る物でしたし、寧ろ良い影響を与えていると評価出来ます。拠って評価は良好ですのでこのままバゼルに戻って頂きます。」


「あ・・・有り難う御座います。」


 マリが心底ホッとした様にお礼を言う。




 良かった・・・取り敢えずマリはお咎め無しだった。




「おかしいだろ!!」


 クソ王子の声が響いた。


「おかしいとは?」


「ソイツは悪役令嬢だぞ! なんで咎め無しなんだ!?」


 ユラ様はアホのアホな質問にも答えてあげる。


「悪役令嬢と言うのは元主神が勝手に定めたモノで既に無効ですし、彼女自身を評価する材料には一切成り得ません。」


「納得いかない!!」




 ・・・コイツ今までの話を聴いてなかったのか?


 もう話はそんな段階じゃ無いんだよ。あとお前の納得とかどうでもいい。




 ユラ様は其れには答えずにあたしを見た。


 ドキッとする。




「次にヤマダ=ハナコさん。」


 ほい来たぁ・・・!


「は、はい・・・。」


 ヤバい。自信無い。って言うか何であたしだけフルネームで呼ぶんだよ。




「貴女は前世での最高年齢は18歳。落命の原因は・・・前述の通りです。」


 ユラ様も流石にあたしの情けない死因を2回も言うのは憚れたのか省略してくれた。


「・・・バゼルでの生活では様々なイベントと幾つかの物品を提案していましたが、コレに因る悪影響は・・・。」




 ヤバい。相当影響は与えている筈。


 あたしは手の平に掻いた冷や汗を握り締めた。




「・・・認められていません。」




 ・・・ホッとした。


 身体が一気に脱力した。




「聖夜ツリーに関して言えば本当はグレイラインなんですが、特に宗教的な考えを広めた訳では無いので良しとします。他の物に関しては寧ろ良い影響を与えていると評価出来ます。拠って評価はまあまあ良好ですのでこのままバゼルに戻って頂きます。但し思想的な影響を与えるイベント事の提案は絶対に避けて下さい。其れと『蒸気機関』や『電気』などの発展に大きな影響を及ぼす物の提案も避けて下さい。」


「はい。」




 ソコは大丈夫だ。


 何故ならあたしにそんな知恵は無いからやろうと思っても出来ないんだ。




「良かった。ヒナちゃん!」


 マリが抱きついてくる。


 あたしも思わずマリを抱き締めた。




「最後に・・・。」


 ユラ様の視線が王子に向けられた。




「ライアス王子。」


「・・・。」


 王子はふんぞり返っている。




 お前は返事くらいしろや。




「貴男は前世での最高年齢は26歳。不摂生因る体調不良が原因で病が悪化し落命。バゼルでの生活では王子の立場を利用して複数の少女を徒に疵物にし人生を大きく変えさせました。またコレを反省する事も無くアリスさんにも同じ事をしようと目論んでいましたね。」




「!?」


 アリスの表情が引き攣り、嫌悪の表情も露わに王子を睨め付ける。




 ユラ様は続ける。


「更には王子と言う立場を利用してやりたい事をしていた様でしたが義務は果たそうとしていませんでした。コレに因る悪影響は極めて絶大。」


「・・・。」


 心無しか王子の表情が青白く見える。




「幾ら前主神の目論みに巻き込まれたとは言え、到底見逃すことは出来ません。」


「ま、待て!」


 王子が切羽詰まった様に叫んだ。


「俺は王太子だぞ。そのくらいの事は・・・。」


「更に言えば!」


 ユラ様の語調が強まり王子は思わず黙り込む。


「・・・更に言えば、貴男は前世でも19歳の時に似たような事件を引き起こしていますね。未成年である事を良い事に女児に乱暴を働く事3件。またその他にも他者の命を脅かす行動を取っていますね。」


「ち・・・違う! あの時は未だ俺も子供だったんだぞ。そのくらいの事は・・・。」




 こいつ・・・本当のクズだ。


 全部に都合の良い理由を付けて罰も受けずに許して貰おうとしてやがる。


 傷付けられた人の事など一切考えずに。




 ユラ様は首を振った。


「許されるべきだと? 残念ながらそうはいきません。貴男の所行は前主神の行い云々以前に人間性に大きな問題が在ります。拠って貴男はこのままバゼルに戻す訳にはいきません。」


「ふざけるな!」


 王子は叫んだ。


「み・・・認めない・・・認めないゾ・・・オ・・・オレハ・・・。」


 次第に目の焦点がずれていってる様に見える。




 もう正気を失ってるんじゃ無いの、コイツ。




 そんな焦点の合わない視線がマリを捉えた。


「オ・・・俺はヒーローなのに・・・オマエは悪役令嬢なのに・・・こんな結果が許されるモノカ!」


 正気を失った王子が猛然とマリに掴み掛かった。




「!!」


 マリの顔が恐怖に引き攣る。


「マリ!」


 あたしがマリを庇おうと彼女を引き寄せる。




 と同時にアルフレッド様がスッとあたし達と王子の間に割って入った。


 彼の手足がスッと動いたかと思うと王子の身体が音も無く宙を舞う。




「・・・。」


 何が起きたか理解出来ずにあたしとマリは宙を舞う王子を無言で見上げた。




『ドン』


 と音がしてハッと我に返る。




 ソコには背中から落ちて気絶した王子の情けない姿があった。









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