ヨハンの働き1:事の起こり
ヨハンはこの世界では辺境とされている北方の中では比較的人間が多く住む街トクトミュで凧を作る工房で働いている。この凧は元来、子供の玩具であるが。魔法で強化した素材で作った凧をドラゴンの動きを妨害するように揚げることでブレスを使わせるという使いみちが考案され、この町の重要な産業になっていた。多くの竜は一度ブレスを使うとしばらく使えないので被害が抑えられるし、動きが妨害されればその分魔法も当たりやすくなるのだ。
このヨハンの人生を一変させるような話が舞い込んだのは先日のことだった。
今日のヨハンは街にスケッチに出ていた。が、あまり進んでいないようだった。が、それでは困るのである。このスケッチは休憩時間の気分転換なのではなく凧のアイディアを収集するための重要な作業なのだ。ヨハンは若手でありながらスケッチを収集してそれを基に新しい凧の雛形を作る職人の一人として遇されているのだ。つまり彼のスケッチには工房の未来がかかっているとも言えるので「スランプです」などと言ってはいられないのだ。
「とは言ってもなー」
ヨハンはひとりごちた。やはり手は動いていない。
「なんで親方も、"あの方たち"も俺なんかにこんな大役・・・」
その日ヨハンは親方に呼ばれると"秘密の依頼人"が通される応接につれていかれた。そこには商売敵であるはずの魔法使いギルドのギルド長以下の有力親方がいて、人の乗れる大きさの凧を作って魔法使いを載せて飛ばせというのだ。
凧工房の親方は「お前の才能ならできる!」と太鼓判を押してくれたが、今にして思えば失敗したら魔法使いギルドに人身御供として引き渡すつもりなのだろう。
「だいたい普通にタコに乗せて飛ばしたって魔法で竜を落とす前にこっちがブレスでやられちまうよなー」ヨハンはなおもブツブツ言いながらスケッチブックに向かっているが一向に手は進んでいない。が目の色が変わってきたところを見るとなにか思いついたのかもしれない。
体調を崩して執筆が遅れてしまいました。次は早く書けるといいな。