二話
「ううっ」
私は壁に頭を打ち付けた衝撃で目を覚ました。だんだんと頭が冴えてくるのと同時に私が逃げ出して来たことを思い出した。まだ少し眠いが体を起こして外の川へと向かう。水分を補給したあともう一度洞窟に戻ってこれからのことについて考えることにした。
今まで魔族が人の町を大規模に襲うことなんてなかった。それに確か魔族は200年ほど前に突如現れた《勇者》達によってほとんど殺されて、今はもう少しの生き残りしかいないって習った。どうにかして王都に帰るかそうでなくても大規模な街まで逃げ込めば安全なはず...
でもな~ここが何処か分からないから、街に行こうにもどっち向かえば良いのかが分からない。
...作れるか?幸い魔工具だけは持ってる、人の魔力を辿れれば何処かの街には行けるはず。生き物はそれぞれ魔力というエネルギーを持っているらしい、もちろん量などは個体差があるが。魔力について詳しいことはあまり分からないが、そんなこと今はどうだって良いこんな便利なエネルギー使わない手はない
幸い作り方は習っているし材料もそこまで珍しい物を使う訳でもない、そうとなれば早速、外に出て...
外から声が聞こえる!きっと誰かがいるんだ、その人から街の方角が聞ければそこに行けるし、運が良ければ一緒に連れていって貰えるかもしれない。そう思い音をたてて洞窟から飛び出そうとした。
「...魔族だ。三人もいる」
迂闊だった。舞い上がり音をたてて飛び出そうとした先ほどの私を呪ってやりたい。魔族は音がしたことには気づいたが私がこの場所にいることまでは分かっていないようだ。
「音がしたぞ!!近くに人間がいるかもしれん、どれだけ時間をかけても良い徹底的に周囲を探索しろ!!」
魔族のリーダーらしき人が指示を出している、この場所がバレるのも時間の問題だ。何処か身を隠せそうな場所がないか周りを見回して見る。するとこの洞窟には奥が続いているのを見つけた。
「行くしかない」
奥に進んでみると分かれ道はなく一本道が続いていた。迷わないのは良いことたが身を隠す場所としては最悪だ、暫く進んでいると一番奥にたどり着いた。そこは少し開けていて...人間と同じくらいの大きさの人形らしきものが落ちていた。
「なにこれ?」
その人形は頭部と体が離れていて体には穴が空いていた。ふと、学園で聞いた話を思い出す。かつて帝国では魔導人形と呼ばれる兵器が開発されていたらしい。
「これを直せれば...」
構造も分からない代物魔工具の力を使えばある程度調べられるとはいえ、現実的でないのは分かっているが、やらなきゃ殺される。魔工具を取り出し起動する。
「魔工具起動、構造把握術式展開。見せてやる、魔工学園首席の実力」
魔工具に魔力を流し込むと青白い光を放ち始めた、ちゃんと起動できた証拠だ。つぎに魔方陣と呼ばれる円形が現れた。この魔方陣は魔力を使って何かをしようとすると必ず現れる、詳しい原理はまだ習っていない。
その魔方陣が人形を下から上へと構造を読みとった。その構造が頭のなかに浮かんできた。
「複雑すぎる...」
こんな持ち運びが可能な魔工具ではほとんど修理が出来ないほどに難しくて複雑だった。でもやるしかない、まずは一番簡単なところから。
頭と体を接続する、一見難しそうだが切り口がとんでもないほど綺麗だったのでそう難しくはないはず。
必死に修理をし何とか頭部と体を接続させることができたがこの先どうすればいいかが全く分からない。穴を修復するには材料がないしそもそも何が使われているのかすら分からない。
「見つけたぞ」
どくんと心臓が跳ね上がった。振り向けばそこにはさつきの三人の魔族がいた、ここは洞窟の一番奥で逃げ場はもう何処にもない。
「ああ、あぁ。い、嫌」
恐怖で心がいっぱいになり涙が溢れ手足は震えている。そんなことは知らないと魔族は無慈悲にも右手をゆっくりとこちらへ向け魔法を放とうとしている。
「火炎魔法展開、燃やし尽くせ、ファイアーボール」
魔族の放った火球が、死その物が迫ってくる。それに当たれば私は瞬く間に焼き殺されてしまう。
...死にたくない、その思いが体を動かした。横に倒れ込んだだけであったがその火球を避けることは出来た。私に当たらなかったそれはそのまま私の後ろにあった人形に当たった。
「おいおい、外すなよ~」
「黙っていろ、次は外さない」
魔族は余裕そうにしゃべっている。先ほどは動かないだろうと思われていたから避けられただけでもう一度魔法を放たれれば次はないだろう。もう、本当に終わった。
また、ゆっくりとこちらに手が向けられる。そして魔族が魔法を放とうとすると、先ほどの流れ弾があたった人形から金色の光が溢れだした。その光は神々しく、そして何となく暖かい感じがした。
「これは!?チッ退くぞ!!」
「でもまだ、殺してないぞ!?」
「いいから早くしろ、浄化されるぞ!!」
何故か魔族達が逃げて行く、この光のおかげだろうか。
「た、助かったの?」
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