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平等

『僕も、誰であっても、この国に協力すべきだ。って考えてた』

『じゃあ……』


 三芳は、ぱああっと、顔を輝かせた。何だか、大型犬みたいだ。いつもの彼は、犬ってよりは、狼だけど。


『でも、柏岡君たちの話を聞いてから、ずっと考えてたんだ。戦闘スキルのない人達を、戦闘に連れて行くのは、どうなんだろうって』

『なんで柏岡なんだ?』


 神谷は少し考えこんだ後、笑った。


『彼らのことは、多分……きっかけ、だったんだと思う。それ以前から、今までの自分脳行動は、本当に正しいのか?と、疑問には思っていたんだ』

『ふーん?』


 いまいち、意味が分かっていないような、返事だ。

 それに神谷も気が付いたのだろう。さっきの独り言のような発言から一転、今度は、三芳に伝わるよう、語りかける。


『ほら、言ってただろう?柏岡君は、その……特殊なスキル持ちだって』

『そうだな』


 それがどうしたんだ?とでも言いたげに、首を傾げる三芳。そんな彼に、神谷は顔を歪めた。どう伝えるべきなのか、考えあぐねているのだろう。


『因みに、三芳は、柏岡君を連れて行くのは賛成なの?』

『それは流石になあ……』


 唐突に、肩をつつかれた。

 無論、八束だ。にやにやしている。


「流石にやばいと思われているらしいぞ。良かったな」


 ……何だか、恩着せがましかったので、無視をする。


『そう思ってるなら、話は早いや。柏岡君みたいな人が、他にもいるかもしれない。厄介なスキルを持ってる人がね。彼は教えてくれたけど、もし、『その人』が、他人にそのことを、打ち明けられなかったら。一人で抱え込んでしまったら。彼らを勧誘するのは、より、彼らを傷つける結果になるだろうね』

『それは……一人で抱え込まずに、俺達に……』

『話すべきだろう。って?確かにその方がいいんだろうね。でも無理に話させるのは、そこまで強制してしまうと、それは、悪い事をしているのと、変わらないんじゃないかな……』


 三芳は黙り込んでしまった。きっと何も言い返せないのだろう。

 しかし、まだ納得はしていないようで、悔しそうに、口を真一文字に結んでいる。


『じゃあ明日からは……』

『それって差別じゃないのか?』


 ぼそり、と三芳は呟いた。今度は、神谷が黙り込む。


 む。これは確かにそうかもしれない。

 差別は駄目。それはそう。なん、だけど、今回のことを差別って言われると、なんか抵抗あるんだよなあ……。俺の感情が邪魔して、そうなってるだけ、の可能性は否定できないけど。でも、いや、だからこそ?もやもやする……。


「なかなか、痛いところついてくるなあ……」


 俺はつい、声に出してしまう。すると、凄い勢いで、八束に見られる。

 え?なに?なんか変なこと言った?


「いや、痛くはないだろ」


 物凄い、しかめっ面をされた。

 いやいや、見る限り、神谷も俺と同じような反応してるし、少なくとも、あっちでは効果はあると思うんだけど。


「ふつーに考えて、戦闘スキル、持ってない奴を、無理に誘わないのは、区別だろ」

「区別?」

「ああ。トイレが男女別になってることに、差別だ!って怒る奴はどう思う?」

「変態だね」

「そう。だからつまり、三芳は、ド変態だ。ってことだ」


 なるほど。分かったような、分からないような。


「つまり昨今問題視されている、差別とは違う、ってことだね」

「そーゆう事だ」


 自信満々に頷いているが、差別と区別の違いを、具体的に教えてもらいたい。

 とは思ったものの、八束に聞いても、的確な答えは、返ってこない気がする。感覚で生きてる男だからなあ。

 でも、八束の発言が、全くの参考にならなかったか?と聞かれると、そうでもない。少なくとも、自分の感覚に、自信が持てた。


 なんでそう思うかの理由は、依然不明のままなんだけど。

 ていうか、なんで八束は、そんな自信満々なんだ?多分、理解度レベルとしては、俺と同じくらいなのでは?いや、まあ、別にいいんだけどさ。


「でも、その主張を、神谷がするとは限らないんじゃない?」

「まあ、神谷はしないかもな」

「じゃあ……」

「だが、他の奴が何も言わないとは、限らないだろ?」


 八束は目線で、テレビを促した。彼に従って、テレビを見る。……とややこしい事になるので、視界の右半分に注目してみる。

 すると、今まで黙っていた中禅寺さんが、口を開いた。


『ところで、貴方達、差別の意味って知ってるかしら?』


 唐突な問いに、三芳と神谷は顔を見合わせた。


『あら、もしかして、意味も分からずに、言葉を使ってたの?』

『そ、そんなわけないだろ。差別ってのは、理不尽に相手を下に見る行為のこと……なん、じゃないか?』


 勢いで言ったは良いものの、話すうちに、自信がなくなってきたのか、段々と語気が弱くなっている。そんな三芳を見て、ほほ笑んだ。

 こんな場面で微笑まれたら、怖くて仕方ない。流石の三芳も、冷や汗くらいは掻いていることだろう。


『そう認識してるなら、話が早いわ。なら聞くけど、テストの結果で、合格不合格が分けられることは、どう思う?』

『どう……って。普通の事だろ?』

『その結果で、高校がいけない子が出たとしても?』

『それって普通の高校受験の事だろ?』

『つまり、おかしいとは思ってないのね?』

『ああ』


 胸を張ってこたえる三芳。なんだか、誘導尋問的な流れだなあ……。

 そして、彼女の言いたいことも、大体分かった。……流石、中禅寺さん。と思わざるを得ない。


『それって、戦闘スキルを持たない人を戦わせないのと、何が違うのかしら?』

『……あ』

『つまり、戦闘力のない人たちを、戦わせないことは、差別じゃない。って事よ』


 中禅寺さんは、満足そうに目を細める。三芳はそんな彼女に、何故か。満面の笑みを向けた。まさか、皮肉のつもりか?さっきのコテンパンにされ度からして、そこまで余裕があるように見えなかったけど……。


『やっぱ中禅寺さんは、すげーな!』


 かっと見開いた眼は、キラキラ輝いている。

 え?どういう事?と一瞬戸惑ったが、分かった。こいつ、大型犬だ。


 中禅寺さんは、こういう態度取られるの嫌そうだなあ……。なんて思いながら、彼女の様子を見てみる。


『そんなことないわよ』


 冷たい声色で一蹴。しているかのように聞こえるが、表情は硬くない。いや、と言うか、照れているようにも見える。もしかして、満更でもないっぽい?


 なんか意外だ。褒められるなんてこと、中禅寺さんは、飽きるほどされてきただろうに……。それとも、もっと他のところが、心に来たのだろうか?うーん。分からん。


『いや、すげーって!!俺ほんとに差別なんじゃないか、って不安になってたもん。寧ろ否定してくれて、嬉しかったわ!』


 あ。嘘だ。

 え?いやあ、まじか……。

 取り敢えず、八束と話そうと、彼を見ると、すげえ、目を細めて、画面を睨みつけていた。


「嘘。吐いてるらしいけど」

「まあ、そうだろうな」


 分かってたのかよ。俺の能力要らずじゃん。


「なんで分かったの」

「なんとなく」


 あっ。さいですか。


「それよりも、三芳の心を読んでみろ」


 ん。まあ、嘘ついてる理由くらいは、知っといた方がいいよな。今の場面で、嘘つく理由が、分からないし。

 んー?『俺の邪魔しやがって……このクソアマが。こいつさえいなければ……』


「なんかこれ、本格的にやばくない?」

「ヤバすぎて、寧ろ面白い」


 いやいや。まあ、確かに、知ってしまった以上、どうしようも出来ないし、そこまで仲がいい訳じゃないから、他人事感は凄いけど……。


「え?ていうか、なんで、三芳は、嘘吐いてるの」

「知らんよ。お前の能力で分からないのか?」

「んー。都合よく、三芳が脳内で、自分の状況を語ってくれない限りは」

「じゃあ、無理なんだな。使い勝手がいいんだか、悪いんだか、良く分からない能力だな……」

「欲しいなら、あげるけど」

「その為には、能力を交換できる奴を、探さないとな」


 互いに一歩も譲らず。である。俺も八束も、自分の能力が嫌なのは確かだから、交換できれば、良いのにね。


「時に、神谷のことどう思った?」

「どうって言われてもな……現状維持だが?」


 何を言い出したんだ?と言いたげな顔で見られる。


「いや、見直したとか、ないのかなあ……と」

「ん……?」


 少し考えこんだ。恐らく今までの神谷たちの会話を、振り返っているのだろう。暫くすると、「あ、ああ……」と声を上げる。それから、グイッと、俺の方へ顔を寄せた。

 俺が女で、こんなことされたら、きゅんと来てしまったかもしれない。そう思うほどに、綺麗な顔立ちだった。


 ま、俺が女だったら、八束にこんなことされないと思うけど。


「言っとくが、俺の神谷が、嫌いな理由と、お前が神谷を、いまいち好きになれない理由は、全然違うと思うぜ?」


 ……なるほど。その可能性は失念していた。と言うか、似たようなものだと思ってた。いや、今でも思ってる。

 でも、うん。そう決めつけるは良くないか。本人が言ってるなら、尚更だ。

 そういうとこから、八束を不快にさせてしまうかもしれないしね。八束ならいいけど、他の人にやっちまうのは、絶対嫌だし。

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