応え
そして、俺にもついに彼女ができた…
おっと彼女の紹介が遅れたな!
その彼女ってのはちょっとツンデレ、でも可愛らしい一面もあって、スポーツも勉強もできる完璧な幼馴染の女の子だ!
んな訳あるかぁぁぁぁ!!
なんで?なんで俺が告白されてんの?
ちょっとラブコメの神様ァァ!主人公間違えてるよ!!
主人公は俺の友達の睦月なんだよ!
俺は脇役でいきたいんだよ!
司は夏祭りのあの日、蘭に告白された。
「またまたー、ら、蘭さんは冗談が過ぎるんですよー」
引きつった笑顔でそう言おうとした瞬間、蘭から拳が飛んできた。
「司のバカ!」
痛てぇ…
回想終了、その後司は真っ赤に腫れた頬を抑えながら穂波と帰った。穂波は俺の顔を見て爆笑していた。
穂波には適当に段差で転んだと説明しておいた。
マジで拳でくるとか、ツンデレ怖い。
翌日の学校に蘭は来なかった。
朝学校で睦月に話しかけた。
「なぁ睦月、蘭が今日学校来てないけど何かあった?」
理由は司が1番分かっている。
「うーん、わかんねぇよ…昨日祭りじゃ普通だったし」
そう言うと、睦月は司の目から視線を外した。
「わかった」
睦月は嘘をつく時は目線をずらすことを司は知っていた。
つまり何かを隠している、きっと夏祭りに睦月も何かがあったに違いない。
昼休み屋上で睦月と昼食を食べる。
「睦月、今日の作戦だが…」
作戦内容は、今日学校から明日までに提出の封筒が配られることになっている。もちろん学校を休んでいる、蘭は受け取ることができない、ここで睦月が蘭の家まで封筒を届ける、そこで元気になったらまた遊ぼうな的なことを言う。
完璧だ。
これで好きの対象が少しでも睦月に傾くかもしれない。
「いや、やめとくわ」
司が作戦内容を話し始めた時、睦月は立ち上がって、そういった。
「何を隠しているんだ?」
司が睦月に尋ねた。
「バレたか…さすが司だ、でも教えられない」
「なんで教えられないんだ?」
「そのうち教えてやる」
すると睦月はその場を立ち去った。
結局、家が近いという理由で司が蘭に封筒を届けに行くことになった。
「気まずいだろ…どんなテンションで行けば…」
そんなことを呟きながら、蘭の家の前まできた。
インターホンを押すと、蘭の母親の紗栄子さんがでた。
「あら、司くん?」
「今日、その学校で封筒が配られてて」
「届けに来てくれたの?」
「あ、はい」
よし、このまま紗栄子さんに預けて帰ろうと司は思った。
「よかったら、蘭の様子を見てきて欲しいんだけど…」
困り顔で紗栄子さんがそう言った。
「熱はないみたいだけど、朝から部屋から出てこなくて…」
「わ、分かりました様子見てみましょう」
ついに司は蘭の部屋の前まで来てしまった、RPGのボス戦の前の扉のような緊張感が漂っている。
「蘭?大丈夫か?」
そう言うと、扉越しに蘭から返事がきた。
「昨日の返事教えて」
「…」
そりゃ気になるに決まっている、でも司は何も答えることができなかった。
「入って」
そう言って蘭は司を部屋に入れた。
部屋の中は、ぬいぐるみが置かれていて、いかにも女の子の部屋という感じだった。
そして、蘭はアザラシのぬいぐるみを抱きしめ顔を隠し、もう一度司に返事を求めた。
「昨日の返事を教えて」
「付き合えない…」
司は小声だったが、ハッキリそう言った。
蘭はすると隠していた顔を出した。
「やっぱり、文芸部のあの子がいいの?私じゃダメなの?」
「違う、そうじゃない」
睦月が蘭のことが好きだからとは言えない。
「じゃあなに?私のことが嫌いなの?」
「嫌いじゃない」
「じゃあ付き合ってよ…」
蘭の小さな顔から大粒の涙が流れてくる。
「司、私と付き合ってよ」
「ごめん、蘭それはできないんだ」
司は目を逸らしてそう言った。
「ちゃんと目を見て!」
そういうと蘭は司を押し倒し馬乗りになり、無理やり顔を向かい合わせた。
司の目の前には、よく遊んだ頃の蘭とは違い高校生になり、司に恋をする蘭がいた。
司は蘭が乗っている上半身を無理やり上げ、蘭を抱きしめた。
「俺って最低だ…ごめんな…蘭」
司の胸の中で蘭は声を出しながら泣いた。