夏祭り
「先輩は彼女とか作らないんですかー?」
学校が終わった放課後のことの文芸部でのことだった、ふと穂波が司に質問をした。
「作らない、少なくとも高校では」
「なんでですかー?絶対作ったほうが楽しいですよー」
「…そうだな」
かといって彼女が欲しくないわけでもない。
「まぁ先輩のそれは自由ですけどねー」
この手の話は苦手なので話を切り替える。
「そうだ、次は夏祭りに2人で行かせる作戦だ」
今回の作戦内容は睦月が蘭を夏祭りに誘うことに成功したので、その夏祭りを尾行する。
別に必要ないとは思うのだが、睦月が念の為着いてきてくれとのことだった。
「だから一応、穂波も俺に着いてこい」
「えっ?それはデートのお誘いですかー??」
「違う」
違うはずた。
6時半、穂波と司は駅前で合流することになっていた。
穂波「もう着きまーす」
俺「りょーかい」
と言っても穂波は10分も遅刻をしている。
そして穂波が待ち合わせ場所にきた。
「センパーイ!お待たせしましたー!」
穂波は浴衣姿で、司は少し見とれてしまった。
「お、おう…」
「あれ?どうしました?もしかして、浴衣姿の私に惚れましたかー?」
「そ、そんなことはない」
図星だった。
そんな会話をしていると、穂波が蘭と睦月が見つけた。
「あっ、あれ睦月先輩ですよね?」
「そうだ、尾行するぞ」
すると睦月だけが気づいたようで、こちらを見て親指を立てていた。
「大丈夫そうだな」
そして、尾行しつつ穂波と夏祭りを楽しんだ。
「センパーイ!私アレ食べたいです!」
そう言って、穂波は近くのチョコバナナの屋台を指さした。
「チョコバナナ?自分で買えばいいじゃないか」
「先輩、女の子と夏祭りですよ!それぐらい奢ってくれてもいいじゃないですか!」
あぁ誘わないほうがよかった…
「そんなつもりで祭りに来たわけじゃないし…でも協力してくれてるんだから、ある程度は奢るよ…」
「やったー!先輩の太っ腹ー!かっくいぃー!イケメン童貞!」
「そんな褒めなくても…おい最後のやめろ」
そして、俺達は完全に睦月達を見失っていた。
「次は射的しましょうよー!」
右手に金魚、左手にたこ焼きとヨーヨーを持った穂波が、また散財させるようだ。
でも射的に自信がある司は少し乗り気だった。
「し、しゃーねな最後だからな」
「やったぜ」
「あー私あのぬいぐるみが欲しいです!」
穂波が指さす先には最近流行っているというウサギとクマの合体したうさグマのぬいぐるみがあった。
「なんだあれは…あんまり可愛くねぇな…まぁいい任せろ」
そして、俺は銃をかまえる。
獲物に狙いを定める、ここの店主はケチなのか3発しか弾が無かった。
一発目、俺はうさグマを動かすことに成功し、二発目であと少しのとこまできた。
「おぉ!先輩凄いじゃないですか!!」
「ここで決める…」
そして狙いを定めて…
「はっくしょん!!」
やってしまった、クシャミをしてしまい弾はうさグマのほうではなく光る指輪のほうに…
「あー残念でしたねー先輩」
「あそこでクシャミさえなければ…」
ホントにあーゆーとこで弱いんだよな…と司は後悔した。
「じゃあこの指輪はどうするんですか?」
うさグマの代わりに司は指輪を手に入れた。
「これは穂波にやるよ」
「ホントですか?じゃあ…」
穂波は顔を赤らめながら
「先輩が私に付けてください」
「えっ?」
「だから先輩がその指輪を私に付けてくださいって…」
「自分で付けたらいいんじゃ」
「私は先輩に付けて欲しいんですよ!」
「全く…仕方ないな…付けてやるよ」
といいながら、司は穂波に指輪をつけた。
「うわぁぁ!ありがとうございます」
穂波は子供のように無邪気喜んだ。
「結婚式みたいですね!」
「ち、違う!!」
全くこの小娘は何を言い出すんだ…
祭りも終わりが近づいてきた。
「私ちょっとトイレに行ってきますね!」
「あぁ」
司は、スマホを触りながら穂波を待っていた。
「司?祭り来てたの?」
そこには蘭の姿があった。
「あれ?睦月と来てたんじゃないのか?」
「睦月くんは急用ができたみたいで先に帰っちゃったみたい」
なにをやっているんだ…あいつは…
「今日は誰ときてるの?」
「後輩だけど?」
「後輩ってあの穂波って子?」
「まぁそうだけど」
「それで…その子と付き合ってんの?」
「付き合ってねーよ」
「じゃあなんで一緒に夏祭りにくんの?」
「それは…えーっと…」
「付き合ってんじゃん…」
なぜか少し怒った口調になっていく。
「だからホントに付き合ってないって!そういうのじゃなくて」
「じゃあさ…じゃあ」
すると蘭は涙を浮かべながら言った。
「じゃあ!私と付き合ってよ!」