つかさくんは脇役系
ー物語に2人も主人公は要らない。
俺は主人公になりたいとは思わない、脇役でいい。
波乱万丈な人生より波音立てない普通の人生を歩みたい…
そんなことを考えながらの2時間目の科学、今日も斉藤先生のお寒いおやじギャグがクラスに寒波をもたらした。
すると、隣の席の睦月がこっちに話しかけてきた。
「なぁ、つっかー」
あいにく席は一番後ろなので、先生に会話は聞こえない。
ちなみにつっかーは俺の名前、司のあだ名だ
「ん?どうした?」
「お前って、あのテニス部の蘭ってお前の幼馴染だったよな?」
小川 蘭は俺の幼馴染でいつもツンツンしてる、ツインテール娘。
成績はそこそこ良く、ツンツンしたキャラだが、友達もそこそこいる。
「うん、まぁそうだけど」
「後で乗ってもらいたい相談があるから昼休み屋上来てくれよ」
「分かった」
昼休み、俺は適当に昼食を買って屋上へ向かった。
「で?話ってのは?」
睦月は壁にもたれかかり俺を待っている、睦月に話しかけた。
「おっやっと来たか」
「ちょっと食堂が混んでてな」
そして、睦月が本題を切り出した。
「その2限の時の話の続きだが、俺はお前の幼馴染の蘭のことが、なんだその、好きなんだよ」
少し恥ずかしがりながら睦月は言った。
何となく予想はついていた。
蘭は割となんでもできる上に、ツンデレ属性がある、そのため彼女は一部の男子にはモテる。
「そうか、まぁそんなことだと思ってたよ」
「それで、もしお前が良かったら手伝ってくれないか?」
「あぁいいよ」
今、俺の前には主人公がいる、俺は今からいわいる彼の人生における脇役になれたのだ、断る理由がない。
そして、この後俺はこの2人をくっつけ一つのラブコメを見届けることができる。
よく変わっているといわれるが、俺はこの脇役の立ち位置が好きなんだよ。
「まずは作戦を立てよう」
そう切り出したのは俺からだった。
「あぁ、そうだな」
「じゃあまずはーー」
作戦内容は、今日の放課後俺は文芸部が終わり次第、蘭と帰る約束をしている。
その時に俺は文芸部が長引きそうだといい、1人で帰らせる。
そこで校門で睦月が一緒に帰るように誘う。
「おぉ!完璧だな!」
睦月と蘭は全く関係がない訳ではなく、高校1年の時同じクラスでまぁ話すくらいだ。
「じゃ、じゃあ俺はそこで告白すれば?」
「いや違うまだ早い、これから何度か会ってそろそろかな…ってなった時に告白すればいい、その時は今じゃない」
そうまだだ、はやとちりは命取りだ。
「じゃあ俺はどんなことを話せばいいんだ?」
「なんでもいいと思うぞ。でも絶対にしてはいけない話がある、それは身長の話だ」
彼女の前では禁句だ、それは彼女の中でとてつもないコンプレックスらしく、もし口に出せばマッハでみぞおちにパンチを入れられる。
「わ、分かった肝に銘じておく」
そして放課後になり、俺は文芸部に来ていた。
そしてマフラーを編む。
編み物をしている時が一番気が安らぐ。
だが、もうすぐその安らぎも終わりのようだ。
「センパーイ!」
うちのもう1人の部員、成瀬 穂波だ。
「穂波静かにしてくれ」
「まーた、マフラー編んでんですかー全く…もうすぐ夏ですよー」
そんなことは無視して俺は編み続ける。
「そんなことよりー今日は、先輩に大学いもを作ってきたんですよー食べます?」
「…食べる」
すると穂波はお茶を入れた。
「口に入れてあげましょうかー?」
「大丈夫だ、自分で食べられる」
そして俺は大学いもを一口パクッと食べた。
「うまいな…ちょうど糖分が欲しかったんだ、ありがとう」
「どういたしましてー、どうですか?お嫁に欲しいでしょ?」
「うーん、及第点にはまだ遠いな」
「はーやっぱり先輩の理想は高すぎですよ?そんなんじゃ彼女できませんよー」
「いいんだよ、俺彼女とかいらない」
といつもこんな感じの会話をしている。
そんなことをしていると蘭から早速連絡がきた。
蘭「もうクラブ終わったけどそっちは?」
俺「あーごめん、まだかかりそう」
蘭「えー早くしてよー」
俺「先帰っといてくれ」
蘭「いや、今から文芸部行くわ⊂('ω'⊂ )))Σ≡」
だがこの返事がくるのも想定内。
すかさず、「いや今学校にいなくて、備品買いに行ってるから結構遅くなるから、すまんが先に帰っといてくれ」
すると蘭からは「分かった」とだけ返ってきた。
蘭には悪いことをしたなと罪悪感を受けつつ、睦月にメッセージを送る。
「そっちに蘭が向かった」
すぐに既読がつき「了解」とのことだ。
すると穂波はスマホを覗き込んだ。
「なに企んでるんですかー?」
すぐにスマホを隠す。
「おい、人のスマホを覗くとは趣味が悪いぞ」
「いやー先輩がなにか企んでるそうだったんでー」
「そうだ…この件はお前にも協力してもらおう」
これから先、女子の意見を必要となる時があるかもしれない。
「えっ?」
そして、俺は穂波に全てを話した。
「なるほど、じゃあその睦月とかいう人と先輩の幼馴染をくっつければいいんですね!」
「そうだ」
「任せてください!」
というと穂波は並くらいの大きさの胸を張った。
「じゃ、早速尾行だ」
「わかりました!」
問題はちゃんと誘えているかだ。
後から付けていると、2人の背中が見えてきた。
「よし、どうにか2人で一緒に帰れてるな」
「ですな!」
話の内容が気になるが、身長の話をしない限り大丈夫だろう。
すると蘭が靴擦れを起こし、足を痛みだした。
「ん?なんかあったか?」
「あれは新しい靴を履いて靴擦れを起こしてますね」
すると睦月からメッセージがきた。
睦月「足を痛がってるらしいんだが」
俺「そこはおんぶしてやれよ」
すると睦月は蘭の前に座り、蘭を背負って帰った。
「いいな、俺はこういうのが見たかったんだよ」
「どうにか今日は作戦成功ですね!」
その日の夕暮れは綺麗だった。