犬っころに用などない!
「トイレ! トイレはどこにある!?」
このダンジョンはどうなっているのだ?
落とし穴に毒矢に落ちてくる天井。まるで某映画の遺跡の中のトラップのようなベタベタなトラップで埋め尽くされている。
最初は多少尿意に余裕のあった私もトラップを一つ一つ対処しているうちに限界が近づいてきた。
しかし何故ダンジョンは私が入るたびにトイレまでの距離が長くなっているのだろうか? 今回は余裕をもって入ったからまだ耐えられているものの、ギリギリで入っていたらもう漏らしていたかもしれない・・・。
「・・・ヤバい・・・もう、限界が近い」
どこだ?
マイスウィート・トイレはどこだ!?
そんな時、ダンジョンの通路の奥から何かが迫ってくるのが見えた。
獰猛な四足歩行の獣。
犬に似たその姿。
しかし犬とは決定的に違うのはその頭が三つあるという所だ。
所謂地獄の番犬ケルベロス。
その巨体に見合わぬ素早い動きで私の元へ駆け寄ってくる。その大きなアギトをカパリと開き、ぬらぬらと唾液に濡れた牙をむき出しにする。
しかし・・・・・・。
「犬っころに用はない! トイレを寄こすのだ戯けめが!」
私は駆け寄ってきたケルベロスの鼻っ面を思いっきり蹴飛ばした。
『ギャン!!?』
ケルベロスが予想外な攻撃に悲鳴を上げて仰け反ったその隙を見て脇を通り抜ける。
いちいち相手をしてやる余裕も無いのだから。