1/8
これは、トイレを巡る物語
トイレに行きたい
ただ、それだけなのに・・・
「貴様、ただ者ではないな!? この私の魔法を避けるとは、さぞなのある冒険者とみた」
そんな事はどうでもいいのだ。私は目の前の黒のローブを身につけた不審者の言う事なんて半分も聞いちゃいない
便意が・・・限界だ
「そこを・・・どけ‼」
私の気迫に不審者が一瞬たじろぐ
それで十分だ。
その一瞬だけで、
私には十分だった。
腹の底に力を込める。暴れる尿意を無理やり押さえ込み、その力で地を蹴りつけた。
腕を折り畳み、首を縮め、この身を1つの鉄塊と化す。
「ぐはぁ!」
私のタックルに吹き飛ばされた不審者は、壁に叩きつけられて意識を失ったようだ。
しかしそんな事はどうでもいい。
私は周囲を見渡して、目的のモノを見つけ駆け出した。
「間に合え!」
光輝くドアを開け放ち、その先に駆け込む
◇
私は便器に座りながらため息をついた。
「なんでこんな事になったんだか」
用を足しながら自分の不幸を呪う。
トイレに行きたい、それだけなのに・・・
俺の家のトイレがダンジョンになったんだが、どうしよう。