第8話『ゴリラフレンズ』
動画を撮影してから2時間が経過した。
ゴリラとJKのコラボ動画は順調に再生数を伸ばし、現在は80万回程再生されている。この短時間では異常な再生回数らしい。
まぁ、金髪碧眼の美少女と、黒髪剛毛の美男子だからな。チャームポイントは背中で輝く銀色の毛だ。この再生数も納得だね!
俺が1人で達成感を感じていると、真っ赤なソファーで寝転びながら、ギャル雑誌を読んでいる涼が楽しげに話しかけてきた。
「シュンって血液型なに?」
「O型だけど」
俺が正直に答えると、食い気味に涼がこう言った。
「はい、ダウト!」
「なんでだよ?」
「ゴリラはB型しかいないから!」
舌をペロリと出しながら挑発してくる涼。
可愛いさとウザさの比率〔6対4〕
悔し可愛い状態だ。
「急になんだよ!」
「この雑誌に血液型占いがあったのよ」
「ちなみにO型は?」
「人生が変わるような劇的な幸運に恵まれるでしょうだって」
笑いを必死に堪えながら雑誌を読み上げる涼。
出版社どこだ? 人生が変わるどころか、人の枠組みから飛び出しているんだが? ゴリラなうなんだが?
「ちなみに涼は何型なんだよ?」
「私はA型よ」
「占いの結果は?」
「ひ・み・つ」
可愛さとウザさの比率〔4対6〕
ウザ可愛い状態だ。
どっちにしろ可愛いのかよ! GYARU無敵説。
「なんか、喉乾いてきたな」
当たり前だが、ゴリラだって喉が乾く。
「はい!」
そう言って涼が、見るからに頑丈そうなステンレス製のタンブラーとなんの変哲もないオレンジを手渡してきた。
そうそうこれこれ! 3秒ゴリラクッキング! まずはコップの上でオレンジを持ちます。次に握りつぶします。はい! ゴリラ100%ジュースの出来上がり! 皆さんも家庭にあるオレンジとゴリラで是非お試しください!
俺は搾りたてのオレンジジュース? の入ったタンブラーを慎重に持ち、中の液体を一気に飲み干した。
「どう?」
涼が笑いながら感想を求めてくる。
「うん。素材の味が際立ってる」
むしろ、素材の味しかしない。だが、俺がゴリラだからか、単純なオレンジ汁だけでもかなりの満足感を得ていたのも事実だ。
「へぇ〜」
涼はそう返事をしながら、ミキサーでミックスジュースを作っていた。
Oh〜。ゴリラの手作りジュースは嫌ですか。そうですか。
「さっきから、わざと挑発してるだろ?」
俺がゴリラフェイスで涼を詰問する。さぞ大迫力な顔になっていることだろう。
「わざとじゃないわ」
涼しげな表情の涼。
「いいや、わざとだ!」
問い詰めるゴリラ。
「いいえ、ワザと駆け引きよ!」
得意げな顔で言葉遊びを始める涼。
「人間界ではそれをわざとと呼ぶんだよ」
更に問い詰めるゴリラ。
「あなたゴリラじゃない?」
Oh,my god! ゴリラ口喧嘩不利説。ゴリラである事そのものがウィークポイント過ぎる……。
「揚げ足をとるな」
いや、そもそも、あげてすらいない。
「そんな大きな足してるからよ」
そう言って涼は俺のぶっとい足を指差して笑った。
その笑顔はずるい。ゴリラの俺ですら、一切太刀打ちが出来ないのだから。GYARUはGORIRAよりも強し。