第7話『ゴリラ心と秋の空』
「なんか、色々と長くなったけど、いい加減撮影はじめるからね?」
三脚にカメラを固定しながら、涼が軽い調子で言った。
「おい、そんな格好でいいのか?」
薄手の半袖+シャワーの水=桃源郷
つまり、JKの服が透けているのだ。
つまり、JKの服が透けているのだ。
「え? あぁ、一応着替えた方がいいかな?」
「半袖短パンはラフ過ぎるだろ」
再生回数はうなぎ登りだろうが……。
「そっか、じゃあ着替えてくるね」
涼はそう言って、隣の和室とおぼしき部屋へと向かった。室内の一角に和室を設けているのか。俺の部屋とは少し違うな。
和室ゆえに、扉が襖なのだ。煩悩を刺激する衣擦れの音がゴリラの鼓膜を揺らす。
あぁ、このままでは野獣になってしまう! あ、もうすでに野獣でした〜。軽快なGORIRAジョークを決める。
「待たせたわね!」
和室の襖を開き、軽くジャンプしながら出てくる涼。スカートの裾とゴリラのロマンが広がる。
「なんで、さっきと違う制服なんだ?」
公園で出会った時の制服とは別の制服を着用している涼。
「高校の制服着てたら身元がすぐバレるじゃない。それに学校にも迷惑かかるでしょ」
「なんかコスプレ感すげーな」
普通の制服よりもカラフルな上に異様にスカートの丈も短く、肌色面積がウホホッ。
「全裸よりマシよ!」
俺を指差しながら得意げに言う涼。
俺は今、JKに全裸を披露しているわけか……。
「えっと、いくら払えばいい?」
「は?」
まるで、変態ゴリラ野郎を見るような目付きで俺を睥睨する涼。
「歯」
先ほどと同じ流れで歯茎を見せつける俺。
「ぷふぅ」
どうやらこれがお気にのようだ。
「もう、はじめるわよ」
笑いながら、カメラのボタンを押し、撮影をはじめる涼。
「今日はなんと、スペシャルゲストを呼んでおります」
軽快なトークで俺の紹介をはじめる涼。
「ウホホッ!」
元気な鳴き声で自己紹介をする俺。
人間の言葉を禁じられているのだ……。
「はい、天才ゴリラのジェームス君です」
涼が翻訳するスタイルで進めるようだ。
「ウホホ、ウッホー!」
現在の俺は、キャラクター性をつける為に首に赤いネクタイを巻いている。リアルド○キーコング状態。
状況を整理すると、全裸にネクタイ姿でJKと動画撮影を行っている。ド○キーも裸足で逃げ出すアドベンチャーだ! ド○キーもともと裸足だけどね!
涼がおもむろにバナナを取り出し、その柔らかな皮をゆっくりと剥きはじめた。
JKがバナナの皮を剥いている。うん、淫靡な文字列だ。いや、主語にJKがつくと、全ての言葉は淫靡になるのだ。『JKと保健室』『JKと海水浴』『JKのスクワット』ほらな?
「はい、口空けて、あーん」
涼の手から、剥きたてホヤホヤのバナナが差し出された。
「ウホッ」
俺はそう言って、バナナを頬張る。
ウホ! UMAい! 美味い! なんだこの衝撃の美味さは? 俺がゴリラだからか? それともこのバナナにはJKの魔法がかかっているのか? いや、野暮な詮索はやめだ。ただここに一本のバナナがある。その事実だけが重要だ。
なんだかこのまま俺だけがバナナを独占するのも申し訳ないな。俺はそう思い、机の上にあるバナナへと手を伸ばす。そしてバナナの皮を剥いてみた。
な、なんだと! 今朝から何をやってもデストロイ状態だったゴリラPowerが、なぜだか、バナナを剥く際だけはコントロール出来た。これがゴリラに刻まれしDNAの力なのか!?
そして、そのバナナをそのまま涼の口元へと運ぶ。
JKがゴリラのバナナを咥えている。
何というPowerword! 淫靡な上にPowerword! ゴリラとJKが織り成す最強のシナジー効果だった。
「う、うん、ありがとう」
涼は顔を赤らめながら、もぐもぐとバナナを食し、カメラの電源を切った。
「あれ? もう撮影やめるのか?」
まだ、10分も経っていない。
「いいのよ。あたしの動画は1本あたり5分程度だから。それに手のこんだ編集もしないから、これで充分なの」
ありのままで勝負するスタイルのようだ。
確かに視聴者が見たい姿は、ありのままのJKなのかも知れない。生のJKか。うん。そう考えるとJAPANはとってもデンジャラスだね!
俺が日本のカルチャーに対して警鐘を鳴らしていると、涼は再び和室へと戻り、着替えはじめた。俺はそっと襖に耳を添える。襖最高! JAPANに生まれて良かったー!!
やっぱり日本が一番だよね!
JAPANに対して見事な手のひら返しを見せつける俺。
ゴリラ心と秋の空。