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GORIRA*年収3億の俺が起きたらゴリラになってた件  作者: 新月 望


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第27話『ゴリラとスタバ』

「ねぇ、キャラメルフラペチーノ飲みたくない?」


 真っ赤なソファの上でIQ2位のファッション雑誌を眺めながら、気軽な調子で涼がこちらに話しかけてくる。


 いくら自分の部屋だからと言って、くつろぎ過ぎじゃないですか? ショーパンで足組み替えるのとか、やめてもらっていいですか? 一々視線が誘導されて困るんですけど!! (眼福)


「いや、キャラメルフラペチーノをピンポイントで飲みたくなるタイミングって被らなくね? ましてや俺ら、ゴリラとJKだぜ?」


「あら? 期間限定でバナナ味のフラペチーノも出てるみたいよ」


「行こう!」


 バナナの魅力には抗えないのがゴリラです。はい。



 そんな会話を経て、俺たちは現在、スターバッコシに来ていた。言わずと知れたオシャレカフェ、通称スタバである。


 日曜日と言うこともあり、店内は自己肯定感の強そうな若者たちで溢れかえっている。


「時間大丈夫かな? 昼過ぎには妹がお土産取りに部屋にくる感じなんだけど」


 この前、夢の国で買ったお菓子の数々を可愛い妹に献上する予定だ。


「大丈夫よ、並んではいるけれど、そんなに時間はかからないわよ。アトラクションじゃないんだから」


 そんな会話を交わしながら、待つこと数分、俺を待ち受けていたのは、無慈悲とも言える宣告だった。


「申し訳ございません、バナナフラペチーノの方は売り切れてしまいました」


 そう言って、申し訳なさそうに頭を下げる女性店員。ゴリラにも丁寧な接客とか、店員の鑑だな。ちなみに他の店員やお客は、なるべくこちらを見ないようにしている……。


「あら、残念ね。代わりの注文は考えてあるの?」


 先に注文を済ませた涼が首を傾げて問いかけてくる。


 うーん、お店も混雑していることだし、ここは一つ、エリートらしく、スマートでエクセレントな注文を披露するとしよう。


「じゃあ、代わりに、ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースチョコチップエクストラコーヒービターキャラメルフラペチーノのGrandeで」


「はい、かしこまりました。キャラメルフラペチーノのTallがお一つと、ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースチョコチップエクストラコーヒービターキャラメルフラペチーノのGrandeがお一つですね。お会計が1620円でございます」


 此奴、出来る!!

 ゴリラに対して一切の動揺を見せずにこれだけの長文を淀みなく復唱し、その上での完璧なスマイルだと……。ゴリラ並みの精神力をしてやがる。


 くそ、可愛い店員さんが注文を噛んじゃうあの姿が見たかったと言うのに、この店員隙がない。


「す、凄まじい接客力ね……」


 隣にいる涼ですら、ツッコミを忘れ、その高い接客力に驚嘆していた。


 流石に店内にゴリラが居座るのは迷惑行為に含まれそうなので、涼が商品を受け取り、家に戻ることにした。


 * * *


 午後からは妹も来る予定なので、涼の部屋ではなく、俺の部屋でくつろぐことになった。


「それにしても、さっきの店員さんは凄かったわね……」


 涼が俺の口もとにストローを近づけながら言った。


 え? そりゃそうでしょ? いくらスタバの容器がちょっと良いやつだとは言え、ゴリラの握力で握りしめれば、せっかくのベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースチョコチップエクストラコーヒービターキャラメルフラペチーノが台無しだ。


 ゴリラパワーの制御が上手くなってきたとは言え、わざわざ危ない橋を渡ることはないだろう。逆に問おう。JKに飲み物を飲ませて貰える機会があるのならば、掴むべきではないか? そこにはもう、人間とゴリラの差異などない!!


「あぁ、実にエリートな接客だったな」


 俺はJKが運ぶ、尊い甘味を味わいながらゆっくりと応えた。もはや、これだけトッピングすると、飲むと言う行為よりも、食べると言った方がしっくりと来るかも知れない。


「腑に落ちないことが一つだけあるわ」


「え?」


 なんだろう。何一つ問題がなかったと思うが。


「キャラメルフラペチーノの気分じゃないって言ってなかった? どれだけ長文を並べようとも、あたしは騙されないわよ?」


 怒ったフリをしながら、少し楽しそうに問い詰めてくる涼。


「これだけのトッピングに惑わされず、このドリンクの正体に気づくとはな……」


 なんだかんだ言って俺も、キャラメルフラペチーノを頼んでいるのだ。


「まぁ、もはや別物だけれどね」


 自分のシンプルなフラペチーノと、俺の全乗せフラペチーノを見比べる涼。


「食べてみる?」


「うん、じゃあちょっとだけ貰うね」


 そう言って涼は、俺のフラペチーノに手を添える。


 それにしても、俺のフラペチーノって、なんだか、なんだかだね?


「うーん、あたしは普通の方が好きかな。あ、ほっぺにクリーム付いてるわよ」


 涼はそう言って、俺の頬に付いていた生クリームをその細長い人差し指で拭う……。


 ま、まさかこれは、ほっぺについたクリームを拭った流れでそのまま指を舐める伝説のイベントか!?


「ちょっと、手、洗ってくるわ〜」


 ですよね〜〜。

 キャラメルフラペチーノの甘味とは対照的な実に世知辛い世の中だぜ!!

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