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GORIRA*年収3億の俺が起きたらゴリラになってた件  作者: 新月 望


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第23話『ゴリラと新たな扉』

 あれ? 今日はダブルデートをするのではなかったのか?


 集合場所に待っていたのは、それぞれタイプの違う美少女が2人。


「はじめまして、涼のクラスメイトの満里奈っていいます!」


 赤みがかった長めの茶髪を揺らしながら、勢いよく挨拶する少女。見た目はバリバリのギャルだが、思いの外、丁寧な挨拶をするな〜。感心、感心。


「えっと、僕は、水沢葵です」


 その可憐な名前同様に、色白の小さな顔に埋め込まれた、大きな瞳は、可愛いは正義を体現したかのような容姿だ。艶やかな黒髪がショートカットに切り揃えられている。


「神崎瞬です。涼のペットをして暮らしています」


 俺は迅速かつ的確な自己紹介を済ませた。


「どんな自己紹介よ!」


「ぐふぇ!」


 的確なみぞおちでゴリラの急所を突く涼。

 へ〜、ゴリラのみぞってここなんだな〜。


「てゆーか、2人とも、驚かないわけ?」


 満里奈さんと葵ちゃんに、勢いよく問いかける涼。


 え? なんで、さんとちゃんにわけたのかって? そりゃ、なんとなくよ。


「え、何が?」


 涼の問いかけに、同時に首を傾げる2人。


「いやいや、ゴリラよ? 生ゴリラよ?」


 涼がアグレッシブに問い直す。


 どーでもいいけど、生ってつくと大体価値が上がる気がする。生ビール。生キャラメル。生配信。生JK。生ゴリラ。他にもいっぱいあるよね!?


「彼氏が恥ずかしがり屋だから、被り物してくるけど、驚かないでねって言ってたのは涼じゃん」


 淡々と語る満里奈さん。

 この子の被り物の定義広いな〜。


「順応性イカれてるわよ?」


 涼が驚き混じりの声音でツッコム。


 ゴリラと一つ屋根の下で熟睡したJKの方がイカれていると思うが……。


「僕はたくましくて、格好良いと思うな」


 俺のゴリラフェイスを見つめながら、そう呟く葵ちゃん。やっべ、もっとたくましくなっちまうぜ?


「まぁ、あなた達がいいならいいけどね」


「じゃあ、まずはファストパスを取りに行きましょう!」


 勢いよく、走り出す満里奈さん。

 あぁ、短いスカートがあっちへヒラヒラ、こっちへヒラヒラ。夢の国最高!


 ブーさんのラリーアットという人気アトラクションのファストパスをゲットした俺達は現在、涼の熱烈な希望により、ジャングルボートというアトラクションに乗っていた。


「さぁ、あちらに見えるのが、アフリカ象です!」


 ガイドのお兄さんが明るい声音で元気いっぱいに話している。


「みんな! 気をつけて! 銃を持ったゴリラが暴れているよ」


 人間から奪った銃をゴリラが乱射している。


「あら、いつの間にか船内にもいるわね」


 俺を指差し、小さな声で涼が呟く。


「おいおい、俺の方がディテールが細かいだろ?」

 

「確かにそうね。それに、シュンはマウンテンゴリラだけれど、あの子達はニシローランドゴリラだからね。ちなみに、マウンテンゴリラの学名はゴリラ・ゴリラ。ニシローランドゴリラの学名は、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラよ」


 何回ゴリラっていう気なの? ゴリラ愛が溢れ過ぎだ。


「どんだけゴリラLOVEなのよ」


 満里奈さんが柔らかい笑顔でツッコム。


 柔らかそうなのは笑顔だけではない!

 具体的な明記は避けるがね!

 夢の国最高!!


「べ、別にゴリラの学名くらいは一般教養の範囲よ!」


 こいつの教科書だけ、違うの配布されてない?


「確かに、ゴリラっていいよね。ねぇ、ちょっと触ってみてもいい?」


 葵ちゃんが、妙に潤んだ瞳でこちらに問いかけてくる。


「ご自由にどうぞ!!」


 今ならゴリラ触り放題です!!


「じゃあ、失礼します」


 そう言って、俺の太くたくましい二の腕を優しく撫でる葵ちゃん。

 あぁ、俺はこの為にゴリラになったのか。


「あぁ、ゴリラでよかった……」


 思わず、笑みもこぼれだす。


「きっも!」


 涼がバッサリと切り捨てる。


「なに? 妬いてんの〜?」


 満里奈さんが、すかさず涼を茶化す。


「違うわよ! こいつがだらしない顔してたから!」


 顔を真っ赤にして、弁明する涼。


 そうこうしている内に、アトラクションが終わり、俺達はボートをおりた。


「ごめん、ちょっと、おトイレいいかな?」


 ほんの少し、恥ずかしそうな表情で葵ちゃんが口を開いた。


「そうね、じゃあ、一旦トイレ休憩にしましょう」


 涼の言葉をきっかけに、便所へと向かう俺達。


「ふぅ〜、スッキリしたって、えぇー! ちょっと、なんで葵ちゃんが隣にいるの!?」


 ゴリラが小便器でようをたしていることよりも、はるかに不思議な光景が隣には広がっていた。


 俺の隣の小便器で、美少女がようをたしているのだ!


「え? 何が?」


 きょとんとした顔もかわえぇな〜。


「いやいや、ここ男子便所!」


 ここはMen'sの聖域だぞ?


「うん、知ってるよ」


 やっぱ、きょとんとした顔きゃわわだな〜。


「え、だって、おんな、おとこ便所、立ち入ることかなわず」


 このわけのわからぬ状況に言語処理能力がおいてきぼりをくらっている。


「え? 僕、男だよ?」


 そう言って、エンジョイスティックを収納する葵ちゃん。いや、葵くん?


「う、嘘だろ?」


 だって、こんな美少女にエンジョイスティックがついてるなんて間違っている!


「だって、僕は満里奈の彼氏だよ? ダブルデートでしょ?」


 くそ、そう言うことか……。危うく新しい扉を開け放つ所だった。


「俺は、男でもいい!」


 あれ? すでに全開でした! 風通し抜群だぜ!!


「え、何が?」


 やっぱ、きょとんとした顔も以下略。


「いや、何でもない、気にしないでくれ。ほんのゴリラジョークさ」


「う、うん」


 あれ? 困り顔はもっと、きゃわわなんですけど!! むしろ俺が困っちゃう!!


 夢の国最高! Fuu〜!!

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