第21話『ゴリラの恩返し』
土日が終わり、世間も通常運転へと戻る月曜日。涼は今日学校へ行くそうだ。そろそろ出席日数の関係で危ないらしい。
ということで、今日は一日、お留守番ゴリラだ。俺は早速、昨日習得したタッチペンによるタブレットの操作を行う。
ほほぅ、占いアプリか。涼が好きそうだし、インストールしてみるか。
ふむふむ、色々な種類の占いがあるな。まずは動物占いでもするか。
俺はスマートな手つきでタッチペンを走らせる。
なるほど、生年月日を入力すると性格を動物に例えてくれるわけか。
【あなたは人間味溢れるゴリラタイプ♪ エネルギーに満ち溢れているライオンタイプと相性が良いです。逆にのんびりタイプのカメとは少し相性が悪いかも】
いやいやいや、俺はゴリラ味溢れる人間タイプだから!
しかし、この占い、アプリとは言え、侮れない精度だ。
次は前世占いでもやるか。
【問1】この中から好きな果物を選べ。
ブドウ、バナナ、リンゴ。
【問2】自分が大事に思っていることを順に並べよ。
友情、仕事、お金。
この様な質問が10個近くあり、その全てに答えるとようやく結果が出た。
【あなたの前世はゴリラの群れのボスです。リーダーシップが高く、力強く生きる様は今のあなたにも強く影響を及ぼしているでしょう】
なるほど、流石は俺。前世においてもエリートだったわけか。
性格、ゴリラ。
前世、ゴリラ。
現世、ゴリラ。
俺のゴリラ適正高すぎん?
まぁ、占うまでもなくゴリラなんだけどさ。
* * *
燃えるような真っ赤な夕陽が部屋中に差し込んでいる。アプリで遊んでいたら、いつの間にか夕方になっていた。
ピンポーン! という軽快なインターホンの音がJK様の帰還を知らせる。
預けたカードキーを使い、部屋に入ってくる涼。インターホンを鳴らしたのは俺への気づかいだろうか?
「ねぇ、シュン、デートしてくれない?」
開口一番にデートのお誘いとはあまりにも脈略がない。
「いいよ」
「返事はや! 理由を聞きなさいよ!」
先手必勝とばかりに仕掛けてきた当の本人が返事のはやさに動揺している。見たか、これがエリートレスポンス!
「いや、だって、どうせ買い物とかでしょ?」
「違うのよ、ちょっとくだらない見栄を張って……」
珍しく歯切れの悪い涼。
「学校で何かあったの?」
涼の少し暗い様子が珍しく、少し不安になる俺。
「友達と話を合わせるために嘘をついてしまったの……」
うつむきながら語る涼。
「あれ? 涼に友達いたんだ?」
俺はいつものノリで冗談めかしてそう言った。
「うん。高校には2人だけいるの」
あれ? いつもなら、ツッコミと言う名の軽めの暴力があるシーンなのだが。やはり様子がおかしいな。
「えっと、それで、どんな嘘を言っちゃったの?」
俺はなるべく優しい声音を意識して話した。
「昼休みに3人で話していたら、2人が自分の彼氏の話を始めて、私にも話が飛んできて、つい、いもしない彼氏の話を……」
なるほど、涼はこう言うことに振り回されないタイプだと思ったが、数少ない友達と話を合わせたい気持ちが働いたのだとしたら、致し方ない気もする。
「それで、なんでデートに?」
「そ、それが、片方の友達がダブルデートしたいって言ってきて……」
「それで俺が彼氏のフリを演じると」
人選ミス過ぎない? いや、人から選んでないから人選ミスどころの騒ぎじゃない。
俺ゴリラですよ?
「うん、日曜日にランドでダブルデート頼める?」
こんなにしおらしい涼は初めてみた。
「俺はいいけど、世間が許さなくね?」
ランドって、あの夢の国だよね?
「どう言う意味?」
「いやいや、あの世界観にリアルゴリラはマズイでしょ!」
俺の全身のディティールハンパないぜ?
「ターザンの仲間もゴリラだから大丈夫よ」
少し元気を取り戻したのか、よくわからない理論を展開させる涼。
「いや、そもそも、彼氏がゴリラって状況を飲み込ませるのは無理があるだろ」
ゴリラをすんなり飲み込めるやつなんて、ゴリラ通のJKか馬鹿な妹くらいだ。
「そこは夢の国だし、着ぐるみ着てきたはしゃいだ奴だと思えばね?」
必死に説得してくる涼。
全身ゴリラではしゃいでいる奴見たことある?
「どうなっても責任はとれないぞ?」
ゴリラに責任能力は皆無だ。
「ありがとう! 友達にはシャイな人だからって伝えたから、着ぐるみで自分を隠してても自然よ」
いや、不自然だろ! 違和感しかないわ!
そもそもシャイな人がわざわざゴリラの着ぐるみを選ぶわけねーが、仕方がない。
涼にはここ数日で数え切れない程の恩がある。ここで返さなきゃゴリラが廃るってもんさ! あれ? 廃ってよくね?
まぁ、何はともあれ、ゴリラの恩返しを始めるとしよう。




