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GORIRA*年収3億の俺が起きたらゴリラになってた件  作者: 新月 望


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第20話『ゴリラとスワイプ』

 見慣れた天井が視界いっぱいに広がっている。スマホも壊し、最強イビキ機能付きのJKとも別の部屋で眠りについた俺は熟睡を満喫出来た。


 昨日はJKお手製のオムライスを食べ終わった後、食器の片付け(ゴリラが食器を割りJKが片付ける)を二人で仲良く行い、涼は下の階へと戻ったのだ。

 ちなみに俺の部屋のカードキーは(ゴリラ)が持っていても仕方がないので、涼が持っている。


 ピーンポーン!

 部屋のインターホンが軽快に鳴る。


「はーい、今いきまーす」


 ゆっくりと玄関へと向かう俺。

 扉をあけるとそこには、パンパンに膨れ上がったレジ袋を右手に持ち、左手には大きなタブレット端末を持つ涼の姿があった。両手が塞がっており、カードキーを出す余裕はなさそうだ。


「よし! 練習するわよ!」


 そう言って涼は勢いよくゴリラの住居に足を踏み入れる。

 そのまま居間に入って、パンパンの袋を床に置く涼。


「何それ?」


 袋の膨らみ方から察するに小さな物が沢山入っているようだが。


「タッチペンよ」


「タッチペン?」


 こんなにも大量のタッチペンが必要な場面に心辺りがない。

 なので俺は小動物ばりの愛らしさでキョトン顔を披露することにした。


「ゴリラがキョトンとすんなし!」


 涼が口を大きくあけて笑いながらそう言った。

 いやいや、ゴリラにだってキョトンとする瞬間あるよね?


「こんなに大量のタッチペンどうすんの?」


 俺は当然の疑問を口にする。


「そりゃ、タッチするために使うのよ」


 え!? いいんですか! JKにタッチペンでアレヤコレヤですよね? ね!!


「えっと、何をタッチするの?」


 エッチスケッチワンタッチですか?


「タブレット端末よ。これさえ出来ればネットも使えるし大概の事はなんとかなるんじゃない?」


 大きな瞳をパチクリさせながら、俺に提案する涼。


「いや、力加減がさぁ……」


 通気性抜群になった冷蔵庫がゴリラパワーの凄まじさを物語っている。


「だから、練習するのよ!」


 そう言って袋の中のタッチペンを机の上に大量に出す涼。そのままプラスチックのパッケージを片っ端からはがしている。


「よし、やるか!」


 気合いもパワーも充分だ!

 俺は勢いよくタッチペンを折り曲げる。

 だよね……。まぁ、まだ1本目だし? 勝負はこれからこれから!


「……」


 あれ〜? 中々上手くいかない。

 ペンを折り続けること数十分、確かにコツは掴みかけているのだが……。


「はい、今ので60本目よ。おめでとうバレンティンの記録と並んだわね」


 冗談混じりに皮肉を投げかけてくる涼。いや、バレンティンなら投げかけるというよりも、打ちまくるというべきか?

 このJK野球も好きなのかしら?


「この折ったペンの本数が本塁打なら、一躍スター選手なんだけどな」


 俺は小さな声で呟く。


「あら、今の貴方ってどことなくバレンティンに」


「それ以上言うな!」


 このJKとんでもない暴言を吐こうとしたぞ?

 バレンティンのどこがゴリラなんだよ!!


「ねぇ、ゴリンティンの記録はどこまで伸びる予定なの?」


 ゴリンティン? 俺のことか?


「えっと、タッチペンは全部で何本買ってきたの?」


 質問に質問で返すのがゴリンティンスタイル。


「100本よ!」


 奥ゆかしくもなだらかな胸を精一杯張りながら自信満々に涼は言った。


「なら100本以内には抑えるよ」


 俺はそう言って、黙々と練習に戻る。


 * * *


 くそ、タッチペンの残りは後5本だ。だが、あと一息の所までは来ている。タッチペンを使った単純なタップに関してはクリアしているのだ。あとはスワイプやフリック入力などの横の動きの際にペンを折らなければいける!!


 慎重にタッチペンを掴む。ゴリラにとってはいささか薄過ぎるとも思えるタブレット端末に、涼からあらかじめ聞いてあるパスワードを慎重に入力する。よし成功だ。ここまでは順調なのだ。ここからが本題だ。ネット検索の画面に行くためには1度スワイプする必要があるのだ。


「くそ!」


 また、スワイプに失敗した。折れたペン先が虚しく床を転がる。

 その後の3回も同じところでペンが折れた。


 残り1本。これがラストだ……。

 俺は静かに息を整え、深く呼吸をする。

 今日、何度目かわからない程に入力したパスワードを再びタップする。

 緊張の一瞬。イメージは出来ている。後はその感覚をなぞるだけだ。


 ゴリラの操るタッチペンが今日はじめて滑らかに横移動を達成した。


「で、できた……」


 人間、本当に驚いた時は言葉が出ないようだ。いや、俺ゴリラだけど。


「や、やったわね!」


 まるで、自分のことのようにゴリラの成功を喜ぶJK。心なしか、両の瞳が潤んでいる。


 俺はその勢いのまま、ある検索ワードを入力する。

 検索ヒットしたのは世界で人気の動画サイト。そして更に検索をかける。


 俺はある動画をタップして再生する。

 それは、金髪のJKがゴリラとたわむれているだけの動画だ。


 大都会のマンションの最上階にあるとても広々とした部屋で、1人のJKと1匹のゴリラは肩を寄せ合いながら自分達の動画を見るのであった。

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