表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

第1話『あれ? もしかして? ゴリラ?』

 ここは死後の世界だろうか? 色とりどりな黒が限りなく広がっている。様々な黒がご機嫌な様子で語り合っている光景は、一見すると天国のようにも思える。そうかと思えば、次の瞬間には、汚れきった白が塗りたくられた、見るも無惨な地獄と化す。


 色彩豊かな黒の世界で死に、虚飾にまみれた白の世界で生まれ変わる。この世界には救いようのない命の流れを感じる。循環などでは決してない。流れなのだ。ただひたすらに、下へ下へと流れ落ちる感覚。そうして、俺を俺として保っていた何かが、ひとしきり流れ落ちた瞬間、俺は死に、ゴリラが生まれたのである。



 ガタン! っという酷く暴力的な音で、俺は目覚めた。なんだか長い夢を見ていた気がする。心なしか体が重い。風邪でも引いたのだろうか? いや、エリートな俺は体調管理にも一切の抜かりはない。バランスの取れた食事にサプリメントの併用、規則正しい生活リズムと健康的な有酸素運動。完璧な俺は、完璧な生活を過ごしていた。


 何故だかいつもよりも重い腰を上げ、ゆっくりとした動作で立ち上がる。都内の一等地に立つ高層マンションの最上階をワンフロア使った、広々とした部屋が視界いっぱいに広がる。

 あれ? なんかいつもと視点が違うような?

 まぁ、寝ぼけているのだろう。水でも飲んで、目を覚ますか。


 俺は綺麗に磨き抜かれたフローリングの床を歩き、冷蔵庫の前に立ち、その扉を開けた。いや、正確には引きちぎったというべきだろう。

 何故だかわからんが、軽く扉を開いたつもりが、勢いあまって引きちぎってしまった。これも日頃ジムで鍛えている成果だろう。


 エリートな俺はそんな瑣末なことなど気にはしない。風通しの良くなった冷蔵庫から、フランスから取り寄せているミネラルウォーターを取り出す。そして握りつぶす。


「あ……」


 フランス産のミネラルウォーターが床を濡らす音が静かに部屋に沁み渡る。あぁ、これはこれで良いのかも知れない。

 部屋の隅、床に滴る、水の音。エリート川柳の完成だ。


 こうして、日本の侘び寂びを感じているのもいいが、なんだか今日は、体が少々臭っている。いったんシャワーでも浴びるとしよう。


 バゴン! おっと、ジムで鍛えた、たくましい両腕がバスルームの入り口に突っかかってしまった。俺は慎重に腕を片方ずつ室内にいれてから入ることにした。流石はエリート。緊急対応もお手の物だ。

 そして流れるようにシャワーのヘッドをへし折る俺。


「Oh〜……」


 思わずグローバルなリアクションを取ってしまうエリートな俺。鍛え過ぎも問題かも知れないな。


 気をとりなおして鏡を覗くと、そこにはゴリラがいた。うん、この顔つきからして、マウンテンゴリラだろう。なぜ、中央アフリカのヴィルンガ山地にわずか650頭程しかいないマウンテンゴリラが我が家のバスルームにいるのだろうか。背中の銀色の毛から察するに、この個体はシルバーバックと呼ばれるマウンテンゴリラの群れの中のボスだろう。エリートゴリラというわけだ。


 あれ? 俺の動きに合わせて動くぞこいつ。いくらエリートゴリラとはいえ、これはおかしいな。さては、このゴリラ、着ぐるみか? そもそも鏡の中に俺が映らないのはなぜだ?


 ん? あれ? これは、ひょっとすると? まさかのまさかで……。


 俺、GORIRAじゃね?


もし続きが気になってくれた方は、ぜひブックマークを。評価は☆のマークのボタンで出来ます。1から5までの評価となっているので忌憚なきご意見を下さい。


『世界で唯一のフィロソファー』という完結作もあるので、興味のある方はこちらもぜひ。


貴重なお時間をこの作品に割いて頂き、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ