美しい人類
樹木は賢人である
おそらく彼らは最も礼儀正しく、しとやかで美しい人類である
豊かな緑の葉を風に揺らす彼らを見ていると思う――
もしも全ての人類が樹木であったなら
一瞬にして大地を
燃やし尽くし
溶かし尽くし
あらゆる生命の二重螺旋を破壊する力を
暗闇に光を放つ石から取り出すこともなく
その力を使って
地上に地獄をつくりだすことも
脅すことも
怯えることも
なかったのかもしれない
いや、決してなかったのだ ――と
けれども
そのように思うことは
我々人間の存在を否定する、許されざる裏切りなのか
八月が、終わる。
無力な私の手は、虚空を掻く
風が、吹いている