おやすみなさい
「今日は寒いね〜。お布団あっためなきゃ」
私はごそごそとエアコンのリモコンを探り、布団に潜りこむ。
「もうちょいそっちな。ほら」
今月の大阪旅行は俊ちゃんの部屋にお泊まり。和希くんは珍しく友達のところに出かけて不在。
でも俊ちゃんは今月新商品のレポートと後輩指導が重なっているからもの凄く多忙。それでも、こうしていつも私が来る時はしっかり一緒にいる時間を使ってくれる。
──まだ寝ないくせに、俊ちゃんは優しいから私がベッドに入ると必ずくる。
少し身体を動かして壁際に移動すると、彼は私の胸の間にぽすんと顔を埋めてきた。
「ちょ、ちょっとくすぐったい」
「柔らかいなぁ〜。幸せや」
「もう……喋ると、くすぐったいって」
俊ちゃんの顔を引き剥がし、唇にちゅっと触れるだけのキスをする。
こちらを真っ直ぐ見つめる優しい瞳。少し過労でやつれ気味の頰を撫でる。
「ねぇ、俊ちゃん忙しいでしょ? 寝たら?」
「ん〜ふかふか」
「おっぱいの上で寝ないのっ! ……もうっ」
不貞腐れると、彼はようやく「悪戯は終わり」と左腕を差し出す。──私だけの特等席。いつものようにちょこんと頭を乗せる。
「わっ」
空いた右腕を私の肩にかけて俊ちゃんがぎゅっと身体を寄せてくる。……寒いから、こうして密着してると幸せなんだけど、ちょっとだけ苦しい。
俊ちゃんの背中に腕を回して瞳を閉じる。彼が子供をあやすように背中をトントンするから、何となく恥ずかしい。
慌てて壁側を向くと、首元にふぅっと息をかけられる。
「んもぅっ!」
振り向いた私は彼の右腕を掴み、悪さが出来ないように手を繋いだまま、彼の唇に再びキスをする。
「ねぇ、俊ちゃん……」
しばらく手を繋いだまま、色々な話をする。身の内話や最近の出来事。そして俊ちゃんの意外な嫉妬の話。
布団が暖かくなると睡魔が襲ってくる。昔から、肌の再生時間の為に日付が変わる頃には落ちてる私。
「……おやすみ、晶」
夢の中にいる私に、俊ちゃんはそっと口づけて布団から出ていく。
再びパソコンの画面と向き合い、仕事に戻る彼の背中を夢の中で追いながら私は心の中で呟く。
おやすみ、俊ちゃん。──大好きだよ。
理想のおやすみシチュエーションでした。




