ヴェスタとの出会い (2)
悪魔の召喚を実行するには直径10mもの魔法陣を書く必要があるし,周囲に飛び火してもいけないので大きな公園を探すことから始めた.
家から4kmほどのところに要件を満たす公園が見つかった.
公園に下見にゆくと50m×50mくらいの大きめな公園で,端に滑り台などの遊具が幾つかあるだけで,ほかには何も無い公園だった.
地面は土で周りに燃え移りそうなものはない.公園の周りに隣接して民家があるようなことはない絶好の場所だった.
下見をした次の日,悪魔の召喚を決行することにした.
ホームセンターで工具一式を購入し,家の車からガソリンを抜き鉄のバケツに入れ,夜になるのを待つことにした.
夜,家族に見つからない様に静かに家を抜き出し,隠しておいたガソリン入りのバケツを持って公園へ向かった.
雪は降ってはいなかったがとても寒かった.もしかしたら氷点下なのかもしれない.吐く息が白い.手がかじかむ.
(寒・・・)
公園につくと,ガソリンを地面に塗り始めた.
スマートフォンで時間を確認する. あと約5分で24時だ.人がいないことは確認した.
(なんで私はこんな馬鹿みたいなことをしているんだろう)
自分の愚かさに自嘲する.しかし,ここまで来てやめることはない.
目の前には直径10mにも及ぶガソリンで書かれた魔法陣がある.
時間を見ると,あと30秒で24時になるところだった.
ライターを付け,魔法陣に着火する準備をする.
(5,4,3,2,1,いま!)
着火した!炎が走り,一瞬で魔法陣を形作る.
すると,魔法陣からオレンジでも青でもなく,緑色の光があたりを照らした.
(えっ!なに!?Cu?)
しかし,炎が緑色なのではなく,地面から緑色の光が放射されているのだ.光がピークに達した瞬間,爆発したかのような爆風があたり吹き荒れた.あまりの風に私は目を瞑ってしまった.
数秒ほどして,暴風がやんだ.前に,いるはずもないが,誰かがいる気配があった.恐る恐る目を開けた.
前にいるのは,黒い翼を生やした黒服の男,髪は紺色でオールバック,180cmぐらい西洋人のような顔でパーツは整っている.
歳は私よりも少し上で19歳ぐらいだろうか.
その目は深い緑色に呈色しており,私を見下ろしていた.
「・・・」
カラコンを付けて悪魔のコスプレをした痛い男が立っていた.
これが,彼ヴェスタとの初めての出会いであった.