10進数 (1)
「なぜ人間達は10進数を使っているんだろう?」
ヴェスタが突然そんなことを言い出した.
私は,少しうんざりしながらも一応聞き返した.
「いきなりどうしたの?」
「この前,暇だったから人間界の空を散歩していたんだけど,あるところにとても綺麗な腕時計を見つけてね」
「うん」
「それはある小学校のグラウンドに落ちてたんだ.それで気になって地上に降りてよく観察してみたんだ.」
「えっ,地上に降りたの!?」
見つかったら大変なことなのでは無いだろうか.厄介なことになりそうだ.
「うんっ?」
「人間達に見られなかったよね!」
「ああ,大丈夫,大丈夫,周りに人はいなかったぜ.」
「そう,それならいいんだけど・・・.」
本当にちゃんと確かめたのだろうか.不安だ.
「で,その時計がとても綺麗だったんだ.細かいダイヤモンドが散りばめられたフレームに,黄金色に輝く針,それにベルトは黒く光る革でできていたんだ!」
「へー」
「しかも!時計の裏側は透けていてとても細かい歯車が噛み合って動いていたんだ.まるで,宇宙のようだったよ.トゥールビヨンの時計の本物は初めて見たけど,多分最高峰のものじゃないかな.」
「それは凄いね.小学校にそんなものが落ちてたんだ.・・・ところで,なんの話だったんだっけ.」
彼は,熱中すると周りが見えなくなるタイプだから厄介だ.
10進数の話ではなかったのか?
「ああっ,忘れてた!でも,まあいいや時計の話を聞いてくれ!」
「はぁ,そう」
「それで,その時計は・・・」
その時計の凄まじさを30分も語られてしまった.疲れた・・・.