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7.ハウズ強制収容所解放戦(前)

今回の作戦は長いので分けます

ーギルシア皇国・ハウズー


皇都から少し離れた山の中腹、ここには一昔前からギルシアに存在する大きな刑務所があった。今では、神ソ連赤軍がハウズ一帯を占領してしまったため、ここには反乱分子として捕虜にされたギルシアの有力者たちが監禁されていた。


この情報を得た陸上自衛隊は、アメリカ軍に支援を要請。陸上自衛隊の特殊部隊である特殊作戦群と、アメリカ軍の特殊部隊CIF中隊、AWG非対称戦グループによる連合チームが設立された。


午後1時、闇にまぎれながら特殊作戦用のMH-47Gチヌークが二機、編隊飛行しながら収容所に向かっていた。


「現在、ここハウズ強制収容所では、凡そ200名の一般市民が収容されています。これがどういう事を意味するか、お分かりでしょうか?」


アメリカ軍の数ある特殊部隊の中でも、少し変わった性格の特殊部隊『AWG(Asymmetrical Warfare Gronp)』通称、非対称戦グループの女性士官が、機内のホワイトボードに書かれた人質の数を指差す。


彼らは、もともと米軍がアフガニスタンやイラクの対テロ戦争で、IEDと呼ばれる簡易型仕掛け爆弾の被害を減少させるために、現地で活動する兵士に対ゲリラ戦への戦術指導を行う特殊部隊である。


今回の作戦を立案、伝達するのが彼らAWGの仕事である。変わってCIF『Commander's In-extremis Force(司令官の切り札部隊)』と呼ばれる沖縄駐留の特殊作戦部隊である。彼らは、普段から陸上自衛隊の特殊作戦群と合同訓練を行っており、対テロ即応部隊として機能している。


AWGの質問に答えるのは、特殊作戦群所属の隊員、風間かざま圭吾けいご二等陸尉であった。


「我々だけでは全員を救出できない」


「That's right(その通りです)風間二尉。我々は所詮20人の特殊作戦部隊です。どこぞのフランスもどきの小隊みたいに、強制収容所を戦車一台と10人の兵士で解放なんてゲームの中でしかできません」


「ありゃおかしかったな、列車砲が橋の上でしかも横向きに射撃できるかっつーの。角度考えろ、倒れて谷にドボンだぞ?」


「いやぁ、あなたもそう思いましたかウォルグ少尉。助ける前に隠密行動で敵の主力叩けって話ですね?」


「まさにその通りです米内曹長。結局、砲弾撃たれて解放した人質全滅しましたし」


実のところ、今回の作戦に抜擢されたメンバーは全員、お互い顔見知りで仲の良い関係だった。


「ごほん!では、話を元に戻します。すなわち、ハチャメチャな作戦行動が取れないこと。今回の作戦は最初から最後まで、すべて『All sneak mission』です」


「オーライ、誰にも悟られないって事だな?」


「Yes、作戦はこうです。今日の天気はあいにくの雷雨です。まず、作戦区域から700メートルほど離れたポイントにチームを降下させます。それがこのポイントαです」


AWGの士官、ミセス・アルディノート中尉がアルファと書かれたポイントを指差す。ちなみに、この地図は日本の監視衛星アマツカミからの航空写真である。


「そこから徒歩で北上、20分ほどで収容所南城壁に到着する予定です」


「ちょっと待て、いくらなんでもこの雨の中、山中を20分だって?」


「うおぉ、洪水フィリピン作戦の時のトラウマが……いてっ!」


「ちょっと黙れやニコ」


嘆くニコ・ブラウス少尉にゲンコツを食らわすファルクス・アルギリス大尉。


「まぁまぁ」


そのやりとりをニコニコ笑いながら微笑むのは、特殊作戦部隊唯一の女性兵士である特殊作戦群所属の萩原はぎわら優香ゆうか三等陸尉である。萩原は微笑みながらサプレッサー付きのAA-12ショットガンをニコとファルクスに向ける。


「落ち着きましょ、二人とも」


「「アイ、マダム!」」


「おめぇら、その辺にしとけ。ミセス中尉が困ってるだろうが」


最後に、風間、剣豪 、本郷 、有田、 米内、萩原の上司であり、今回の特殊作戦部隊『TF151』の隊長を務める御子柴みこしば総悟そうご一等陸佐だった。


「りょ、了解」


「続けてくださいミセス中尉」


「あっ、はい。ポイントアルファから徒歩でポイントブラボーの南城壁に向かう。そこから部隊を3つに分け、Aチームを責任者確保、Bチームを人質回収、Cチームを敵兵の無力化及び退路の確保に抜擢します。作戦行動時間は1時間、それまでに人質と責任者を連れてポイントチャーリーの回収地点に向かって」


「もし戻れなかった場合は?」


「後から降り注ぐAC-130のフレシェット砲弾の実験台になってもらいます」


ミセスの眼鏡が光る。それにゾッと怯える特殊作戦部隊のメンバー。


「内部の構造は一般の刑務所と同じです。そのため、隠し通路や地下室が存在する場合があります。ターゲット以外への接触は禁じます。あっ、一つ追加です。残った人質のために南城壁の破壊をお願いします。おそらく、人質の中に階級の高い軍人がいると思うので、その人に誘導をお願いしてください」


「その人とは?」


「先日、日本に亡命してきた皇帝エンズの護衛、ホーキュンズ・フローランスさんの実父、アイザック・フローランスさんです。彼はハウズに駐留する皇国陸軍の将軍ですが、情報ではすでに捕虜になったようです」


「了解した」


『こちら機長、ロックンロールまであと5分だ!』


「では、作戦の成功をお祈りします」


「ありがとう、では行こうか。みんな?」


「「「Sir yes sir!」」」


ポイントアルファに到着したTF151は、闇に紛れる特殊なギリースーツを着込み、無言のまま山を登り始めた。隊員たちの手に極限までに改造が施されたM4A1が握られている。


不意に、フロントマンのニコの肩越しに前方を警戒する本郷が右手を上げる。彼がM24のスコープで見つけたのは、トーチカとその前を警備する警備兵だった。


すると、剣豪が任せろとハンドサインで答え、警備兵に近づく。剣豪は腰のH&K USPを引き抜くと、後ろから警備兵の頭へ銃口を添える。


「Полностью еще(動くな)」


「Тьфу(うっ)Пусть она на улицах говорят(言う通りにしよう)」


剣豪は、警備兵を武装解除し、茂みへと連れて行く。武器はPPSh-41短機関銃とマカロフ拳銃を警備兵から受け取ると、手を簡易手錠で後ろ結びにして拘束した。


剣豪は警備兵からトーチカの位置や数、警備兵と人質の大まかな数、収容所の内部の形などを聞きだすと、気絶させる。


5人ほど隊員を選抜し、機銃を備えたトーチカへと近づく。中には下士官と思われる兵士と、数名の兵士がいた。


気づかれないように中へ入った5人は、背後から彼らに近づき、喉をナイフで掻き切る。動脈を切られた兵士たちは、自分が何に殺されたのか分からないまま、その人生に幕を閉じる。


トーチカを制圧したTF151は、再び闇の中へと消えていく。その姿は神出鬼没の幽霊ゴーストの様だった。

作者テスト中のため、次話の投稿は三日後になります

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