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6.運命の決断

かっ飛ばせぇ交渉!交渉!

おぉ〜交渉!



ーギルシア皇国・ユーティスー


各国大使館を独立国として新たに認めた日本政府は、大使たちとの協議をはじめ、ソビエトに対する軍事作戦の賛同を得た。


欧米各国大使と、新ロシア大使は日本の軍事作戦の支持を表明。アジア、アフリカ大使も支持を表明したが、韓国、中国、オランダの大使は日本の軍事作戦を非難した。


しかし、中韓は自国の工作員によるテロ計画が明るみになってしまったため、日本政府からはほぼ無視されていた。オランダは、他のEU大使たちから説得され、うやむやに賛成を表明。


こうして日本は、ギルシアとの間に結ばれた日魏安全保障条約第5条『各締約国は、ギルシア皇国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危機に対処するように行動することを宣言する』に基づき、ギルシアに自衛隊の派遣を決定した。


国会の承認には、一部野党が反発したものの、田沼は演説で国民を納得させ、世論では賛成が70%にも及んだ。


反対した野党の指導者が、心臓発作で急死したことや謎の失踪を遂げたことは、のちの話。


こうして、少し強引ながらも正式に派遣が決まった自衛隊は、海外派遣を前提に組織された中央即応集団をはじめとする精鋭部隊を、海上自衛隊の艦隊の護衛のもと、ギルシアへ派遣するに至った。


海上自衛隊第一機動艦隊は、旗艦である空母『ひりゅう』をはじめ、15隻の艦艇で構成される海上自衛隊の機動艦隊である。


現在、艦隊は民間から借りている輸送船を含め、陸自の主力を6隻で輸送していた。もちろん対潜哨戒は厳密にし、24時間体制で、艦隊の周辺にSH-60K対潜ヘリや、本土から応援に来たP-1哨戒機が常時監視をしている。


異世界に転移して4日が経つ日本は、自国への脅威である神ソ連と戦うことを決意した。しかし、あくまでも安全保障条約を締結したギルシア皇国への海外派遣だ。


もちろん、資源を賭け、自国の生存を左右する戦いである。派遣される誰もが国のためにと真剣な顔つきをしていた。


ギルシア南部の港町ミシェルダでは、異様な光景が広がっていた。午前9時ちょうど、まずは先遣隊である第一空挺団を乗せた第一ヘリコプター団が到着、港の港湾設備の調査を行う。


二時間後、すでに出航していた第一機動艦隊が護衛している輸送船が到着し、運んできた車両や物資を陸揚げする。市民たちはその圧倒的な自衛隊の戦力に唖然とする。


陸揚げされた車両は装甲車180輌、戦車60輌、輸送車両200輌、対空システム40輌、火砲60輌だった。無事陸揚げされた約550輌近い車両は順次、各作戦地域に向けて移動を開始する。


そんな中、作戦の初段階となるユーティス奪還作戦に抜擢された普通科一個中隊『第一普通科師団第二中隊』は、東に向けて進んでいた。


「緊張してるのか?」


東部方面隊、普通科連隊に所属する村上むらかみ春斗はると二等陸曹は、自分の乗り込む96式装輪装甲車の隣に座る分隊長、二宮にのみやすぐる一等陸曹に声を掛けられる。ずっと愛銃である89式小銃のマガジンを差したり抜いたりしている彼は、まだ実戦を経験していない新人だった。


「緊張してないって言えば嘘になりますね」


「そうか、お前でも緊張するんだな」


「どういう意味ですか、それ?」


「いや、訓練の鬼と言われるお前さんでも人の子だなって事だ」


しばらく話しているうちに、村上の所属する第一普通科師団第一小隊の車列は、ギルシアの皇都から200Km離れた街、前線地帯であるユーティス付近へ到着する。すでに、空母『ひりゅう』から飛びだった艦載機F-3Cが、制空権確保のために周囲の神ソ連空軍と戦闘に入っていた。


「総員降車!」


分隊長である二宮の指示に従い、後部ハッチから外へと降りる。車列の先頭である82式指揮通勤車の横に、数人の幹部自衛官たちが集まっていた。


「第一小隊集合!」


第一小隊の隊員たちは、指示された場所へと移動し始める。村上たちも装備を確認しながら集合場所へ向かう。


「注目、これよりユーティス奪還作戦への足掛かりとなるユーティス中央庁舎の制圧作戦を説明する。すでにユーティスは、神ソ連の別働隊によって占拠され、市街では虐殺も起こっている。我々は空自の制空権確保が終わり次第、アパッチ隊の支援の元街へ突撃する。なお、ユーティスは大規模な市街戦となる。必ず二人組で行動せよ、以上だ」


「了解!」


「よし、攻撃開始まで待機せよ!」


山の中で攻撃開始の合図を待つ第二中隊の上空を、空自のF-3C戦闘機が四機ほど通過していく。そして、上空警戒に当たっていたMig-25を撃墜した。


「GO!」


暖機運転で待機していた車両群は、一斉に山の斜面を駆け下りた。後方に待機していた隊員が山の中腹から迫撃砲で砲撃を開始する。


「なんだ!?」


「航空隊が攻撃されたぞ!?」


「見ろ!向こうから何かが来るぞ!」


街を占拠している神ソ連軍は鉢の巣をつついたような大騒ぎとなる。第一小隊の隊員たちは、車両から下車すると銃撃戦を開始する。


ユーティスの街を占拠していた新ソ連兵は数の方では陸上自衛隊に勝っていたが、もともと植民地から徴用した兵士たちだったため、練度も武器の質も自衛隊に敵わなかった。


村上も物陰に隠れながら射撃する。鼻をつくような火薬の臭いに我慢しながら、目の前の敵に鉛玉を食らわす。


あらかた戦闘が終わり、車両に随伴しながら移動する。すると、先頭を走る機動戦闘車のガンナーが頭を撃ち抜かれ倒れる。数秒遅れて、長い銃声が聞こえる。おそらく、スナイパーによるロングレンジからの攻撃だった。


「スナイパーだ!」


「全車停止!物陰に隠れろ!」


「探せ!」


二宮はすぐに分隊へ指示を出す。すると、第一小隊の小隊長である立脇二等陸尉が進行を停止させる。


「隠れろ村上!」


村上は動けなかった。撃たれたガンナーの頭がざくろのように割れ、内部組織が飛び散る。本当の戦場、一寸の狂いもない死と隣り合わせの戦場だ。


「村上!!」


「ッ!?」


二宮の声で気を取り戻した村上は、急いで車両の影に隠れる。その一瞬の後、村上がいた場所に狙撃された弾痕が残る。


「11時の方向!」


「あの建物だ!」


機動戦闘車の砲身である52口径105㎜ライフル砲から発射された砲弾が、スナイパーがいると思われる建物に着弾し、建物を破壊する。


「やったか!?」


「確認が必要です!」


「10時方向より接近する機影を確認!」


「ハインドか!?」


「ヒップです!」


近づいてきたのは、ソ連で運用されている汎用ヘリコプー『Mi-8』の重武装バージョンだった。隊員たちは車両や物陰に隠れる。Mi-8は両サイドに取り付けられている12.7㎜ガンポッドで自衛隊の車列を攻撃する。


「無事か村上!?」


「なんとか!」


『こちら小隊長、二宮分隊、上のヘリをどうにかできないか?こちらの砲では狙いがつけれん』


「やれるだけやりましょう」


『頼んだ、片付くまで動けそうにない』


「了解!付いて来い村上!」


建物に入った二人は、階段を駆け上って屋上へと飛び出す。


「俺たちで落とすぞ」


「アパッチ隊は他の小隊を援護してるし、航空隊は交戦中だ!俺たちでやるしかない」


すると、二宮は物置から拝借してきたワイヤーを、06式小銃てき弾に必死に括り付けていた。室内には取り残された住民たちが助けを求めてすがりついたが、二宮が安心させ、救助が来るまで落ち着かせる。


「隊長、まさか?」


「ローターにこいつをからめろ」


「えっ、無茶な!」


「やれと言ってるんだ!やれ!」


「りょ、了解!」


89式小銃の銃口に装着し、Mi-8のテイルローターに向けて発射する。ワイヤーは見事ローター絡められ、テイルローターを制御できなくなったMi-8は失速し始める。


「当たった!?」


「逃げろ!」


ワイヤーのある方向。二人の方角めがけて墜落するMi-8、二人は間一髪で避けることができた。


「危なかった……」


「ようやった!帰ったら普通科がヘリ落としたなんて自慢できるぞ?」


「もう、死にたいです」


「そう言ってるうちはまだ死ねんよ」


そう呟きながら帰る二人の頭上を、増援を輸送してきたCH-47JAの編隊が飛び去っていく。

展開早くてすみません。

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