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10.各国首脳の苦悩

こんな駄作にご感想いただけました。

感想を書いてくれた皆様に感謝しております

ー東京・首相官邸ー


日本国内閣総理大臣の田沼健三は頭を抱えていた。国内の不穏分子の摘発も終え、安保条約に基づきギルシアに自衛隊を派遣する。ここまでは良かった。


彼の抱えている諸問題は四つ。


・日本と神ソ連との間に明確な国交が存在しない。


これについては、日本は神ソ連を正式な国とはみなしておらず、ギルシアを侵略する武装勢力として対処している。が、いつまで通用するか分からない。


そして、二つ目が。


・自衛隊員の人員の少なさと、武器弾薬の補給について。


もともと、戦後から日本は争いごとに一貫して加担することはなかった。そのため、軍備増強を行ったとはいえ、人数の少なさと武器弾薬の不足には頭を悩まされている。


三つ目が。


・この世界のもう一つの大国であるラムダ共和国との交渉遅滞である。


神ソ連と同等の国力を持つと思われるラムダ共和国は、ギルシアの皇帝であるエンズが亡命を希望するほど信用できると考えられている。しかし、国策で信仰する宗教の影響が、日本との交渉を遅らせている。


そして、最後に。


・神ソ連が持っているであろう、核兵器の存在だった。


これには一番神経を研ぎ澄ませていると言っても過言ではない。


1950年、忠実のソ連ならば、米国との冷戦真っ只中である。最も有名なのが、米国との核戦争が勃発しかけたキューバ危機だろう。米国の中庭とも呼ばれる南アメリカ大陸にソビエトの核ミサイル基地が建設されかけたことだ。


その時は、当時の米大統領ジョン・F・ケネディが、キューバへの海上封鎖という前代未聞の試みを行い、戦争は回避された。


日本も同じく、隣国である中国、北朝鮮の核兵器については神経質になっていた。中国は、ミサイルの三割を日本に照準を合わせ、北朝鮮は核搭載の小型潜水艦で自爆攻撃を敢行するという可能性もあった。


これらを考慮して、時の政府は弾道ミサイルの防衛処置として、海自のイージス護衛艦を総数16隻とし、列島各所の離島にミサイル迎撃サイロを建設した。しかし、忠実とは少し違う相手なため、油断はできなかった。


その時、執務室の電話が鳴り響く。


「どうした?」


『米空軍が神ソ連領内に強行偵察を敢行しました』


驚きの一言だった。おそらく、嘉手納基地に所属する唯一の高高度偵察機SR-71ブラックバードによる偵察だろう。なんともタイミングが良すぎる。


「それで、どういう報告が入った?」


『総理、核は存在します』


予想はしていたが、いざとなっては現実逃避したくなるような結果だった。


『神ソ連の保有する核兵器の総数は不明ですが、確認しただけでも七つの発射場が確認されました』


「そうか」


『念の為、すべての部隊に第一級戦闘配置を命令しますか?』


「そうしてくれ、人口密集地には高射特科のPAC-3を配置だ」


『承知しました』


「吉と出るか凶と出るか……」


田沼は深く考えながらも、目の前の書類の束を整理し始めた。食料備蓄、燃料備蓄の問題を含め、輸出入産業や観光業の壊滅的な損失、兵器の国内生産、邦人遺族への支援など、解決すべき問題は山ほどある。


「前途多難だ……」


そう愚痴りながらも、一つ一つ丁寧に書き留めていく田沼であった。



ーギルシア・臨時皇都ユーティスー


皇都が神ソ連によって占領されたギルシアは、自衛隊が上陸した港湾都市ユーティスを臨時の皇都とした。


ユーティスの市庁舎、執務室の机から少し離れた窓際の椅子。皇帝専用に用意された豪華な椅子とは違い、骨組みとクッションだけの素朴な椅子に座るのは、ギルシア皇国の現皇帝エンズ・ギルシアだった。


「なぁエンズ」


「なんだ?」


「こっちに座ってくれって」


「嫌だ。そんな椅子に座るほど俺は価値がない」


「って、お前皇帝だろ?みんなに威厳がないってさ」


ボサボサした金髪のハネを抑えながら、自分の友人でもある皇帝を椅子に座らそうとするホーキュンズ。


「そういえばホーキュンズ、日本の田沼総理から連絡があった」


「どんな?」


「日本の特殊部隊が、ハウズの強制収容所を解放したと言ってた。解放された国民は150名、その中に親父さんとエリシャがいる」


「本当か!?」


「あぁ、そろそろここに到着するはずだろう」


そうしていると、市庁舎近くの自衛隊ユーティス駐屯地にヘリコプターの編隊が帰還してくる。ホーキュンズはそれを聞くと、執務室を飛び出して自衛隊の駐屯地に向けて走り去ってしまった。


「よろしいのですか陛下?」


同じように駐屯地に向かわないエンズを見て、国務大臣が心配したように声をかける。


「いや、俺は構わんよ」


「ですが、ご友人なのでは?」


「俺はこうやって、みんなが楽しんでる姿を上から眺める方が好きだ。はは、それに皇帝が直々に会いに行くなんて、それこそ威厳もクソもないじゃないか。向こうから会いに来させるから本当の皇帝だよ?」


エンズは冗談交じりでそういう。


「それはそうとして、陛下。お耳に挟んでもらいたい事が……」


「どうした?」


「日本の同盟国であるアメリカという国の部隊が得た情報が、自衛隊から送られてきました」


「アメリカ?日本はその国の軍を自国に駐留させているのか?」


「そのようです。その中で、核ミサイルと呼ばれる大量殺戮兵器の存在が確認されたと」


核と聞いたエンズは眉をひそめる。この世界には神ソ連がやってくるまで核兵器というものは存在しなかったが、その威力は日本で見た広島や長崎の惨状を見て思い知らされていた。


「日本政府の意向は?」


「日本政府は、それらの兵器を発射する施設に対する何らかのアクションをとるそうです。その他、核ミサイルの防衛に特化した部隊をこちらに移送してくれるそうです」


「それは助かる。現時点では我が国軍にミサイルを迎撃できる兵器なんて限られているからな……」


窓枠に寄り添い、ペットであるセキセイインコの動きを見ながら、対策を練るエンズであった。



ー神ソ連・モスクワ中心部クレムリンー


クレムリン宮殿の執務室では、ラジオで民謡を聞きながらウォッカを飲むヨシフ・スターリンの姿があった。


「同志スターリン閣下」


「何だ?」


「我が空軍のレーダーが所属不明の機体を確認しました」


「ほう?それで、好き勝手暴れられたのか?」


「いえ、それについては不明機の詳細を掴むことに成功しました」


空軍大佐のアレクセイから渡された書類を見て、スターリンの目は一層鋭くなる。


「アメリカだと?」


「はい。どうやら日本は、アメリカと同盟を組んでいるかと思われます」


「ふむ。そうなれば厄介だな……」


「どうされますか?」


「このまま渋っていてはジリ貧だ。向こうから接触がないうえ、占領地を奪還された。これより大規模な攻勢へと転じる」


スターリンはマジックを取り出すと、日本列島が新たに書き加えられた地図に、赤線で何かを書き始める。


「日本列島占領計画……でありますか?」


「その通りだ同志アレクセイ。このまま出し惜しみをしてみろ、我が国は圧倒的に不利な状況へ立たされる。ならば、こちらから攻め込んでやればいい」


「で、では?」


「同志アレクセイ、将軍たちを呼んできたまえ」


「だ、ダー!」


慌てて執務室をでるアレクセイの後ろ姿を見て、スターリンはため息をつく。


「本当に使えない奴らだ……」


そう呟きながら、またウォッカに口をつける。



ーラムダ共和国・首都イリオスー


「教皇猊下、日本より交渉の催促が届いております」


「そうであるか……」


ラムダ共和国の首都イリオスの中心部、マグダラ宮殿の謁見の間には、豪華な椅子に座る煌びやかなベールを羽織り、白の羽衣を見に纏った小さな少女がいた。


名前はミル・ユートラ・オールド。


彼女こそ、ラムダ共和国の最高指導者であると同時に、国教であるグ・オール教の教皇でもある。歳は歴代教皇の中でも最年少の12歳でもある。


「そのような、絶対唯一の神ランテ様を信じない無神教国家など、放っておけば良い」


「ですが、日本はすでに神ソ連と事実上、開戦しております。ここで恩を着せれば、戦争終了後に日本に借りを作ることができるのでは……」


「構わない。グレイセルを占領し、ギルシアの八割を掌握した神ソ連に敵うものなどいない。両方が疲弊した時に、我が国が横合いから殴りつけるのだ」


「で、では?」


「日本政府に伝えよ、国交は結ぶが貴国らの争いごとには加担しないと」


「御意に」


ミルは席を立つと、バルコニーへと歩いていく。眼科では、自分の登場を待っていたラムダ国民が歓声をあげる。旗や紙吹雪が舞う中、ミルは「教皇猊下万歳!」という声に合わせて手を振る。


「せっかく、ギルシアのエンズを手中にできると思ったのだが……」


まだ成人に満たないミルは、今持っている知識をフル活用し、今後の国の動きを考える。

F-4をF-3Cへ修正いたしました

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