マカパート
ライム達と別れて数分後、町の西側にいた三人は大通りでそれらしい人が居ないか辺りを見渡していた。
ルーシェ君の話によると、優しくてきれいなお母さん…ということだった。
「うーん、優しくてきれいなお母さん…優しくてきれいなお母さん…いなーーい!!」
辺りをマジマジと見渡していたマカは息を荒らしながら頭をこれでもかとグシャグシャにする。
「優しくてきれいなお母さんと言っても、わからないですねー、他にお母さんの特徴とかはありますか??ルーシェ君。」
ライトは困った様にルーシェ君と目を合わせると、ルーシェ君は辺りを見渡してある人を指差す。
「あんな髪飾りをつけてる。」
二人は指差す方を見ると見るからに若い女の子が可愛らしい雑貨が置いてある所で、買い物を楽しんでいた。
その女の人の頭にはユリの様な花の髪飾りがついていた。
その髪飾りは太陽の光を浴びてキラキラとエメラルド色に輝いていた。
「なるほど…髪飾りですか。」
ライトは納得したように頭を頷かせ、辺りに髪飾りをしている人が居ないか探す。
「うーん、髪飾りだけが手がかりもなー、他には??」
マカに言われて、少し慌てながら口をあける。
「えっと、髪が長くて、いっつもバックをもってる。」
男の子が慌ててそう言うと、マカは「よーし!バックに髪が長くて髪飾りね!!」といいながら、また目を凝らして探し始める。
「うーん???」
…数十分は経ったらだろうか…それらしい人はいるのだが、皆違う人だった。
三人は一旦捜索を止めて、町の中央にある噴水の縁に腰を掛けた。
「あーーー、見つからないー!フーン。」
マカも力尽きた様に、噴水の水に手を入れて背伸びをすると、横にいたルーシェ君の顔を見る。
「…。」
不安そうにするルーシェ君の顔を見ると、マカは背伸びを止めて再び辺りを見渡し始める。
「…いないですね…一回お家に帰ってみますか??もしかしたらお母さんもそこに居るかもしれないですし…。」
ライトも、辺りを見回しながらそう言うと、マカも賛成する。
「お家は分かる?」
ルーシェ君の目線に合わせてマカが中腰になると、ルーシェ君は、ふいにそっぽを向く。
「「??」」
「…お家分からない、お母さんとじゃないと嫌。」
急に表情が暗くなったルーシェ君を見て、二人はただただ困り果てるばかりだった。
「そうですね、お母さんが居ないと寂しいですよね、それじゃーもう一回探しましょう!」
ライトがそう言うと、ルーシェ君はパァ!と笑顔を見せる。
「うん!!」
その時だった。
マカの背後に人の気配が迫っていた。
ポンポン。
「はい?」
肩を叩かれたマカは不意に後ろを振り向くと、そこには茶色の髪を一つに束ねた男の人が立っていた。
「すみません…そこにいるのはうちの子なんですが…何かルーに用ですか?」
その口から出る声はとても優しい声だった。
「あ!ルーシェ君のお父さんですか!?良かった、迷子になってたのでお母さんを探していた所なんです!ね!ルーシェ君も良かったね♪」
マカがルーシェ君の方を見ると、ルーシェ君はあまり嬉しそうでは無さそうだった。
寧ろ悲しそうにお父さんのことを見上げていた。
「あ、あれぇ…。」
少し焦るようにお父さんの顔を見ると、父親もしかめっ面をしている。
「…母親を探していると言ったんですか?」
おも苦しそうに開いた口は先程の優しそうな声では無かった。
「は、はい?」
すると、父親はマカに頭を下げてこう言った。
「すみません!!違うんです!この子の母親はもう、死んでるんです!!」
「「え!?」」
マカとライトが驚きを隠せずお互いの顔を見ていると、ルーシェ君は父親のそばにいき、ズボンの裾を掴む。
「お父さん…お母さん居なかったよ…ねぇ。」
「この子にはずっと母親が居ないことを隠してました!でも、最近は、母親の事を探すようになり…つい最近も迷子になったばかりで、今日も家の鍵を掛けておいたのにどこからでたのか!すみません!!本当に。」
二人に頭を下げると、父親は膝をつけてルーシェ君と向き合い真剣な顔でこう言った。
「ルー、お前のお母さんは居ないんだ!何度言ったら分かるんだ!」
「…。」
ルーシェ君は俯きながら何も言わず、ただただ黙り混んでいた。
すると、その時ライトが一歩前に出て声をあげた。
「あの、そんなに怒らないで下さい。まだ小さいしそんなにすぐ受け止められる事じゃないです。もっとルーシェ君の気持ちもわかって欲しいと思います。」
ライトの真剣な顔を見て父親は「すみませんでした、せめてお礼だけでも。」と頭を下げてルーシェ君の手をひいてライトにお金の入った袋を預け帰っていった。
二人はその親子の姿が見えなくなるまで、ずっと親子の姿を見守っていた。
「………。」
「…。」
「もう、時間だから行こっか。」
「そうですね…。」
そういいながら二人は歩き始めた。
「さっきの凄かったね!何かカッコいいと思っちゃったよ。」
マカが微笑みながらライトにそう言うと、ライトは遠くを見ながら話を続けた。
「…そんなこと無いです…ただ…。」
「…??ただ?」
「…何でもないですよ。」
そういいながら笑顔でマカの方を向く。
「?」
「さー、もう二人とも待ってるかもしれないですし、急ぎましょう!」
「え!?、う、うん!!」
二人は待ち合わせの場所へと急いだ。
マカはやはり何か引っかかる様だったが、あまり深入りしてはいけないと思い何も聞けずにいたのだった。
夕暮れ時、まだまだ賑わう通りを二人は足早とかけていった。
ちょうどすぐそばに集合場所があったため、二人はそこに着き、ベンチに腰かける。
「あー、疲れたけど、よかったね!」
「そうですねー!ありがとうございます!」
「こちらこそ!」
そう話していると、向こう側から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
その方を見ると、黒と茶色のきれいな塔から二人が掛蹴ってきている。
「おーい!お待たせー!」
「お待たせ。」
と言いながら。
二人はそれを暖かい目で見ていた。