友達
前のやつと最初の方は一緒です。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
傷を押さえながら門の前へと到着すると、後ろを振り向くと、三人の姿はなくどうやら追いかけては来ないようだ。
「絶対にあたしが終わらせる……」
独り言のように呟くと扉を両手でゆっくりと開ける、大きな扉のため重量はかなりあるが、少しずつ開いていた。
だが、その代わり滴る血の量も増えていた。
血が染み込んだ土は滑りやすくなり歩くようにしてなんとか門を潜り抜けた。
そこに待っていたのは数々のモンスターが敷地を埋め尽くしていた。
ライムはそれを一通り見渡すと治療薬を使い、怪我を治すと一気にその群集に飛びかかっていった。
「あぁぁあああ!!」
次々に敵を鎌二本で倒していき、まだ遠い玄関を目指していた。
だが、斬っても斬っても一向に近づくことのできない扉に少々焦り始め、気をとられていると背後から隙をつかれ、攻撃を喰らう。
「!やぁぁあ!」
思いっきり振り返りざまに鎌を降り下ろし、敵を斬り倒すと共に敵の体が瞬く間に光、物凄い爆風と音がライムを包んだ。
「!? 攻撃を受けたら自分事爆発するのか! 」
突然のことで戸惑いながら地面を滑るようにして、吹き飛ばされ顔を上げるとそこはクレーターが落ちたように地面が凹み、辺りからは煙が漂っていた。
(こいつを利用すれば……)
周りにいる、敵を倒しながら試行錯誤を繰り返し自爆する敵に向かって次々と攻撃を仕掛けていく。
その度に怪我を負うが、その分玄関への扉の距離はみるみるうちに近づいていたのだ。
城の庭は既にクレーターまみれで爆発音が絶えなかった。
またしても血まみれになりながらも必死に扉を目指してやっと扉を目の前にしていた。
そのまま敵を振り払い、扉を勢いよく開けて中へと入る。
中は外も曇っているせいか、薄暗くライムも目を凝らしながら進み始めた時、ライムの一番近くにある蝋燭から一本ずつ火が灯り、まるで道を案内しているかの様に、廊下を照らしていった。
ライムも暗いところよりは安心だろうと火の灯る蝋燭を目印に城の奥へと足を進めていった。
途中傷薬で回復をして、周りに警戒をしながら歩いていくと、途中から蝋燭の火はつかなくなり、今まで灯っていた火が一気に消え去り辺りに暗さが戻った。
「罠だろうな……」
そう思ったとき正面に先ほどの玄関より大きな薄暗く光る扉を見つけ、その扉の絵を見るなりライムは近寄り指先で触れてみた。
その扉の模様は綺麗な女の顔が掘られておりライムにはその顔がなんだか懐かしく感じていたのだ。
「……あれ、これ誰だっけ?」
記憶を探ろうとしていると左後方から巨大ハンマーを持ったがたいのゴツい顔が二つある鬼がライムに攻撃を仕掛けてくる。
ライムがかわすとその降り下ろされたハンマーは床へと勢いよく降り下ろされ、亀裂と振動を与えた。
「!」
相手方がよそ見をしている隙に一先ず先ほどの部屋に入り、鍵を掛けると一呼吸おき、部屋を見渡す。
部屋の内装はまるで教会のようで、いくつもの椅子が左右に別れ並び、その真ん中の広い通路の向こうには、見上げるような程大きな女性と男性の絵が描かれたステンドグラスが部屋にある蝋燭の火で清楚な雰囲気を出していた。
「……これって……」
ライムがステンドグラスを見ながら近寄って行くと、近ければ近くなるほどその絵が懐かしく思えてくる。
「もうそろそろ気づいたかい?」
「!?」
いきなり誰もいないはずの部屋から声が響き渡り、驚くライムの背後からフワリと風が吹く。
「誰だ!」
勢いよく後ろを振り向くとそこには暗闇で顔までは見えないが誰かが立っていた。
ライムの声を聞きため息を吐きながら、ゆっくりと話し出した。
「このゲームの開発者と、共にこのゲームのボスだよ、設定上は……魔王かな」
「……で、何故その魔王様がこんな所へ?」
ライムの質問に魔王は答えようとはせず暫くの沈黙が続く。
「答えられないのか」
「君は……あのガラスの女性を知っているだろう?」
「?」
ライムはゆっくりと振り返り、ステンドグラスを見ると魔王に向き直り首を縦に振る。
「知ってるよ」
「……」
「だってあの人は……」
「だったら話は早いな」
ライムの答えを待たずにして魔王はライムに近づいていく。
蝋燭の光が少しずつ魔王の体を照らしていく。
全てが分かったときライムは目を伏せると、ため息を吐いた。
「……何がしたいの?」
「あの時は、お前だけを生き甲斐に人生を送ろうとした……だがどやら無理だった様だな」
「そう……みたいだね、あの日から何もかも狂ってしまったのかもね」
「……お前は幸せだったか?」
「普通かな」
一通り話を終えるとまたしても沈黙になり、ライムも睨み付けながら少し後ずさりをする。
魔王はと言うとステンドグラスをボーッと見つめ、攻撃は仕掛けてこないようだった。
「凄いだろう? 私がこのゲームをこの手で作ったんだ、カシファのために」
「……」
拳を握りしめ唇を噛みしめると、魔王はその姿を見て、ゆっくり近づいてくる。
「今まで何してたの、私の事なんて眼中に無かったでしょ」
「……それでも私はカシファを愛していたんだよ、我が子供よ、これで終わりだ……」
「!?」
そう言い残すと魔王の姿は消え、代わりに地面が崩れ落ち足元から下に落ちていく。
(もうダメ!)
何もかも諦め暗闇へとスローモーションの様に落ちていくライムは瞼をぎゅっと閉じた。
今までの皆との出来事が甦り、頬を涙がつたう。
悲しかった事や、喧嘩したこともあった、でも何より皆といれて楽しかった。
そんな別れを惜しむようにライムを右手を天井に向けて突き出し大声で叫んだ。
「助けてぇ!!」
誰も来ないことくらい自分がよく分かっていた、あんなこといって助けになんて来てくれるはずがない、ましてや友達でもなんでもない、ゲームの世界でしか知り合っていない、それにマカが来てくれるにしても間に合わない、そう思っていた。
何もかもがここで終わりを迎える。
そのためにここに来たのに、これじゃぁダメだな
そう思ったとき、瓦礫が崩れるなか聞き覚えのある声が微かに聞こえた。
「ライムさん!」
パッと瞼を開けたとき、力強く握られた腕の先にはライトが必死にライムを引き上げようとしていた。
「ライト……さん?」
「待っててくださいね! 今引き上げるので!」
だが、扉の向こうに居た敵も歪んだ扉をこじ開け、中に入ってくると、ライトに向かってハンマーを降り下ろそうとする。
「ライトさん……危ない!」
「インパルス!」
ライムが叫んだと同時にマカの声が聞こえ、それと共にステンドグラスが粉々に飛び散り、キラキラと光り、敵に雷が落ちた。
そのあとは光の壁が二人を包みアゲハが雷でパニックになった敵の攻撃から二人を守っていた。
「皆……」
何とか引き上げられ、敵も一段落終えると、ライムは皆から背を向けて座り込んだ。
何も言わないライムを見て、困り果てるアゲハどマカは顔を向かい合わせる。
ライムもあれだけ酷い事を言っておいて今更こんなところで助けられてしまい、悔しさが溢れだしてくる。
きっと許してはもらえないだろう。
「なんで……助けたの」
勇気を振り絞って聞いてみると答えはすぐに帰ってきた。
「理由なんて無いです」
ライトは真っ直ぐな目線だった。
「あるとしたら……それは私と友達になって欲しくて」
ライトはそう言うと立ち上がりライムに頭を下げた。
「すみませんでした……」
「え」
いきなりのことで唖然としているライムにあとの二人も驚いているようだ。
「私が全部悪かったんです……」
ライトがそう言うとメニューから一つの小さなナイフを取りだし、自分の首もとに持っていく。
「おいねーちゃん!」
「えぇえ!?」
「……?!」
ライムは驚きが隠せず何も言えないようだった。
「私は弱くて、最低な人間です! 現にライムさんをこんなに怒らせてしまい、申し訳ないです! でも、ライムさんにも私のお友達になってほしいから! 皆でこの訳のわからないゲームを終わらせたいから……私も一緒にこのゲームを一緒に終わらさせて下さい……私頑張ります! もう嫌なことをしないように……そのためなら私ここで……」
ゆっくりと喉にナイフを近づけるのを見て直ぐ様二人がライトを取り押さえるとライトもよろめきながらも必死で抵抗していた。
「ライト! なぁにやってるのよー!」
「バカか! やめろ!」
「は、離してください! 私! 本気です!」
そんな三人の光景を見て、ライムは自然に笑みか溢れた。
「フフ」
「え?」
三人が茫然としていると、ゆっくりと立ち上がりライトの前に進むとゆっくりとライトの持っていたナイフを取ると、先程の床の穴へと投げ捨てた。
「ライム……さん?」
「ライムで良いよ……それに謝らないといけないのは私の方……ごめんなさい、あんな酷いこといって」
そう言うとライムはゆっくりと一礼すると満面の笑みを見せた。
「それにさ、今ここで死んだらこのゲームクリア出来ないよ? ね、ライト!」
「……ラ、ライムさん!」
「ライムで良いってば」
「は、はい! ライム!」
そう言うと二人とも自然と久々の満面の笑顔を見せていた。
「ん? まーあれだな、よくわかんねーけど仲直りってことだな、これで一件落着♪」
「だね!」
マカとアゲハもハイタッチを交わし、四人で意味もなく笑っていた。
「それじゃ行こうか」
「「「「クリアを目指しに!!」」」」
四人は颯爽と歩いていった。
人生一つの行動が、変われば運命も変わるってもんです!(多分)




