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繰り返しのゲーム  作者: 赤ずきん
繰り返された未来
6/74

究極のドジ

「なー、どーするんだよ…。」


アゲハはひきつった顔で下を見ていた。



「うーん?どーしよー」


そしてマカはやはりひきつった顔で下を見ていた。



グルルルゥーーーワンワンワン!!!


そう、今二人は窮地に追い込まれているのだ。


「…どうする?あの二人…。」

「はー、仕方ないわねー。」


その二人を影から見守るライトと ライムは顔を見合わせて呆れ顔をしながら深くため息を吐いた。



なぜならアゲハとマカは今、見た目が超恐いデカイ犬に追い込まれて、家の塀に登って避難している所だった。


鋭い牙、荒い鼻息、普段は愛らしいのだろうその瞳は、今はもう憎しみと怒り一色だ。


いつでも飛びかかれるようスタンバイをしている所がまた、おぞましい。


なぜ二人がこの状態になってしまったかというと…今からほんの5分前の事になる。








お祖父さんから剣を貰って浮かれていたアゲハは剣を片手に振り回していた。


「イエーーイ!」


「ちょっとアゲハ!危ないでしょ!もー当たるところだったよ!」


ライトが剣を避けて怒っていると、隣にいたマカが目を耀かせながらアゲハに近づく。


「ねーね!アゲハ!あたしにも剣持たせてー!」


すると振り回すのをやめたアゲハが以外とすんなり剣を渡した。


「わー!スゴーイ結構重いね!カッコイイー!」


「だろー?いやーやっぱりいいよなー!」


「こんな感じて振り翳すのかな?」


マカは勢い良く剣を振り上げた。


「!!ちょ!あぶな!!」


剣の先が危うくライムに当たりそうになる。


「わわ!マカちゃん!」


ライトもギリギリの所でかわしたが、ここからが二人の悲劇の始まりだった。


「オットトッ」


「お!おい?マカ?!」


剣を振り上げたまま後ろに一歩二歩とよろよろ下がっていく様子を見てアゲハは異変に気づく。



「お、重!!」


「「「え!!」」」


その時煉瓦の溝に靴の踵が引っ掛かり、綺麗にダイブ!!



「「「あ!」」」


剣は綺麗に吹っ飛び日向ぼっこをしていた可愛いワンちゃんにダイブ!!



キャイーーーン!!



鞘に納めていたので怪我は無かった。



だが尻尾が痛みのショックで逆立っていたまま動かない。


誰もがヤバイと実感した。


涙目で頭を押さえながら呑気に立ち上がり、マカはやっと状況を確認する。


「あれれ?剣は?」


マカ お馬鹿さが3上がった。



「えーっとあ!あった!!あ!君が拾ってくれたの?ありがとーよしよし♪可愛いねー君♪」


どう見ても怒りに満ち溢れている顔を見て、可愛いねと言いながら能天気に頭を撫でているマカに、ライムは話しかけた。


「マ、マカ?」


「ん?…?どうしたのそんなにお化けでも見てるような顔して♪可愛いよ?この子ね♪」



そう言うと、マカは犬の方へと振り返った。


「…。」


グルルルゥーーーー!!!!




そして四人は固まった。


マカの顔からは血の気が引くように顔面蒼白になっていく気がする。


マカの手は綺麗に犬の口の中へ入っていた。


間からは少しばかり血が流れている。



「…。」



「噛ーまーれーたー!!!!!」



それは一瞬の出来事でした。


マカの大声でびっくりしたのか、手から口を離すと、一気にマカに襲いかかってきた。


「イヤーーーー!にーげーてーー!」


マカは寸での所で犬をかわし、もう突進でアゲハに向かっていった。


犬もそれを見て、追いかける。


「えー!俺ーー!?」


「おい!」

「わ!!」


ライムとライトは左右に逃げ切ったが、マカとアゲハは、真っ直ぐ逃げたため二人して追いかけられる事になった。


こうして追い込まれて追い込まれて、このような状態になってしまったのだ。


そして文頭に戻る。



グルルルルゥーー!ワン!

どこかの家の塀に二人はよじのぼり、狭いスペースに二人はいた。


「お、おい!あっち行けよ!ほら!」


アゲハが必死に追い払おうとするが、一向に引く気配はない。


わん!!!


「「ひ!!」」


「ちょっと~助けてよー! ライム~!ライト~!」


マカも足が痺れ始めたのか、徐々に体制が崩れていく。


「うーん、どうしようか?何か良い案がありますか?」


ライトは腕を組んで必死に頭を回転させる。


「…暫くしたら怒りも収まると思うけどなー。」


ライムはとりあえず辺りを見渡して何か使えそうな物があるか探してみた。


「…ここはもう!強引に行っちゃいましょう!! ライムさん!!」



(え?えーー!何?何でそんなに目を輝かせてるの?なにするつもりだよ)

無駄に目を輝かせながら、意を決したように犬を指差すライトにライムは嫌な予感しかしなかった。


「え、えっと~なにするの?」



「強行突破です!!」



「どうやって?」



「まず作戦はこうです!」






こそこそとライトから作戦を聞き、取り敢えず今はそれしかないと確信し、作戦実行の時を待つ。


(…ここは仲間のためにやるしかない!)


「はぁ。」


ライトに気づかれないよう小さくため息をするとライムも意を決したように準備をする。



「よし!行きますよ!」

「い、イエッサ!」



そして二人は一気に走り出す。


バタバタバタバタバタ!!!!


「あ!あれは!!」


「救世主達が来たぜ!!」



そう、ライトとライムは無言でそして真顔で勢いよく走っていた。



犬はそれを見て、まるで恐ろしい物でもみたかのように怯えながら逃げていった。



「や!やりましたよ!ライムさん!逃げました!」



「やっやった あ」


「あ。」


ズッサーーーー!!!!!


ライムとライトは互いの足が掛かり、見事同時に地面にダイフしたのだ。


そこにようやく解放されたアゲハとマカが到着する。


「うわー、痛そう…大丈夫? ライム。」


「おーー、こりゃまた派手にやったなー、大丈夫か?」



ライトは起き上がり怪我が無いか確認する。



どうやら怪我はしてないようだ。


「 ライムさん大丈夫ですか?」


ライトが心配そうにライムの方を見ると、 ライムも自分の体を見渡し、怪我が無いか確認する。

「だ、大丈夫。」


ライトに手を貸してもらい立ち上がると、 ライムは服についた土を手でさっとふるい落とす。


「ごめんね、もー助かったよ!ありがとう!」


マカが申し訳無さそうな顔を しながらライトと ライムに謝ってくる。


「いや、良いけど、手大丈夫?」


「うん!手は大丈夫!」


「良かったですね、ほら!アゲハも謝んないと! 」


頭を押さえなられながら、やや強制的にされているような気がするが、本人も反省しているようだった。


「ごめんな、迷惑かけて。」


「い、いや、気にしないでいいよ。」


「そうか!じゃー気にしないぜ!!」

「…。」



「あんたは、お馬鹿ーー!!!」


「ふふ、ライトさん。」



何だかんだで不運続きだったけれど、ちょっぴり四人の絆が深まった気がしたと ライム はそう思った。


(こういうのも、案外楽しいのかも楽しいのかもな)

ライムは、ライトとアゲハの追い掛けっこを見ながら、ふとそう思うのだった。



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