新たな出会い
♪~♪~♯~♪
その時どこからともなく音楽が鳴り響く。
すると皆静まり、先ほど出てきたコンピューターが、どこからか話しかけてくる。
その声はゲームをプレイしている人には皆聞こえているのか、辺りを見回したりしていた。
『皆様、再度申し上げますが、本日は本商品をプレイして頂き誠に有り難うございます。』
辺りは話を聞こうと集中しているのか、コソコソ話が聞こえる程度になっていた。
『それでは皆様にこれからして頂くことと、この冒険の目的を伝えたいと思います。』
「なんかさ小学校の時の校長思いだすよねー。」
隣でニヤニヤと笑いをこらえている、大人びた那奈を見て、自分も苦笑いをする。
(そういえば校長のあだ名ってア◯ムだったなー、部屋にア◯ムのフィギアが沢山あったし、声もロボットみたいだったし、何より放課後独りでビームの格好して歩き回ってたしな。)
そんなことを思い出していると、笑いが少しばかり込み上げてくる、
が、ここは辛抱する。
『これから皆様には自分を含めて4人のパーティを作って頂きます。一回作ったバディとは、旅を共にします。作り直せないので、よく考えてからお決め下さい。それではお願い致します。』
コンピューターの声がしなくなると、皆一斉に動きだし、次々とバディを作っていく。
その光景を一通り見て、私は那奈の方を見る。
「あと二人…かぁー。」
「…そうだな…。」
カシファと那奈は、歩き出し辺りを見回す。
「皆結構作るの早いね、あそことかもう出来てるよ?」
那奈が見る方には、いくつものグループが出来ていた。
皆自己紹介をしあってるみたいだ。
「そうだな…おっと!失礼。」
(あーもう!人が多くて嫌だ!)
人とぶつかりそうになり、人の多さに少しばかりイラつきをみせはじめた時だった。
「こらぁ!ダメじゃないの!早く探さなきゃ。」
向こうの方から声が聞こえてきた。
無意識に二人は声のする方を見ると、勇者の格好をした白髪の男の人が、かわいらしいアイドルのような格好をした赤髪の女の子の腕を引っ張っている。
「いーじゃん!アイツ旨そうなんだもん!」
その女の子の指差す方には、白髪の頭が異様にフワフワした綿菓子のようなおじいさんがノホホンと座ってお茶を飲んでいた。
「ズルズルズル…はぁ~良い粗茶ですな。」
「こら!そんな失礼な事言っちゃダメでしょ?あれは綿菓子じゃありません!」
白髪の男の人が腕を引っ張りながら叫ぶと、赤髪の女の子は「エェー美味しそうなのに~」と残念そうな顔をする。
その顔は愛らしくみえる。
「ねー、あの人達だったら丁度二人だよ?誘ってみようよ!」
その光景を一緒に見ていた那奈は、二人の元へ走り出す。
カシファも歩き出し、三人の元へ急ぐ。
「あのー、すみません、良かったら私たちと組んでもらえますか?丁度二人なんですけど。」
那奈は少し遠慮がちに声を出すと、二人は直ぐokを出してくれたのだろう、カシファが着いたときは、自己紹介を始めようとしていた。
「えっと~私の名前は…。」
那奈が最初に名前を言おうとすると、またさっきの音が流れる。
♪~♪~♯~♪
『皆様お話の途中失礼致します。パーティが決まったので、話を進めて行きたいと思います。』
「…早いね。」
「…そうだな…」
私達は自己紹介を後にして、ひとまずコンピューターの話を聞くことにした。
『まず、こちらでパーティの登録をさせて頂いたお詫びと、自己紹介を済ませてしまった方もおられると思いますが、これから、自分の名前を決めて下さい、また、本ゲームをより一層楽しんで頂くために、ゲームプレイ中はその名前で呼び掛けあって下さい。それではお願い致します。』
長い説明が終わった瞬間、目の前にモニターが現れる。
名前を打ち込むものだろう、五十音や英語等がおなじみな文字が書かれている。
皆もこれには結構時間を掛けているようだ、あちらこちらであれでもない、これでもないと悩んでいる声が聞こえる。
(さて、私も考えるか…うーん何にするか、食べ物系にするか、んー、悩むな…。)
「あたしきーめた!」
元気よく声をあげて那奈は打ち出す。
(那奈は何にしたんだろう?早く私も決めなければな…よし!あれにしよう!}
なまえを入力すると肩を撫で下ろし、一息つく。
(…まぁ、良いか。)
私は名前をうち終わると決定キーを押した。
すると、画面は閉じ、辺りを見回すとまだ悩んでいる人達がいるようだった。
あの二人はもう決めているようで、那奈と話していた。
一人はかわいらしい顔立ちのアイドルみたいな服を着た女の子。
もう一人はどちらかといえば可愛い顔立ちの青年?くらいで、どこからどうみても勇者みたいだ。
(…私はなんなんだ?)
那奈とは意気投合しているが、正直私はあまり仲良くは出来ない気がする。
「ねーねーとりあえずさ!ゲーム内での名前で自己紹介をしようよ!それも楽しいと思うなー。」
那奈が私を見ながらそういうと、皆も賛成のようで頷いた。
私も正直どこの奴かわからないやつに名前を教えたくは無いので丁度良い。
「じゃーまず俺からー!」
手を大きく振り上げしゃしゃり出たのは可愛らしい顔をしたアイドルみたいな服の子だった。
(なんなんだ?俺って、あり得ないだろう。)
すると、隣にいた内気そうな勇者の男の人が申し訳無さそうに話し出す。
「ご、ごめんね、その、その子本当は男の子なの、ち、ちなみに私は女なので、宜しくね。」
「…。」
「…。」
カシファと那奈はお互い見つめあい、しばしの沈黙が流れる。
「「エーーーー!!!!???!」」