動き出す物語
「…ここは…立ち上がったのか?真っ暗だ。。」
自分の姿も見えない、どこを見ても暗闇…カシファはそんな場所にいた。
すると前方にモニターが現れる。
『こんにちは、このつどは本商品を買って頂き、誠に有り難うございます。』
「…。」
『それでは本ゲームを、楽しんで下さい。』
「…明るくなり始めた…のか。」
コンピュータがいなくなったと同時に視界が明るくなり吸い込まれる様な感覚に陥り、気がつくと今度は真っ白な世界になっていた。
「今度はなんだ?」
真っ白な世界にただ独り、孤独感は無いが、永遠に続くような白さに少しばかり恐怖感が出てくる。
『始まります』
コンピュータの声が聞こえると辺りに景色が一気に映り始める。
「…。」
煉瓦で綺麗に並べられた道に、家の屋根は藁で覆われていて、壁は石を積み重ねて作っている、少し古い時代を思わせる建物が並んでいた。
人はそれなりに多い、皆家の前のスペースで、物を売り買いしている、以外と盛んな所だった。
ハチマキと短パンで、まるでお祭りかの様に、針線をバンバン叩いている人に、値段を交渉する人。
可愛い浴衣姿でウキウキしながら、母親と買い物をしている子ども。
そして何故かこんな古い時代には似合わない格好をしている若い人たちもいた。
皆必死に何かを探している。
勇者のような格好をしている人から、怪しい格好をしている人まで様々だった。
(あの人達も、このゲームをしている人なんだらうな…さて私も那奈を探す…。)
「カシファーー!!!」
「事は無さそうだな。」
大声のする方を見ると、見慣れないお姉さんが、カシファの事を読んでいた。
回りの人は迷惑そうな顔をしながら通り過ぎて行く。
(うーん、どこからどうみても那奈じゃないなー、もしかして同じ名前の人でもいるのか?いや、あんなに大声を出すのは、那奈しかいない気がする。)
私はずっと叫び続けている彼女の元に足を運び、後ろから声をかける。
「…あのー、もしかして那奈さんですか?」
「カシ!!…?」
彼女は私の声に気づき後ろを振り向く。
ワァオ。
なんて美女なのでしょうか。
頭に密網をして、全体的に上げた髪に、顔立ちの良い綺麗な瞳。
ナイスバティなその体。
まさしく美女!
本当に大人っぽい方でした。
そして、開かれたその口から出てきた最初の言葉は。
「…あなた誰?」
チーン。
「…あ、い、いえその知り合いかなーと思って、ははは。」
(はずかしーはずかしーです。)
顔が熱い、とっても。
そうこうしてると、彼女が話しかけてくる。
「ねぇもしかしてカシファ?私那奈だけど…。」
(はい!来ましたー!当たりだった!)
「な、那奈か、私だカシファだ。」
「ほんとに!超可愛いじゃん!その格好!分からなかったよ。」
「ん?その格好?」
私は恐る恐る自分の体に目を向ける。
フリルの絞りの肩に、なんかヒラヒラしたスカート、髪の毛はツインテールらしく、毛先がくるくるしてる。
ガーン
「ち、違う!こんなの私の趣味じゃなくて、てゆーか、那奈の方が大人っぽくて良かった!誰が悲しくてこんな格好をしなくちゃならんのだ!」
「い、いやーあたしに言われてもー、ね!似合ってるよそのキャラ!いい味出してる!ね?」
一生懸命フォローしてくれる那奈を見て私は我に戻る。
(は!危なかったー、これじゃ本当にこのキャラみたいじゃないか、落ち着くんだ自分、よし、クールに行こう、クールにいつもの自分みたいに、そうだ!外見なんて関係ない、大切なのは中身だ、中身!そう、いつものようにクールにクールに…)
「…あのー大丈夫かーい?」
必死に自分に問いかけていると、またもや那奈が、申し訳無さそうに声を掛けてくる。
そしてまた我に戻る。
私はさっと振り返り、何もなかったようにクールに振る舞った。
「い、いや、別に大丈夫だ、うん別に。」
「は、はー、そーですかー。」
少し棒読みな気がしたが、それはどうでもい い…。
そんなやり取りをしているうちに辺りの人達も、自分の友達を見つけたのか、だいぶグループが出来てきた。
これから、どんなゲームが始まるのかカシファは正直楽しみにしていた。