事の始まり。
ある大きな屋敷の一角の部屋で、彼女は宙に浮くモニターで何やら調べていた。
その少女は真っ赤な髪を腰のところまで伸ばしている。
さらさらしたその髪はとても綺麗で、顔も美女と呼ぶに相応しい顔だった。
赤く大きなボタンが右に着いた、フリルのかわいいスカート。
首もとにはハートのネックレスを着けていた。
「…はー。」
少女がため息を吐き、外を眺めていた時、別の場所では、家を勢いよく飛び出している少女がいた。
「行ってきまーす!」
その少女は、オレンジ色の髪をショートヘアーにし、フード付の長袖を着ている。
黄緑に輝くその目は、とてもワクワクしているようだ。
緑のミニスカートのしたからは青いズボンを出し、スニーカーを踏みしめながら走っている。
左肩には青地に、黄色い熊の絵が印刷されたリュックサックを背負っていた。
それについていたキーホルダーには、二人の女の子のお人形がくっついていた。
荷物を持っているが、とても軽やかな足の運びだ。
季節は秋。
紅葉も色めく木々の道を、少女は見るまもなく通りすぎる。
首もとにはハートのネックレスを着けていたが、走っているためか激しく揺れている。
走り出して僅か3分ほどで、スピードが遅くなり
たちどまる。
少女はある家の門の前に立ち、膝を持ちながら、乱れた息を少しずつ元に戻す。
「はぁー…ふー…よし!…たのもー!」
それはもう近所迷惑なくらい馬鹿デカイ声だった。
すると門が開き、扉が開かれる。
少女はそれを確認すると、広い庭を一気に駆け抜けた。
玄関に入り、軽くお邪魔しますと言いながら靴を脱ぎ、真ん中にある広い階段を駆け上がる。
階段を上がって真っ正面の大きい扉を勢いよく開けると、そこには先ほど調べものをしていた少女が、息を切らす少女を見て、呆れ顔になっていた。
だが、短髪の少女は、テンションが上がっていて、そんなことは気にしなかった。
赤髪の少女の元へ走り、リュックサックの中を漁りだす。
「…どうしたんだ?今度は。」
赤髪の少女は不穏そうに聞くが、短髪の少女は目的の物を見つけると、今まで以上に声が出る。
「アッター!見てみて!最新作のゲーム!数が少なくて取るの難しかったの!なんとか予約して買えたんだー♪ねーやろうよー、せっかく二個買ったしさー、ねーったらー。」
まるで駄々を捏ねる子供みたいだ。
いや子供だけど。
赤髪の少女は腕を揺すられるが、全く動じない。
「はぁ、じゃぁちょっとだけな、今日は調べものあるし、大変だから。」
そう言いながら赤髪の少女は、パネルを閉じた。
「やったー♪さーすが!!早速やろー♪」
「那奈、テンション上がりすぎ。」
跳び跳ねて喜ぶ那奈に、少女は苦笑いをしながら、椅子から立ち上がる。
二人は部屋から出て、直ぐ右隣の片開きの黒くシックな扉に入る
中にある全ての窓に黒いカーテンが掛けられ、中も薄暗かった。
その真ん中辺りに三台カプセルのような物が置かれてある。
丸い形をしたカプセルで人が二人はゆったり入れるくらいの大きさだった。
部屋の右側にはにはジュースバーが置いてあり、その反対側の左側には、くつろげるソファーが置いてあった。
そして三台のカプセルからは、10本はいくだろう、コードが沢山繋がれていた。
カプセルの正面には、ディスクを入れるところがあり、そこにゲームのデータを入れる様だ。
二人は早速、ソファー側のカプセルに寄り、一台ずつ那奈がソフトを入れる。
その上にある大きな丸いボタンを、手全体で押す。
するとそこから蛍光の黄緑色が機械を覆う。
その光は、部屋全体を照らし、辺りがよく見える。
「…ちょっと飲み物飲んでからにしよっか、喉乾いちゃった。」
照れくさそうに那奈が言うと、少女は頷く。
ドリンクバーの所へ行き、那奈はオレンジジュース、少女はカルピスを選び、ソファーで少しくつろぐ。
「…しないのか?ゲーム。」
少女は疑問に思ったのか、オレンジジュースを勢いよく飲み干している那奈に聞く
「うーん、するんだけど、何か正式に出来るのが、あと五分後なのよね、何か今回のゲームは皆で一斉に!…みたい、よくわかんないけど。」
そう話ながら、オレンジジュースをおかわりし、また勢いよく飲み干す。
「そうなのか、どんなゲームなんだ?」
少女もカルピスを飲みながら、質問する。
すると那奈は飲み干した、コップをジュースバーの隣にある、小さな流し場で濯ぎながら話し出す。
「うーん、あんまり説明見てないからあれだけど、RPG系みたいよ。装備とかも結構あるんだけど、ジョブは最初から決まってるらしい。」
そう話している間に、コップを洗い終え、逆さにし、コップ置き場に置く。
そして、ソファーに戻り再び座り込み、リュックサックの中から、少し薄めの本を取りだし、中をパラパラと見始める。
「ジョブは変えられないのか?」
「そう…みたい、何か属性がある的な事を書いてある。」
「属…性…ねぇ。」
真剣に説明書を読み返す那奈は、あるページで首を傾げる。
「うーん?ねぇカシファ?これ意味わかる?」
「んー?」
那奈が、カシファの方に本を持っていく。
「この次のページくっついてて分からんだよね?」
「不良品だな♪」
「えー!せっかく買ったのにー。」
少し残念そうにする那奈を見て、カシファは立ち上がる。
「そろそろ良いじゃない?」
「お!今から立ち上げたら良い感じね、さぁ気を取り直して、張り切ってゲームしましょー♪」
カシファは、カルピスがまだ入っているッこプをソファーの横にある小さなテーブルにき、真ん中の方のカプセルに向かう。
那奈は、ソファーの近くのカプセルに向かい、左側から丸いドアを開け、中に入る。
カシファもドアを開け、中に入る。
中は斜めに設置された、心地よさそうな椅子があり、頭の方にはヘルメットが下りる仕掛けになっている。
そう、この機械は、入ってゲームをするだけで、まるで現実の世界で生身の体で動いている感覚が味わえる最新型のゲームだ。
人の夢を見る能力を利用したらしい。
と言っても、最近はどこの家でもあるが。
カシファは椅子に座り、右側にある唯一のボタンを押すと、ピコッという可愛らしい音と共に機械音の様な音が少しの間鳴り響く
そして、静まるとカシファはドアの簡単な鍵を掛け、椅子に横たわりヘルメットを下ろして付ける。
あとは、寝る。
15分くらい経ったか、カシファは調べもので疲れていたこともあり、直ぐ眠れた。
一方那奈の方はと言うと、寝ている。
那奈の好きなことと言えば、寝ること。
何処でも何時でも寝れるのが彼女の特徴だった。
さて、その間に機械は立ち上がり、中が少しだけ光る。
これから新たな物語が始まっていく。
それと共に、運命さえも変えられなくなってしまう事すら、彼女達、今ゲームを始めた人たちは気づいていないだろう。
それがどれだけ悲しい運命でも
今回はこの小説を読んで頂ありがとうございます。
これからも努力しますので、アドバイスなど、お願いします。