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第8話

 我は呪いの書。

 中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。

 使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。

 まさに禁忌の書物。


 そんな我のいるオカルト研究部だが、この日、部員の一人である土屋茉莉がこんなこと言い出した。


「ねぇ、こっくりさんやらない?」

「え……なんで?」


 わずかな沈黙の後、愛実が聞き返す。


「いや、だってオカルト研究部なのに、それっぽいことやってないし、ちょっとはオカ研らしいことしようと思って」

「たしかに……」


 ふり返ってみれば、最近はホラー動画の撮影やら編集やらに時間を取られ、オカルト研究部らしい活動をしていなかった気がする。

 オカルト研究部なのだ。曰く付きの品々やら、怪しげな儀式を実証実験しなければ。


「でも、なんでこっくりさん?」

「いや~だって、なんか本格的なのはやると後が怖そうだし」

「まぁ、一理あるわね」


 実際はこっくりさんも、手順を間違えれば大惨事になりかねないし、手順通りやってもたまにヤベェことになるが。

 まぁ、その点に関しては愛実は詳しいし、いざとなれば我がなんとかすればよい。


「それじゃあ、やってみる?」と愛実は美羽も誘い、こっくりさんをやることにした。


「うぅ……なんか、怖いよぉ……」

「大丈夫よ、美羽ちゃん。十円玉から指を放さないでね」

「んじゃ、始めますか!」


 そう言って、こっくりさんを始める娘三人。


「じゃあ、手始めに……こっくりさん、こっくりさん、愛実ちゃんと竜幸くんはどこまでいってますか? お応え下さい」

「またんかい!!」


 開始早々、待ったが入った。


「なあに?」

「なあに、じゃないわよ!? のっけからなにを聞いてんのよ!!」


 プライバシーの侵害はなはだしい質問をする茉莉に、愛実がツッコむ。

 しかし、茉莉は平気の平左とばかり「くっくっくっ……」と低く笑い……


「ひっかかったな阿呆め‼ あたしがこっくりさんをしようと誘ったのは、部長と龍幸君とのあまいあまーい恋愛模様を根掘り葉掘り土砂崩れが起きるまで聞き出すためさ!」

「いや、ホントなに言ってんの、あんた!?」


 勝ち誇った笑みを浮かべ、高笑いをする茉莉。

 どうやら、愛実はこの悪鬼に陥れられたようだ。

 おのれ、なんという女だ‼

 いいぞ‼ もっとやれッッッ‼


「え? 部長と龍幸先輩ってそういう仲だったんですか⁉」

「えー? 美羽ちゃん、知らなかったのー? 駄目だよ、恋愛センサーの感度上げとかないと。行き遅れちゃうぞー♪」

「うさっ‼ ホント、うざ‼ 何様なのよあんた!?」


 語尾に草でも生やさんばかりに笑う茉莉を、殴りたくなる衝動を抑えられない愛実。

 されど、今はこっくりさんの真っ最中。

 十円玉から指を放せば、災いを招くだろう。

 土屋茉莉、恐るべき策士である。


「さ~て、では早速、質問に答えてもらおうか!」

「くっ……あとで覚えてなさいよ、あんた」


 忌々し気に睨みながらも指は離さない愛実。

 そんな中、十円玉は答えを示さんと動き始める。

 こっくりさんが導き出した答えは――




『手を繋ぐ』




「……あんたにはがっかりだよ」

「うるさいわね‼」


 完全に失望しきった視線を向ける茉莉。

 ふむ、どうやら、思ったよりも進展してなかったようだ。

 我的にはキスぐらいまで行ってて欲しかったんだけどなー。


「いいなぁ……なんか青春って感じで……」


 一方で羨望の眼差しを向けるのは、オカ研の天使こと美羽である。

 うむ、キミだけは変わらないでいて。


「ま、いいや。次行こうか。こっくりさん、こっくりさん。部長と龍幸君のはじめての時の勝負下着は何色がいいですか?」

「堂々となに聞いてるのよ⁉」


 堂々としたセクハラ質問。

 これはひどい。TPOを弁えろ。

 だが、いいぞ。もっとやれ。

 奥手な愛実には、こういう起爆剤が必要なのだ。


 して、回答は――


『黒』


「黒……」


 初心な美羽は頬を赤らめ――


「黒ww」


 いい性格してる茉莉はニヤニヤし――


「黒ぉ!?」


 当の本人が絶叫する。


「黒ってなによ⁉ 黒ってなによぉ!?」


 頭を片手でかきむしり、抱える愛実。

 そりゃそうだ。キスもまだしてないのに、はじめての時の勝負下着が黒とか。

 冒険しすぎである。


「黒……」


 想像してしまったのか、美羽は顔を真っ赤にしてうつ向いてしまう。

 彼女にはまだ、早すぎた話題だったようだ。


「部長、中々セクシーですね(笑) これなら、龍幸くんのご子息も大満足ですよ♪」

「殺されてぇか⁉ テメェ‼」


 唯一、茉莉だけが平常運転。

 愛実を煽る余裕すらある。

 この女、本当にいい性格をしている。愛実のキャラが変わってしまう程度には。


「頭きた‼ こうなったら、あんたの秘密も今ここでこっくりさんに――!?」


 だが、愛実が報復に出た瞬間、予想外のことが起こった。


「あれ? 十円玉が」


 答えを示したはずの十円玉が動き始め――


『否、白』


「「「⁉」」」


 先ほどまでの答えを否定した。さらに驚くべきことに――


『いや、黒だ! 黒の方が彼女の容姿に合っている』

『普通に白だろう。はじめてで黒なんて冒険しすぎた。相手、ドン引きだろう』

『ふん、黒下着の良さを分からぬとはこれだから、キツネは保守的で嫌になる』

『なんだと貴様、田舎タヌキの分際で昨今の恋愛事情を語るか? 泥船に乗せて沈めてやろうか? あ“?』


「「「……」」」


 まるで言い争うかのように、動く十円玉。

 すると愛実が、おそらく全員が思っていることを口にする。


「ねぇ、これって、ひょっとして……」

「「……(こくん)」」




「こっくりさん、二人来てる?」




 予想外の事態である。


 面白いと思っていただければ、お手数ですが「いいね!」もしくは、下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。

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