第4話
我は呪いの書。
中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。
使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。
まさに禁忌の書物。
今宵も我を求めて、愚かな人間が……
「怨怨怨怨……殺殺殺殺……っ‼」
……一際ヤベェの来たな。
え? なにこの人?
なんか、全身黒ずくめなんだけど。
鹿の骨で出来たお面被ってんだけど。
長い鎌みたいなの振り回してんだけど?
ここ数日で我を利用した人間の中でも、半端ないガチ度の恰好である。
いくら全校生徒帰宅した後だからって、こんなん入れていいの?
警備員、仕事しろよ
「殺す……殺す……あの男を殺す……」
そう呟きながら、鶏の血で六芒星の魔法陣を書き上げ、蝋燭を設置。
我を開き、呪文の詠唱し始める。だが……
「エロエロエッサイム、エロエロエッサイム……我の求めに応えて、悪魔よ、望みを叶えたまえ……‼」
……思いっきり間違ってんだけど。エロエロエッサイムってなに?
エロい人の呪文?
「……あんた、それを言うならエロイムエッサイムだからね?」
「へぁ!?」
ちょうど部室に入ってきた部長こと時田愛実が代わりにツッコミを入れてくれた。
突然の出来事に悲鳴を上げ、黒づくめは転倒。
その拍子で、蝋燭を倒してしまうわ、余った鶏の生き血をぶちまけるわ大惨事に。
「いたっ!? あ、蝋燭! やべっ‼ 早く消さないと‼ あぁ、生き血が!?」
醜態を晒す黒装束を冷ややかに眺め、愛実はため息を一つ吐き、こう尋ねた。
「で、あんた、一体何やってんの? 高屋敷生徒会長?」
転げまわった挙句、「痛ッ‼」とロッカーにぶつかった拍子に、お面が破損。
かくして黒装束の正体がこの学園の生徒会長・高屋敷澄玲であることが、白日の下にさらされるのであった。
「……実は昨日、彼氏にフラれたの」
ひとしきり醜態を晒し、部員総出で後始末を終えて、とりあえず落ち着きを取り戻した澄玲は経緯を語り始めた。
「おーい、みんなでお菓子作ってきたぞ~‼」
『わーい‼』
「今回は私も作ったのよ‼」
「部長の作ったのどれですか?」
「卵の殻が入ってるやつだろう」
「入ってないわよ‼ 失礼な‼」
「人の話聞いてくれない?」
……が、完全スルーし、モグモグタイムに突入。
まぁ、たしかに勝手に部室に入り、鶏の血をぶちまけた女の話など聞きた義理はないか。
「そう言えば、次の動画どうします?」
「ちかくに荒神祀ってるっていう祠があるから、それの調査かしら?」
「いいね‼ なんかオカルト研究部っぽくて‼」
仕舞いには、無視して会議を始める始末。
これには豆腐のようなメンタルは粉々にブレイク。
「シクシクシク……」と擬音を口にしながら、泣き始めた。
(……あの、なんか、泣き始めたんでしたけど)
(これは100パーセント嘘泣きだから、無視していいわよ)
(でもこのまま放置しても、また床に鶏の血をぶちまけて、適当な儀式を始めますよ?)
(掃除が面倒くさくなるわね)
かくして、このまま放置して部屋の片づけを丸投げされるのと、今ここで、このめんどくさい女の話を聞くのと、どちらかマシか?
考えた末、後者を取ることにした。揃いも揃って、人がいいことである。
「まぁ、一応、仕方なく聞いてあげるけど、フラれた原因は?」
「しゃあねぇなぁ、こいつ」とため息を吐き尋ねる愛実。
すると、澄玲は「聞いてよ‼」と感情丸出しで大声を上げて、愚痴を言い始めた。
「実はゲームで対戦した時、伝説勢だけで構成したパーティーで相手を蹂躙したらいきなりキレて――」
「はい、終了」
「いや、最後まで聞いてよ‼」
「聞いて損したからこうなってんだけど?」
「そうですね、聞くに堪えませんね」
メガネをクイッと上げて、愛実に同調したのは山南志信。
元科学部であるが、部員を確保できず廃部となったところを吸収合併され、現在ではご意見番的立ち位置を獲得した、理系男子である。
「まったく、伝説だけで構成されたパーティー使うなんて、劣勢になったら“だいばくはつ”を使うよりもマナー違反ですよ」
「いや、山南さんも“だいばくはつ”使うじゃないですか」
「僕は愛を持って爆発させてますんでセーフです」
「僕だって愛を持って爆発させてますよ」
「二体も覚えさせてる時点で確信犯でしょうが。二連チャンで大爆発する人間初めて見ましたよ。手持ちを道具としかみていない人間のやり方ですよ。人の心ないんか?」
「人をロ〇ット団みたいに言わないでください」
「ロ〇ット団のほうがまだマシですよ」
「あの、話、逸らさないで……」
ゲームの戦法で言い争いになる二人に控えめにツッコんで軌道修正。
すると今度は元手品部の女子・土屋茉莉が物申す。
彼女も部員不足で廃部後、吸収合併された口だ。
「でもさぁ、ゲームで負けたからって、別れるなんて言い出す男なんて絶対ロクな男じゃないよ? 別れて正解だったんじゃない?」
「まぁ、たしかに正論だわな」
うんうんと同調する拓郎。
我も同意である。たかがゲームにムキになりすぎて、せっかくの大魚を手放すのは、愚かにもほどがある。
賛同者を得て調子に乗ったのか澄玲は「でしょー!?」とさらに、まくしたてる。
「おまけにパーティーの中にバグ技で出したやつがいたんだけど、それでバグってレポート消えたの私の所為にしてきたんだけど⁉」
「……まぁ、事故だし許せる範疇かな?」
「で、その後格ゲーでハメ技使いまくって、すごろくゲーで王様貧乏神なすりつけ――」
「はい、解散。同情の余地なし」
「え? ちょっと、待って……?」
……前言撤回。彼氏の英断だわ。
「いや、完全に悪いのはそっちでしょうが」
「あーあ、彼氏くん可哀そうに」
「ちゃんと、謝った方がいいっすよ」
「無駄な時間でしたね」
「んじゃ、また明日~」
もう、関わり合いになりたくない。
そう言わんばかりの態度で解散し、本日の活動はこれにて終了。
「いかないで‼」
しかし、愛実の足に縋り付き、離脱を阻止。
泣きながら話を聞いてと、喚き始める。
「だってしょうがなかったんだもん‼ ここ最近、問題の後始末に翻弄されてストレスたまってたんだもん‼」
「まぁ、たしかにこの学校、金田一さん家のお孫さんの通う学校張りに不祥事起きてますからね」
龍幸が遠い目をして呟く。主に映研のアレとか、野球部のソレとかである。
彼もまた被害者故に、気持ちは痛いほど分かるのであろう。
「私悪くないのに関係各所に頭下げに行って、先生たちは先生たちで『部活動が乱立しているのも問題では?』とか意味不明なこと言いだして、実績のない部は廃部にする羽目になって、みんなから目の敵にされるし……私悪くないのに‼」
「あー……それもあるか……」
そういうのはちゃんと学校側が対処すべきだと思いたい。
対応に追われて迷走してるのかもしれないが。
「だからゲームでくらい気持ちよく勝ちたかったのに‼ あのくらいで『もう連絡しないでね』って‼ ひどすぎない⁉」
「それは自業自得だと思う」
それはそれ。これはこれと肝心なところはキチンと〆る。
そりゃそうだ。データまで破壊され、汚い技でコテンパンにしたらキレるのは仕方ない。
「はっきり言うけど、あんたのは単なる逆恨みだから。キチンと謝ってヨリを戻した方がいいと思うわよ?」
「わ、私もそう思います‼」
正論を叩きつける愛実に同意し、先ほどまで拓郎の背後に隠れていた元文芸部の砂原美羽が控えめに言う。
「あの、私が言うのもなんですが、謝ったら負けだとか、そういうのじゃなくて、今の関係を終わりにしたくないとかで考えたらいいと思います……そうでないと、あとで後悔するかもしれませんし……」
「うぅっ……返す言葉もない……」
澄んだ目で見つめられながら説教され、最早、観念したかのように項垂れる澄玲。
彼女も彼女で心の底では、自分にも非があると認めていたのだろう。
素直に過ちを認めた澄玲を見て、これにて一件落着。
「じゃあ、代わりと言っちゃなんだけど、校長の禿に呪いをかけちゃダメーー」
「はい、解散」
……と思ったら、懲りていなかった。
最早、つき合ってらんねぇと部員たちは速やかに帰宅。
その後、ポツンと残った澄玲は「あれ? みんな? 帰っちゃうの……?」と呆然としたまま取り残された。
「ふ、ふん! いいもん‼ こうなったら、本気で呪いの儀式とかしちゃうもん‼」
頬を膨らませて、すねながら儀式を再開する澄玲。
その態度に反省の色はまったく見えない。
……なので。
ビシィ‼
「ひぃ!? ラップ音が!?」
おしおきとして――
ガタン‼
「ひゃっ!? 額縁がいきなり!?」
ポルターガイストとか起こしてみた。
ガタガタガタガタ‼
「ぎゃあああああ⁉ 机が勝手に動いてるぅぅぅぅぅ!?」
そしたら面白いくらいビビり散らかしましたとさ☆
めでたし、めでたし。
◆登場人物◆
・時田愛実
彼氏も出来て部員も増えて順風満帆なオカルト研究部の部長。
その分、色々な厄介ごとにも巻き込まれているそうな。
イーブ〇進化の先はエー〇ィ派。
・芳野龍幸
陰キャの癖に美人の彼女を手に入れた爆発しろ要員。
オカルト研究部の活動で撮った動画は彼が編集してる。
ベトベ〇ンのみならずカビ〇ンにまでだいばくはつを覚えさせてる危険人物。
ブラ〇ッキー派。
・月島拓郎
失恋を乗り越えた元野球部。
近頃はDIYで備品やセット作りに精を出す。
サンダー〇かっこいいよね。
・山南志信
オカルト研究部のご意見番。元科学部だが、割と活動には寛容。
龍幸と大戦後、二回連続だいばくはつされ、リアルファイトに発展しかけた。
ブース〇―モフモフしたひ。
・土屋茉莉 83/61/84
元手品部で拓郎と同じセット要員。
初期段階で「風祭茉莉」と言う名前にしかけたが、冷静になって辞めた。
推しはリーフィ〇。
・砂原美羽 84/57/84
元文芸部の脚本担当。
オカルト研究部に迷い込んだ天使。
部長からは可愛がられている。
ニン〇ィアがお気に入りだがグレイ〇アも捨てがたい。
以上、オカルト研究部のメンバーである。
実は未登場の幽霊部員が存在するのだが、今回は出番なし。
そのうち登場予定。
・高屋敷澄玲
学校の問題を解決しようと奔走するも、うまくいかず彼氏と破局。
もーせかいなんてこわれちゃえーと闇堕ちするも、呪いの書のポルターガイストで心折られたw
ショックで寝込んだが、逆にゆっくりできてメンタルも回復したので、もう少しで復帰するらしい。
初恋はシャ〇―ズだが、けつ〇んをメインに入れたせいでデータが消えた。
面白いと思っていただければ、お手数ですが「いいね!」もしくは、下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。
むしろ、両方やってください!
この作品の大体の世界観が分かる作品のあれこれ
追放されし者たちの話
https://ncode.syosetu.com/s1979f/
作者の人間性が大体わかる作品のあれこれ
世にも奇妙な王道ファンタジー
https://ncode.syosetu.com/s6617g




