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これが私の、コスパ魔法の戦い方!

「よく見ていて、ハイデリカ。

まずはレッスン1。

防御からよ」


路地が金属音で満たされる。

短剣に斧、そして——長剣ね。

殺意。それも素早い殺意。


三方向から、私めがけて同時に刃が走った。

だけど、私は動かない。


「この世界の魔力はね、空気みたいなものよ」


刃が迫るその刹那。

周囲の魔力が一斉に流れを変える。


「魔法障壁は、時にコスパが悪いわ。

ならピンポイントで置けばいい。

攻撃というのは、当たらなければ意味がないもの」


速さで歪む空気に、わたしはそっと指先を置いた。

刃の軌道が、ほんのわずか噛み合わなくなる。


「三人の斬撃は速い。

それすなわち、自然界の魔力の歪みだって早い

歪む魔力の断片にだけ、障壁を展開して受け流す」


短剣が壁を裂き、斧が地面を割り、長剣が虚空を斬る。


「なっ――!?」


男たちが息を乱す。


「さすが元ギルドってところかしら。

太刀筋はみごとね。

では、レッスン2といきましょうか」


淡々と述べる私に、男たちが吼えた。


「ふッざけんなぁ!!」


長剣がわたしめがけて、振り下ろされる。


「次は攻撃よ。魔力で狙うべき場所は、決まってるの」


私は剣先ではなく、柄の付け根を見据えて、そこへ魔力を集中させる。

パチンッ——と指を鳴らす。

次の刹那——

男の手から剣が弾け飛んだ。


「――なっ!?」


「これで、攻撃手段を一つ奪った」


三人目が後ずさる。


「……なんだよ、こいつ……!」


私は男たちを鋭く睨んだ。


「ラストレッスンといきましょうか」


私は歩きながら言う。


「ダメージはね。一でもいいのよ」


一歩ごとにパチンと指をはじく。

その度に無数の閃光が、私の周囲を覆っていく。


「ダメージは1よ。どうってことはない。

痛みだって軽い。


私の魔力が生んだ光の粒が、やがて鋭い豪雨のように男達に降り注いでいく。


「……が……っ」


男の膝が、次々に崩れた。


「不思議でしょ? 

1だって無数に浴びれば、鋭い槍のよう。

戦闘不能ね」


「て……撤退だ……!」


誰かが叫び、男たちは仲間を引きずりながら、路地の奥へ逃げていく。

私は追わなかった。


「……逃げられちゃったわね」


肩をすくめる私の背後で、

ハイデリカは呆然と立ちつくしていた。


「どう?これが魔力操作よ。わかったかしら?」


「えっと……

ぜんぜん、わかりませんでした!」


「きっぱり言ってくれるわね。素直なところ良いけれど」


でも、次の瞬間。

桃色の瞳が、きらりと輝く。


「でも、すごいことだけは、わかりました!

これを極めれば……」


ハイデリカは心を落ち着けるように息を吸って。


「魔王さえ倒せるってことですもんね!

つまり、どんな強敵にだって勝てる……!」


彼女の声はとても澄んでいて、希望に満ちていた。

私は少しだけ間を置いてから言う。


「……理論上はね」


ハイデリカが苦笑する。


「……理論上、ですか」


「ええ。これも、そのうちわかるわ。

それはそうとハイデリカ……」


男たちが逃げていった路地を見据えながら、私は気になっていたことを問う。


「混み行った事情を抱えているようね?」


辺境に1人で出向く皇女。

使えない皇族ID……。

刺客。

婚約者——。


ハイデリカは一瞬ためらってから、小さく頷く。


「……黙っていて、ごめんなさい」


「まあいいわ。誰にだって秘密はあるものよ。

私だって、死人なわけだし。

話す時間は、後でいいわ。いまは先を急ぎましょう」


私はハイデリカの手をとって歩き出した。

ひんやりと冷たい手だった。


「あの、先を急ぐって……どこへですか?」


「そうね……」


私はふと立ち止まって、ハイデリカの顔を正面からみた。

桃色の銀髪が光を反射して、きらきら輝いている。

整った可愛い表情は、どこか不安そうだ。


「ハイデリカって、お金どれくらいもってる?」


「……へ?

え、え、えっと……

たっぷり? かな? かな?」


戸惑うハイデリカが、キョトンとしながら首をかしげる。

ごもっともだけれど、


なんで、そんなこと聞くの?


とでも言いたそうに。

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