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玉露の秘薬と、妃の影 〜後宮の片隅で香と医術をひそやかに〜  作者: 楠木 シオン
第一章:翠華宮にて
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第4話:静寂の書庫と、揺れる心

夜の帳が後宮を包み込む頃、シンファは書庫の薄明かりの下、埃をかぶった古い医学書の一節を指で辿っていた。


「毒の症状と香料の組み合わせ……これは」


彼女の眉間に皺が寄る。昨夜李華が告げた「後宮の陰謀」が、ただの憶測ではないことを示す証拠が、この古書の中に眠っているように思えた。



静かな書庫の隅で、宦官の李華は背筋を伸ばして座っていた。


「シンファ、おまえは何を求めている?」


その問いに、シンファは目を伏せた。


「……真実です。ただ、私にはどう動いていいのかまだわからなくて」


李華はしばらく沈黙した後、静かに言った。


「宮廷は迷路だ。真実はその迷路の奥深くに隠されている。だが、おまえには迷わず進む勇気がある」



書庫の外では、夜の後宮を見張る侍衛たちの足音がかすかに響く。


その音が消えた瞬間、陰影の中から一枚の紙片がひらりと床に落ちた。


シンファがそれに気づき、そっと拾い上げる。そこには、意味深な記号とともに「次は茶葉を狙う」という文字があった。


 


「誰が……」


彼女の声は震えた。




その時、李華の顔に一瞬の迷いが浮かんだ。


「この警告は……後宮のどこかからだろうが、確かに我々に対する挑戦でもある」


「……私は怖い。でも、逃げてはいけません」


シンファの決意がその瞳に強く映った。



翌日。後宮の庭園では、何事もなかったかのように花が咲き誇っていた。


だが、シンファの心には鋭い痛みが走る。


「この美しさの裏に、何が隠されているのだろう」


彼女はそっと懐から小さな香包を取り出し、手のひらで転がした。


「次は絶対に見逃さない」


物語は静かに、しかし確実に動き出す。


後宮という迷宮で、二人の影が絡み合い、真実へと迫っていくことになる。

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