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19 新たな守護者 4

登場人物紹介(他のキャラ含めた詳細は70話)


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで‥‥?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 爆炎が上がり、二つの人影が反発するかのように吹き飛ぶ。双方が別々の家に叩きつけられ、壁を突き破って中に転がり込んだ。


 その片方――レレンの方へ、女魔術師のララが女神官のリリを強引に引っ張っていく。

「治療を急いで!」

 ララの切羽詰まった声に、リリは目を白黒させつつ頷いた。


 そんな二人の前に、レレンが自力で転がり出てくる。

 己の技で満身創痍だが、火傷を抑えつつも二人を安心させようと微笑を作った。

「案ずるな。私は炎属性のダメージを半減できる。共倒れではない……勝算あっての攻撃技だ」

 ダメージ比較なら己が圧倒的に有利。肉を斬りつつ骨を断つ新技――ブレイズエクスプロージョン。



 一方、それを食らったマスターボウガスは。

 己が叩き込まれた家の玄関から出てきた。二本の足で立ち上がって。

 しかし赤い鎧から煙が上がり、端整な顔には火傷も負っていた。多少ふらついてもいる。全くのノーダメージでは無いようだった。


……が。

 ぐい、と顔を拭うと傷が塞がり、消えた。ふらついていた体も真っすぐに背筋を伸ばす。

 まさに()()()()負傷が癒えたのだ。 


「ゲーッ! 効いてない!」

 慌てふためくリリ。

 レレンは半ば茫然と呻いた。

「ば、バカな……」


「思った以上だった、と認めてはおこう」

 そう言いながらもボウガスの目には優しさの欠片も無かった。

 黄金色に輝く剣を手に、まっすぐレレンへと迫りくる。


 だがそこへ割り込んだ男が一人。

「よーし、ならオレが相手だ!」

 威勢よく叫ぶタリンだった。


「ちょっと? どう考えてもやられるでしょ」

 呆れるスティーナ。

 それにタリンが叫ぶ。

「うっせー! やられるまではやられてねーよ!」

「よく言ったわ。さすがリーダー。死んでいいからそいつを食い止めて」

 ララはそう言うと呪文を唱えた。タリンの剣に凍気がまとわりつく。

「おう、支援魔法か。よーし、俺の新必殺技が炸裂するぜ!」

 息まくタリン。

「後悔するぞ貴様……」

 マスターボウガスの声は少々苛立っていた。場違いな馬鹿が割り込んでくる鬱陶しさに。

 だがタリンはせせら笑う。

「コーカイ? なんだそりゃ食った事ねーな」


 だがその時。

 屋根の上の影針(えいしん)が目を見開いた。

「馬鹿な!?」


 その視線の先にいるのは。

 聖剣を手にしたガイだった。



「貴様、ガイ!? 生きている筈が無い!」

「蘇生したのさ」

 狼狽(うろた)える影針(えいしん)にガイが平然と答える。

 影針(えいしん)が歯ぎしりする音が微かに聞こえた。

「馬鹿な……二重の毒素で痛んだ屍からの復活など! 今まであれで蘇れた者などいなかった」

「何事にも最初の一人はいるもんだ」

 落ち着きはらうガイの、それが返答だった。



「奴を仕留めたと聞いたし、報酬も支払ったが。ああして生きている場合はどうする? まさか知らぬ存ぜぬか?」

 ガイを睨みながらも影針(えいしん)へ声をかけるボウガス。

 影針(えいしん)は……何も答えない。

 だがその腕が微かに動いた。


 直後、ガイが聖剣をふるう。

 その刀身が()()を砕いた。影針(えいしん)が投擲し、闇の中を飛んできた球を。

 しかしその球は破裂するととともにドス黒い粉を撒き散らす!


 毒粉を入れた球だった、と判明した時。ガイは既に粉に巻き込まれていた。

 しかし……ガイは特に様子変わる事なく前進し、粉の舞う中から出てしまう。

 影針(えいしん)の目が驚きで見開かれた。

(直撃でないにせよ、あの状況でなら吸い込んで多少の被害がある筈。なぜ効かぬ?)


 ガイが道端の植え込みにスッと手を伸ばす。

 指が触れると、枝先に実が現れた。花が咲いて……ではない。実が枝から生えたのだ。

 しかもその実は、植え込みの木とは全く別の実――寒冷地帯の希少な植物から採れる物で、水領域の珠紋石(じゅもんせき)の素材になる物だった。

 それを二つもぎとるガイ。手の中で実が珠紋石(じゅもんせき)に変化する。

 本来なら時間をかけて工房で生成する筈の物が、掌の中で……だ。


 ガイは二つの結晶を木刀に嵌め込んだ。

『ディープ・フリーズ。ディープ・フリーズ』

 木刀が呪文を読み込む。

 そしてガイは聖剣の切っ先を影針(えいしん)へ向けた。


 凍気の渦が()()発生した!

 それは影針(えいしん)を巻き込み、全身を凍てつかせる。

 影針(えいしん)が絶叫をあげ……凍気の渦が消えるや崩れ落ちて膝をついた。そのまま立つこともままならずに呻く。


「な、何が一体!? なぜ素材がその場に発生した? なぜその場で生成できる? 二つの魔術を離れた所に撃ち込むだと……? 今までそんな使い方をした事は無いはず」


 その疑問に、ガイは。

「より習熟したという事かな」

 淡々と答えた。



 ガシャリ、と鎧が音を立てる。マスターボウガスが進み出たのだ……ガイの方へ。

「私がなんとかするしかないようだな」

 黄金色の剣を構え、間合いを測りながらガイへ近づいた。


 ガイは再び近くの木に手を伸ばす。

 触れた枝の先に、先ほどは別の、木本来の物とも別の実が生えた。

 それをもぎ取り、握る。

 手の中でそれは瞬く間に変化し、さっきとは別の珠紋石(じゅもんせき)となる。


 ボウガスが剣を振るった!

 ガイは飛び退きながら生成した珠紋石(じゅもんせき)を聖剣にセット。

 眩ゆい光がボウガスへ放たれた。



 ガイは剣を避けきり、間合いを離して着地する。

 ボウガスは……鎧のあちこちから煙を上げて呻いていた。

「気づいたか、貴様……」

 その苦々しい声に頷くガイ。

「色々と考えて思いついた、可能性の一つだけどな」


タリンがやられる場面は冗長になると判断し、今回は入れませんでした。

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