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18 死亡‥‥! 3

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 ガイはゾウムシ型運搬機の背中に駆け込み、中で横たわる機体に乗り込む。モニターに火を入れると同時に、ゾウムシの背中が開いた。

 そこから立ち上がるガイ機。それに花吹雪が吹き付け、装甲が増設されてパンドラキマイラへと変形した。胸の獅子、両肩の蛇と山羊、そして兜を被った人の頭の、八つの目が輝く。

 その時には、敵……古代竜を改造した怪獣ジュエラドンは目前に迫っていた。


(俺一人でやれるか? だが敵はあくまで兵隊……これより強力な本体を倒す必要があるんだ。負けていたら先は無い!)

 ガイは操縦席に差し込んだ聖剣に珠紋石(じゅもんせき)をセットする。

 そんなパンドラキマイラへ怪獣が口から破壊光線を吐いた。


 セットしたのは炎領域の結晶。聖剣が呪文を読み込む。

『スーパーノヴァ。』


【スーパーノヴァ】炎領域6レベルの呪文。術者を中心に全方位へ数千発の焦熱光線を放ち、範囲内の全てを焼き貫く。


 以前、魔王軍親衛隊時代のマスターキメラを倒した極めて強力な攻撃呪文。ガイは今の手持ちで最強の札を開幕直後にきった。

 機体胸部の獅子が口を開き、そこから無数の熱線が怪獣へとシャワーのように放たれる!

 怪獣の吐いた破壊光線と、それは正面からぶつかった。


 熱線は確かに怪獣の全身へ命中し敵を穿った。

 だが怪獣の破壊光線もまた、熱線の束の中を突き破ってガイ機にブチ当たった!

 装甲が砕け、煙を上げながらキマイラは吹っ飛び、山の斜面へ叩きつけられる。たまらずイムが「ひゃあぁっ!」と悲鳴をあげた。

 激震する操縦席で、ガイはモニターに映ったダメージを読み取る。


(この威力! 以前食らった、全身から撃つ光線の雨より遥かに強力だ! 収束させているぶん、口から吐く方が威力が上がるってわけか)

 一方、怪獣へのダメージや敵のコンディションもまた表示されるのだが……

(期待したほど効いてない!? 熱だからか、光線だからか?)



 だからといって倒れているわけにはいかない。この場で怪獣と戦えるのはガイのキマイラだけなのだ。外の様子を見れば、レレンが一人で魔物兵の群れと戦っている。

 ガイは機体を立ちあがらせた。


 だがその隙にも怪獣は地響きを会ってながら接近していた。

 キマイラを敵の剛腕が殴打する。

 かと思えば太い尻尾も!

 表示された攻撃力は、量産機なら無傷でも粉々になりかねない威力だ。


 やはり不利であった。聖剣には【自動回復(ヒーリング)能力】があり、その機能もまた増幅されてパンドラキマイラを支えているのだが、もしそれがなければ撃破されていかもしれない。


 ガイは急いで次の珠紋石(じゅもんせき)をセットする。

 呪文が読み込まれ、キマイラは怪獣の首を掴んだ。


 無論、怪獣はキマイラをねじ伏せようと振りほどきにかかった。

 だがしかし。

 キマイラの全身が不気味でさえある紫の輝きを帯びると、装甲に負った破損が高速で修復されてゆくではないか。

 逆に怪獣の全身、結晶のような鱗が次々とひび割れた!


【ライフスティール】魔領域第6レベルの攻撃呪文。敵の生命力を吸収し、己への活力に変換する。


 ガイが選んだ呪文は魔領域の高位呪文――以前、マスターボウガスに何故か逆流させられ敗れた呪文である。だが今度こそ、ガイの狙い通りに形勢をひっくり返してくれた。



 苦悶の声をあげるジュエラドン。

 ガイは聖剣に珠紋石(じゅもんせき)をセットする。だが先刻までに比べ、魔法のレベルは落ちていた。

 強力な珠紋石(じゅもんせき)は素材も希少だし、製作に時間もかかる。ガイは村の地主になり金まわりは良くなったが、それでも高レベルの珠紋石(じゅもんせき)をいくらでも揃えられるわけではないのだ。


 聖剣が()()の呪文を読み込む。

『ライトニング。ファイアーボール』

 パンドラキマイラが剣を抜いた。

 天から稲妻が落ち、それを受けた剣が燃え上がる。

(これで決まってくれ……!)

 ガイはすぐ目の前にいる怪獣へ、キマイラを斬りかからせた。

「雷火・一文字斬りぃ!」


 炎の剣がジュエラドンを切り裂き、食い込んだ。

 そして敵の体の中程で、火炎と電撃が爆発を起こす!

 体内から爆破された怪獣の体が破裂し、結晶のような鱗がキラキラと宙に飛び散った……。



 大ダメージを受けて所々破損しているパンドラキマイラ。

 それでも勝利……人造巨人は剣をしまう。

 ガイは改造古竜ジュエラドンに勝った。



 その頃には敵兵士も半数ほどがレレンに倒されていた。その残りも怪獣が倒されたのを見て一目散に逃げだす。

 機体に膝をつかせ、ガイはハッチを開けて縄梯子で降りた。


 ただ一人取り残された元副隊長は、疲労困憊しながらもゆっくりと迫るガイを見て悲鳴をあげた。

「ななな、なんで!? アンタの村はあれに負けたのに? なんであれに勝てるの!」

 腰を抜かしてブッたまげ、地面にへたり込む元副隊長。もはや戦意の欠片も無い。

「グーズ……」

 彼の名を呼びつつレレンも迫った。

 多少の手傷を追っているものの、彼女もまだ戦闘は可能だ。


 一転、尻もちをついた姿勢から鮮やかな動きを見せる元副隊長。

 くるりと体勢を変え、額を地に擦り付けて土下座した。

 彼の実に無様な泣き声が響く。

「参りました! 降参です! 私が間違っていた、貴方達が正しい、話し合いましょう、話せばわかる!」


 尻を高々と上げながら泣いて伏せる元副隊長の、途方も無く惨めな姿。それを前にガイとレレンは顔を見合わせ……呆れて溜息をついた。



 だが――元副隊長は、伏せた顔でニヤリとほくそ笑んだのだ。

「……と見せかけて、今だァ!」



 土下座は油断を誘うための演技にすぎなかった。

 素早く身を起こすと、その手にはポケットから取り出した毒々しい玉。それをガイへと投げつける。


 いや、投げつけようとはしたのだ。

 だが元副隊長の手を離れる前に、玉へ細い針のような棒手裏剣が飛んで来て突き刺さる。


 玉が爆発した!


 毒々しい爆煙が辺りを一瞬で呑み込む。

「ウギャアァァ!?」

 元副隊長の断末魔があがった!


 もし玉が投げられてから爆発したなら、ガイとレレンなら跳び退って逃げる事ができただろう。

 だが爆発があまりに早く……二人は煙に捉えられた。



 煙の中で激しく(むせ)るレレン。

「一体何が?」

 そう呻いた途端に()()()()

 ぎょっとした彼女は、煙が相当に有害な毒である事を悟る。

 慌てて煙から転がり出るも、体内を襲う痛みに膝をついたまままた咳き込む。すぐには立つ事もできない。


 人間を大きく超える生命力の彼女がそんなザマであった。

 ならばガイは……?


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