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18 死亡‥‥! 2

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 ガイ達の前に現れたのは魔物兵の群れだった。その旗はもはや見慣れた物……魔王軍、その残党。

 それを率いて声をかけてきた肥満体の兵士に、ガイ達は見覚えがあった。チマラハの街にいた、かつてのマスターキメラ隊の副隊長である。


「貴様! グーズ!」

 いきり立つレレン。

 元副隊長はニヤニヤと嫌らしく笑っていた。

「お久しぶりですなあ、元マスターキメラ殿。自分を叩きのめした男に尻尾をふるとは、いつのまにやら見下げ果てた女になられました。腕よりも(こび)で食っていく方が性に合っておられたという事ですか?」

「下種が!」

 相手の物言いに腹を立ててレレンが吐き捨てる。

 だが元副隊長はニヤついたまま「フン!」と鼻を鳴らし、露骨に見下す視線を向ける。

「寝返ったあんたに言う資格はない。残党とはいえまだ魔王軍に私はいるのだからな。ガイに恨みを晴らすついでに、あんたには裏切りの罰を受けてもらおう。もちろん死刑だ!」


「殺せー!」「血祭だー!」「ヒャッハー!」

 後ろのゴブリンやオークどもが嬉しそうに沸き立った。


 レレンは兵士どもを睨みつけ、拳を握る。その拳が熱を帯びて光を放った。

「傷さえ癒えれば貴様らに後れをとる私ではないぞ!」

 だがレレンの怒りと闘志を向けられてなお、元副隊長はニヤついた表情を引っ込めない。

「ほうほう? ()()()、ね。本当にそうですかなあ?」



 大地が鳴動した。何事かと辺りを見渡すガイ達。

 その原因は、すぐに咆哮とともに現れた。近くの山裾を回り込むように姿を見せる、見覚えのある巨体。

 大地を揺るがし身を乗り出す、魔竜を改造して生み出された怪獣・ジュエラドン。それが鱗を結晶のように輝かせる……!



「本当にそうですかなあ? あれ一匹に村は敗北しましたが! もちろん歩兵部隊として私らも戦います。私らに負けない? 本当に? 本当に~?」

 もはやニヤつくどころではなく、大口を開けて元副隊長は笑った。完全に勝ち誇り、太った体の胸をはる。

「ケイト帝国はいよいよ滅ぶ。私らが新王国を造り上げるのだ。その暁には私は貴族だァ~! 元マスターキメラ! 私の妾になるなら命は助けて可愛がってやろう。尻尾をふるならガイではなく私にするのだ!」


「ヤッちまえー!」「夜のバトルロイヤルだー!」「ヒャッハー!」

 後ろのゴブリンやオークどもが実に嬉しそうに、涎をたらして沸き立った。


「タリンにも求められていたし、意外とモテるのね」

 ミオンは呟き、レレンを横目で見る。

「そんな事を言っている場合か!」

 心底嫌そうに顔を歪めてレレンは怒った。


 そんな彼女に声をかけるガイ。

「レレン、歩兵の方は任せる」

 そう言ってゾウムシの運搬機へ戻るよう、ミオンに身振りで合図する。それは己がケイオス・ウォリアーで出撃するつもりでの指示。

 ガイは怪獣の相手を自分だけでするつもりだ。戦える者がガイとミオンしかいない以上、それは仕方のない事である。

 ミオンはそれを理解した。だからこそ厳しい顔でガイに意見する。

「一人だけで倒せる? 逃げた方がいいと思うわ」


 だがそうはさせまいと元副隊長は叫んだ。

「おいガイ! 影針(えいしん)様はカサカ村の連中を毎日一人ずつ死刑にすると言っていた。悠長に逃げ回っている暇があるのか?」

「……! なさそうだ」

 素直にそれを認めるガイ。

 確かに兵士どもや怪獣を撒こうとすれば、山中に逃げ込んで隠れながら村へ向かう事になるだろう。時間のロスが発生する事は避けられない。

(俺達を逃がさないためだと、わかってはいても……!)

 相手の思惑に乗って戦うしかないのだ。



 もうミオンは何も言わなかった。ガイと頷き合うと、二人一緒に運搬機へ走る。

「ものども! やれぇ!」

 元副隊長が号令をかけると、魔物兵どもが殺到してきた。

 レレンが炎の拳を敵の群れへと叩き込む。

「ブレイズボルトーー!!」

 爆発音と炎が巻き起こり、先頭にいたオーク兵が吹っ飛んだ。



 ガイはゾウムシ型運搬機の背中に駆け込み、中で横たわる機体に乗り込む。モニターに火を入れると同時に、ゾウムシの背中が開いた。


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