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17 竜の神 2

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

「俺、ミオン、イム……故郷にはこの3人だけで行ってくる。村を空っぽにするわけにはいかないからな」

 ガイは村の主な面々にそう告げると、ゾウムシ型の運搬機で出発した。



――霧深い山間部――



 運搬機一台ぶんの幅しかない山道を進みながら、ガイは助手席のミオンに頼む。

「ミオン。故郷では夫婦設定は無しにしてくれ」

「そうね……流石に親御さんにまで、こんな事で嘘をつくのは良くないか」

 ちょっぴり残念そうではあったが、ミオンは納得してくれた。

 ついでにガイはあらかじめ詫びておく。

「いろいろ我慢してもらうと思うけど、ゴメンな」

「?」

 わけがわからず戸惑うミオンに、ガイは溜息交じりに説明した。

「閉鎖的というか、硬直してるというか……あまり良くない意味で変化しない村なんだ」

 それを聞いて、ミオンにはピンとくる物があった。

「そういう所だから冒険者になったの?」

「うん。地元大好きでしがみつくか、嫌になって出ていくか。村の若い(もん)はどっちかで真ん中が無いんだよな」

 そう答えるガイは少々憂鬱なようでもあった。



――山奥の集落・シナナ村――



 山肌に沿って大きく弧を描く道をどれほど進んだだろうか。

 村を離れて数日、ついに山間の川の両岸に家屋の立ち並ぶ村が見えた。

 しかし……そこへ向かって道を進むと、段々畑から中年の男が飛び降り、運搬機の前を遮る。

何者(なにもん)だ?」

 男は露骨に警戒しながら叫んだ。


 ガイは操縦席の窓から顔を出した。

「俺ですよ、ギムおじさん」

「ガ……ガイ! 戻ってきたのか! そうか、都会なんぞは水が合わなんだのだな。よしよし、今日は宴会……い?」

 一転して嬉しそうな満面の笑みを見せた中年男は、しかし助手席のミオンに気づくと言葉を止めた。

 ガイはミオンを紹介する。

「あ、こっちはミオン。今はこの人の護衛をしています」

「初めまして」

 丁寧に頭を下げるミオン。

 ガイは本題に入ろうとした。

「今は仕事の途中で村に立ち寄ったんで……用事が終わったらまたすぐ出ます。大婆ちゃんは(やしろ)ですか?」


 だが農夫のギムはわなわなと全身を震わせる。

「その服……ケイトの都の女! ガイ、都会の女と帰ってきよったか!」

 内心(やっぱりか……)と思いつつ、ガイは話してきかせようとした。

「いや、事情はさっき話した通りで……」

「都会人にコキ使われとんのか!」

 ギムは話を全く聞かずに額を抑えた。

 内心(やっぱりか……)と思いつつ、ガイは思わずこぼす。

「なんでそうなる……」

「なんてぇこったぁ!」

 ギムは話を全く聞かないまま、村の中へと走っていった。


「あまり歓迎されてないみたいね?」

 戸惑い半分に言うミオンに、ガイは溜息をつきつつ応えた。

「ごめんな。こうなったら急ごう」



――シナナ村奥の社――



 ガイは寄り道せずに村の奥へ向かった。

 最奥にあるのは神社だ。そこそこ大きく、運搬機を境内に入れる事もできた。ガイ達はそこで降りる。

 境内に飾られた竜の石像――大きな球に絡みつく、角のある蛇――をミオンは見た。

「竜神信仰……確かにね。ここで何らかの助力が得られればいんだけど」



 だがそこへ、大勢の村人がどやどやと入ってくる。半分は中年、半分は老人の村人達だ。

「ガイだ! ガイが帰ってきおった!」

「本当に都の女を連れとる」

刺股(さすまた)じゃ! 刺股(さすまた)を持ってくるんじゃ!」

 村人の半数は刺股(さすまた)を手に、ガイ達をぐるりと取り囲んだ。


「なんだか人里に迷い込んだモンスターみたいな扱いね?」

「ごめんな……」

 戸惑うミオンに詫びるガイ。


 だが老人の一人がガイの肩を指さした。

「おいガイ! そ、そこにおるのは……」

「妖精のイムだよ、グオ爺ちゃん」

「こんちはー」

 ガイが紹介するとイムは天真爛漫な笑顔で手をあげ、挨拶する。

 村人達がにわかにどよめいた。

「妖精じゃ! 妖精がおるぞ!」

「ぬう、これは吉兆じゃ!」

「ありがたや、ありがたや……」

 老人の何人かは手を合わせて拝み始めた。

 この村の古い伝承では極めて貴重な縁起物なのだ。


 老人が拝み、中年が刺股(さすまた)を手にどうした物かと決めかねる。

 そんな中、包囲をかき分けて若い農夫が入ってきた。

「ようガイ」

「ゲンか。久しぶりだな」

 そう、この農夫はガイの同年代、子供の頃の旧友なのだ。

 そのゲンは呑気に話しかけてくる。

「仕事でここに来たって? 都会に出たのに大変だな、お前も」

「知らなかったかもしれないけど、世界中が大変だったんだぜ」

 世間と離れた村の様子に、ガイは今更ながら呆れてしまった。


 だがしかし。

「知っておる。だがこの村はビクともせんわ」

 キツめの女性の声で、ガイは後ろから声をかけられたのだ。

 子供の頃から聞きなれたその声にガイは振り向く。

「大婆ちゃん!」


 複数案から「古い因習に囚われた時代錯誤な村」にしておいた。

 龍神なんて物がいるのに世間に知られていないマイナーな地である事を考慮して、だ。

 ワシ自身は大阪という日本一のシティで生まれ育った由緒正しい事になっている土着民なので現実の田舎に住んだ事は無いが、多分そこそこ雰囲気は出せているのではなかろうか。

 まぁ山と木がいっぱいあれば田舎という事にできるやろ多分。

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