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13 チマラハ攻略戦 5

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 別の通路から現れた、魔王軍陸戦大隊の親衛隊・マスターキメラ。

 蛇鱗の鎧を纏ったがごとき、緑色に輝く爬虫類の鱗と獣毛の皮に覆われた体。顔は人のままだが、頭には山羊のような捻じれた角が生えている。キマイラ獣人の戦闘形態(バトルフォーム)に変身し、彼女は既に戦闘態勢にあった。


「生きていたのか」

 訊ねるガイに、マスターキメラは燃えるような視線を向けた。

「そうだ。貴様に雪辱するため傷を癒し、再び私はやってきた」


 そこへ口を挟む、元ガイのパーティメンバー・女魔術師のララ。

「ガイに負けたのに何を言っているの。私達も加勢するわ。完全に勝目ないわよ」

 その言葉にウスラが「うす」と呟いて頷いた。

 この二人は魔王軍に敗れて捕まっていた期間があるので、恨みも抱いているのだろう。

 ガイと共に戦えば負ける筈無しと考え、強気でエラソウだった。


 ララは杖をマスターキメラに向けた。

 その先端に魔力の輝きが集まる――


 だがマスターキメラが燃える拳を繰り出した。

「ブレイズプラズマーー!!」

 放射された幾条もの高熱波が辺りを駆け巡り、余す所なく焦熱地獄へと変える!


 だが()()の不十分な抜き打ちの拳である。ガイはとっさに聖剣で防いだ。

 後ろでミアンやスティーナが悲鳴をあげるが、ガイが攻撃を弾き飛ばしたおかげで無傷で済んだ。


 まぁ前に出ていたララとウスラは大火傷を負って吹き飛ばされ、壁にめり込む羽目になったが。


 しかし被害はそれに留まらない。領主邸に火がつき、派手に燃えだしたのだ。

「くそっ、外に出るぞ!」

 ガイの指示で皆が身を翻す。

 ララとウスラは農夫のタゴサックが両肩に担いだ。

 ピクピクと痙攣する二人を横目にスティーナが呆れる。

「何をやってるんですか、この人達」



――領主邸の前庭外――



 ケイオス・ウォリアーの運搬機まで逃げ戻ってきたガイ達。

 ウスラとララは後部座席に放り込まれ、タリンをやっとこさ治療したばかりのリリが手当を始める。

 しかし地面が揺れた。

 邸宅の陰から輝く鎧を纏った人造巨人が現れたのだ。


「あれは敵の白銀級機(シルバークラス)!」

「そうか……ケイオス・ウォリアーでの勝負なら勝目ありと考えたのだな」

 驚くタゴサック、納得するイアン。


 間違いなくマスターキメラが乗っている白銀級機(シルバークラス)は、獅子の頭部を持つメタリックグリーンの鎧の巨人だった。

 その右肩には山羊、左肩には蛇の頭部を模した大きな肩当て。

 彼女の乗機もまたキマイラを模した物だった。


「けれど今はこっちにも白銀級機(シルバークラス)はあります」

 スティーナは運搬機に乗り込む。ガイはその荷台、格納部へと走った。


 敵の白銀級機(シルバークラス)が迫る中、運搬機の巨大ミズスマシが背中を開く。

 その中から立ち上がる骸骨戦士型の機体、Sバスタードスカル!

「よし、行くぜ!」

『おう、目にもの見せてやる』

 ガイの声にシロウの頭蓋骨が応える。


 燃える館を背景に、二機の白銀級機(シルバークラス)が睨み合った。

 マスターキメラの乗機・Sヒートキマイラが燃える拳を繰り出す。

『ブレイズボルトーー!!』


 操縦者が一体化して動かす人造巨人、それがケイオス・ウォリアー。

 マスターキメラは己の技を遥か強大に増幅して打ち込んだのだ。


 それを剣で防いだものの、ガイのバスタードスカルは吹き飛ばされて倒れる!

 すぐに立ち上がりはするが、やはりダメージはあるようだ。


「なんか圧されてないか?」

「マスターキメラを倒した時の必殺剣をなぜ使わないのか?」

 タゴサックとイアンが疑問を口にする。

 スティーナがハッと気づいた。

「あ……使えないんじゃ」


 技は使える、増幅もできる。

 しかし操縦者の武器はそうはいかない。ケイオス・ウォリアーが使う武器は、あくまで()()()装備している武器なのだ。


 そして困難はもう一つあった。



「イム? ダメなのか?」

 ガイが訊いても、イムはしんどそうに翅を震わせるだけだ。

「なんかできない~」


 いつも機体を強化してくれるイムの力が、今回はなぜか発揮できない!


 唇を噛むガイ。

「くうっ……せめて聖剣が使えればな」

 するとシロウの髑髏がガチガチと歯を鳴らす。

『それをハンドルにしてみるか?』

 ガイは一瞬呆けるが――

「なんだって?……そうか!」


 髑髏に横に刺してあるハンドルを引き抜き、代わりに聖剣を差し込んだ。

 これで聖剣は機体の部品となった。ならばそのパワーを機体は使えるのでは?……という案である。

 ガイはハンドルにした聖剣を両手で握った。

「これで……どうだ!」


『ウギャアアァァーー!!』

 シロウの髑髏に亀裂が走り、断末魔のごとき悲鳴があがった。


 ブスブスと煙を吹く髑髏を呆然と見つめるガイ。

 やがてふと思い至る。

(あ……そうか、聖剣は「(Living)」属性で、シロウは不死怪物(アンデッドモンスター)だから……)

 相性。それが悪い可能性に、ここで気づいた。


 そして気づく事がもう一つ。

 ケイオス・ウォリアーにも種別があるのだ。

(この機体は不死型機に分類される。もしかしてイムの力が発動しないのもそこに関係が!?)


 そんなこんなでモタモタしているガイへ、マスターキメラからの無慈悲な通信が入る。

『トドメだ!』

「ちょ、ちょっと待て!」

『待つわけあるか!』

 ガイの駄目元の懇願もやっぱり駄目で、ヒートキマイラが炎の拳を容赦なく打った。


 超高熱波がバスタードスカルを打つ!

 赤熱、そして……爆発!



「が、ガイィ!!」

 ミオンの悲鳴が前庭に響き渡った。


ちょくちょく主人公がピンチになる作品だ。

そろそろ山場なので次回も見てください。

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