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9 来訪者達 6

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

――その日の夜――



 今のカサカ村には回復魔法の使い手が3人いる。村の司祭、尼僧のディア、ガイの元パーティメンバー・リリだ。

 だから魔王軍を撃退した後、ガイも治療を受ける事はできた。しかし何十人もケガ人がいるとなれば、一人一人を完治させる事はできない。回復アイテムは沢山あるが、今や村の売り物で、必要以上には使えない。


 というわけで、ガイは小さな傷をあちこちに残したまま帰宅する事になった。


 夕餉の支度をしながら出迎えたミオンは少なからず驚いた。

「今回は随分苦戦したのね」

「その分、成果もあったさ。聖剣の使い方がわかった」

 そう言うとガイは手に握った木刀を見る。

(まぁまだ能力がありそうだけどな……)

 それは直感によるもので、根拠は無いが。



――数時間後――



 風呂と夕食をすませ、包帯を巻いて着替えたガイ。

 テーブルについてミオンに声をかける。

「ミオンのいた街も教えてもらえる事になった。行ってみよう」

「えっ!?」

 食器を洗い終えたばかりのミオンは驚いて目を丸くした……が、すぐに領主カーチナガ子爵からの情報だと思い至る。

 動揺しつつも頷いた。

「そ、そう……まぁミオン違いという事も、あるかもしれないけど、ね」

「それをはっきりさせるためにもだ」

 ガイの口調は強く、意思と圧が篭っていた。


 しばしの沈黙。

 やがてミオンがくすりと笑う。

「この生活も結構楽しくはあったわ。ちょっぴり名残惜しい気もするかな」

 そう言うとガイの側に来て肩にしなだれかかった。

「ね? あ・な・た」


 いつもならガイは照れながらも恥ずかしがって焦り、それをミオンが楽しんで笑う所だ。

 が……


 ガイはゆっくりと優しく、けれどしっかりと、ミオンを己の体から離した。

「!?」

 いつにない反応にミオンは驚く。

 一方、ガイはテーブルに視線を落とし、目を合わそうとしない。

「そう……」

 ミオンは沈んだ声でそう呟くと、静かに自分の部屋へ戻った。


 それを横目で見送るガイは、再びテーブルへ視線を落とすと……ぐっと奥歯を噛みしめた。

(未練がましいぞ、仕事でやってる偽装夫婦だろ。いつまでも鼻の下のばしてんじゃねぇよ、ガイ!)


 そんなガイにイムがふわふわと飛んできて、肩に停まった。

 心配してガイの顔を覗き込む。

「どうしたの?」

「もうじきミオンは実家に帰るかも、て事だ」

 ぶっきらぼうにガイが言うと、イムは一瞬驚いた後、目に見えて落ち込んだ。

「どこか行っちゃうの? やだよ……」


 ガイが視線をあげた。

 妖精の少女に――どこか陰のある――微笑みを向ける。

我儘(わがまま)言うな。俺は……一緒にいるから」


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