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6 商売開始 3

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで‥‥?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 一歩、また一歩と、ガイの方へと近づく女魔術師のララ。

 身構えるガイ。

 ずんずんとガイへ近づくララ。

「?」

 戸惑うガイ。

 そんなガイの横に来ると、ララは「ほっ」と溜息をついた。


「やっと人類側に戻れた」


「「!?」」

 面食らうガイとマスターキメラ。

 そんな二人にララはいけしゃあしゃあと言う。

「ここまで来れば、ガイにキメラを倒してもらえば私は自由」



「あっー!」

 己の失態に気づいたマスターキメラ。

 ララは初めから魔王軍に協力する気なんて無かったのである。



「わ、私もそっちに……」

 呆然としていた女神官のリリが慌てて切り出したが、構わずにマスターキメラが怒鳴った。

「ええい! 見せしめだ、やれ!」

 一瞬、顔を見合わせた後、魔王軍の兵士達が捉えていた人間どもを叩きのめした。

 売上泥棒どもと、ついでにリリも。

「ぎゃーす!」

 ゴブリンの棍棒で殴られたリリが悲鳴をあげて、先に倒れていた売上泥棒達の上に倒れた。


「あー酷い」

 顔色一つ変えずに呟くララ。

「お前もな!」

 思わず叫ぶガイ。



 捕虜どもを殴らせておいて、マスターキメラは怒りの視線をガイに向けた。

「クソッ、やはり私が戦うしかないようだな。さっそく貴様が造ったアイテムの威力を貴様に……」

 そう言って風呂敷包みをまさぐり、掴んだ物を引っ張り出す。

 それは一升瓶だった。


「……ポーション?」

 首を傾げるマスターキメラ。

 酒瓶に見えるが、確かに魔法道具の袋から出てきたのだ。


 ガイが顔を(しか)める。

「あ、俺が一番売りたい奴じゃねぇか。あれ残ってたのかよ」


 それを聞いたマスターキメラ、どう見ても酒瓶だがその中身に口をつける。

 意を決して一気飲み。

 ごくごくと中身を空にすると……くらくらと頭を抑え、ふらふらとよめろめくと、路地に寝転ぶ浮浪者のごとくぱたりとその場に付した。


「倒れたけど」

 指さすララ。

 頭を掻くガイ。

「別に強い酒じゃないけど、一気飲みは流石にな」


 一升瓶はやっぱり酒だった。ジャバラから作った果実酒である。

 風呂敷包みは行商で売る品であり、別に魔法道具に限るなどという決まりはなかった。というかガイにしてみれば労働が己の肩にのみのしかかる珠紋石(じゅもんせき)の売れ行きは生活に足る程度でよく、村で造る飲食物の方が売れて欲しいのだ。

 マスターキメラはそこちょっと勘違いしていたのだ。



 マスターキメラは酒瓶を握ったまま、泣いてるかのような鼻声で喚く。

「ふぇー、ふぇー、ちくしょう、やれ、やれやれやっちまえー」

 酔っ払いが喚いてるように見えるし、まぁ事実そうなのだが、それでもそれは()()()()()()()だった。



 河の中から巨大な生物が現れ、鳴き声が響き渡った。

 扁平な体のずんぐりした怪獣が現れたのだ。

 バンザイするかのような両手、水かきのついた両足、三角形の頭をした両生類が……ガニ股でどしどしと歩く巨獣が。


「あんな遠くに出現させて何がしたいんじゃ」

 鍛冶屋のイアンが言う通り、村のすぐ側ではなく、はなれた位置に上陸したのである。

「まぁ酔っ払いのやる事ですからのう」

 村長のコエトールは半ば呆れていたが……


 怪獣はくるりと背中を向けた。

 そのには蓮画像のごとく無数の穴があいている。

 その穴から白い弾が撃たれ、放物線を描いて村の側に着弾した!

 次々と起こる爆発! 轟音と振動が村を揺るがす。


 揺さぶられながらなんとか踏ん張るガイ。

「遠距離攻撃型か!」

「ならばガイ殿!」

「ああ!」

 鍛冶屋に促されてガイは頷く。

 二人は走った。村の工場へと、そこに置いてあるケイオス・ウォリアーを出撃させるために。



 ガイは大砲を肩に担いだ重装甲機・Bカノンピルバグに乗り込んだ。二足歩行の甲虫が工場から、そして村から出る。

 それを見たカエルの怪獣は一声鳴くと再び背を向ける。

 その背から再び無数の弾が撃ち出され、ガイの乗る機体の周囲に炸裂した。

 爆風に揺さぶられる操縦席でガイは敵のデータをモニターに出す。


クラスターフロッグ

ファイティングアビリティ:130

ウェポンズアビリティ:140

スピードアビリティ:90

パワーアビリティ:120

アーマードアビリティ:140


(こっちの量産機とは比べ物にならない火力だな。撃ち合いじゃ勝ち目なしか)

 というわけで肩の妖精に声をかけた。

「頼むぜ、イム」

「うん、やってみる」

 イムはふわりと宙に浮き、翅を輝かせた。


 カノンピルバグの前方に虹色の渦が生じ、そこから白く細長い(えい)の花吹雪が吹き付けた。

 甲虫の機体は緑の追加装甲をその身に纏う。

 両肩に竹の葉のような巨大な肩当てが装着され、胸部装甲には稲穂のような模様が彫られていた。


 変化した自機のアビリティレベルがモニターに表示される。


パンドラピルバグ

ファイティングアビリティ:120

ウェポンズアビリティ:150

スピードアビリティ:110

パワーアビリティ:110

アーマードアビリティ:150


 さらにガイは現在の武装を確認する。

「こいつは……?」

 モニターの表示には、本来なら無かった装備が追加されていた。

元パーティの連中は主人公を追放したわけであり、主人公の事を別に好きでも無いわけだが、じゃあこの作品のこの展開で殺したいほど憎んでいるだろうか?と考えて、まぁこういう流れになった。

なお主人公の方も危険を冒して助けたいと思うほど未練は残っていないと思うので、ゴブリンの棍棒で折檻されても別に慌てたりはしないのでは……とも考えてまぁこういう内容である。

この回を書く前に考えるべきだったかもしれないな。

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