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5 特産品 3

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。


イム:ガイが拾った妖精。謎の木の実から生まれた。何かと不思議な力が有るようで‥‥?


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。

 ガイ達三人は村に帰還した。

 機体――Bダガーハウンドから降りるや、村長達が駆け寄って来る。


「戻られましたかガイ殿! して、成果は?」

 期待に満ちて訊いてくる村長コエトールに、ガイは操縦席を指さした。

「いくつか持ち帰ってみたけど、上手く行くかどうかはわからない。それに今から栽培しても収穫は来年とかだし……」

 ふわりと肩に着地するイム。

「やってみよ?」

 ガイは一度頷くと、改めて村長に訊いた。

「村の側に空いてる畑は無いかな?」

「ありますぞ。先日の魔王軍の襲撃でダメになった物が何カ所か」

 そう言って村長は村の外を指さした。



――郊外の田畑――



 焼け跡になっていた畑を、急ごしらえとはいえ耕して使えるようにはする。

 村人や難民にも手伝って貰い、ガイも作業をしていると……イムに襟を引っ張られた。

「どうしたんだ?」

 訊くガイをイムは引っ張り、どこかへ連れて行こうとする。

 仕方なくガイは村長に断り、イムに案内される先へ向かった。



「なんだ、帰りたかったのか?」

 イムが引っ張ってきたのはガイ達の家だった。

 しかしイムは家に入らず、隣の納屋へ。

「これ、これ!」

「え、これを持って行けって!?」

 驚くガイ。

 イムが促した物、それは――ガイが倒した魔王軍の()()()()()()()()だった。

 大きく嵩張(かさば)るので、燻製にして納屋へ保存しておいた怪獣の肉である。



 ガイ達が戻って来ると、畑の整地は終わっていた。

 1ヘクタールにも満たない範囲だが、これはイムの指示である。


「まぁやってはみるか……」

 ガイはイムに促されるまま、耕された畑に肥料を撒き始めた。

 納屋から持ってきた怪獣の肉を、半分ほど。

「が、ガイ殿!? そんなもん肥料になるのですか?」

「実験というか、ダメモトというか」

 驚愕する村長コエトールに、自信なく告げるガイ。


 肥料を撒いて土を被せ、いよいよ山で採取してきた植物の種や実を植えていく。どれもレアリティの高い、アイテムの合成素材に使える物ばかりである。

「これでいいのか?」

 ガイが訊くと、イムは元気に頷いた。



 ふわふわと畑の上空を舞うイム。

(あの時と同じ事を?)

 ガイが思い出したのは山中の隠し畑での事。


 その通り、イムは畑の上を舞うように飛ぶ。輝く鱗粉が舞い散り、畑の上に降り注いだ。

 すると――もこもこと土が蠢き、見る間に植えた植物が発芽し、芽吹く!


「ガイ殿! これは一体!?」

「ああ、イムには不思議な力があるんだ」

 驚く村長に教えるガイ。


 芽は見る間に大きく伸び、成長し――

――()()()()()()()()()()()()


「ガイ殿! 口がありますぞ!」

「どの株も俺の知っている物とちょっと違うな……」

 驚く村長の横で首を傾げるガイ。もちろん内心では驚愕しているのだが……。


 イムがガイの側に降りて来た。

「ごはん、あげて」

 ガイは頷き、怪獣の肉の残りを次々と投げつけた。

 苗達は勢いよくそれにかぶりつく。大きな牙で噛み千切り、咀嚼しのみ込んだ。


「ガイ殿! 牙が生えていますぞ!」

「よく食うな……」

 驚く村長に構わず肉を全て投げつけるガイ。もちろん内心では驚愕しているのだが……。


 苗達は肉を全て食い尽くすと、むくむくと再び大きくなる。

 それぞれの苗がそれぞれの植物に成長し、草も木も次々と花を咲かせ、実をつけた。

 (おのの)く村人と難民を尻目に、ガイは畑に入ってそれら植物を調べる。


「うーん……実自体は普通の物だな?」

 言いながらガイ自身が半信半疑である。

 しかし畑の周囲、村人と難民からは歓声があがった。

 村長のコエトールも太った体を揺すって大喜びだ。

「おお! さすがガイ殿! さすがガイ殿!」

「いやそこはイムだろ!?」

 ガイは抗議の声をあげたが、それに構わず農夫のタゴサックが満足げに頷く。

「しかしまぁともかくいくつも収穫できたわい。後はこれで色々作って、村の特産品になる物を探せばええ。小豆相場での失敗も取り戻せるかもしれん」

 ガイには色々と言いたい事がないでは無かったが、不承不承ながら納得する事にした。

「それで村が潤って、仕事の口も増えるなら、まぁ……」



 ところがその時。

 若い女の声がガイにかけられた。

「丁度いい。それは我々が貰おうか」

 驚き振り返るガイ。

 その声に聞き覚えがあったのだ。


 見た目は美しい町娘である。髪をヘアバンドで纏め、ディアンドルタイプの服を着ている。武具の類も荷物も持っていない。

 しかし剣呑な微笑みを浮かべるその女は――魔王軍の親衛隊、ワーキマイラ。


 彼女はガイのほんの数メートル先に入り込んでいたのだ……!

怪物を食ったり怪物から輸血したりすると、そいつも怪物になる。

なんかそんなパターンがある気がするのだが、具体例というとパッと出ない。

噛まれた奴も怪物になるパターンの変形なのだろか。しかし具体例というと……


ああ、KI太郎にそんなエピソードあったな。大海獣編みたいな奴が。

妖怪なら仕方がねぇ。

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