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25 この結末は間違っているけれど 5

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。世界樹の木の実から生まれた分身体。


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。その正体はケイト帝国の第一皇女だった。

――ケイト帝国首都ヨンアン――



 首都を囲む防壁の正門。

 かつてガイが魔王軍残党から守ったその場を、今はガイが押し通ろうとしていた。

 それを阻むべく守りにつくのは現ケイト帝国最後の部隊、レジスタンス【リバーサル】のリーダー・グスタが率いる第一部隊である。


 ガイへグスタから通信が入った。

『あんたは一体、何を考えているんだ。侵攻してきた奴を撃破してくれた礼は言うが……ケイト帝国の敵なのか? 味方なのか?』

「そこら辺はどっちでもいい。敵だけど味方はするつもりだ」

 イマイチ要領を得ない返事を堂々と返すガイ。

 それに戸惑いを覚えはするが、問答が無駄な事も感じ、グスタは小さく溜息をつく。

『しゃあねえ。勝ち目は薄いが止めるしかねえな。俺達がケイトの主力になっちまっている現状は妙な成り行きだが、なっている以上は責任て物がある』

 そう言うと彼は号令をかけた。

『突撃!』



 高レベルの攻撃魔法を使う相手に、密集して戦うのは悪手ではある。

 だが一軍を覆い尽くす破壊の魔法をガイが使える事は既にわかっていた。ならば散開した所で無意味。最短距離をつっきり、生き延びた者が仕留めるしかない。一応、あらかじめ対魔法防御の呪文はかけてある。

 グスタは自機Sメテオミノタウロスに先頭を走らせ、一撃でも叩きこまんと鉄球ハンマーを振り回した。


 対するガイは。

 操縦席の蔓から実をもぎとり、珠紋石(じゅもんせき)をその場で精製すると、それを聖剣に嵌めて読み込ませる。

『ミラー・イメージ。フラッドアタック』


【ミラー・イメージ】心領域第2レベルの防御呪文。術者の虚像を周囲に造り出し、敵の攻撃を分散する。

【フラッドアタック】水領域第5レベルの攻撃呪文。水流で敵を押し流す。近くに大量の水がないと効果を発揮しない。


合成発動(アマルガム)……ファンタズムタイダルウェーブ!」

 ガイの乗るサバイブキマイラ、その姿が分身した。

『幻覚か……なにィ!?』

 グスタは驚愕した。



――宮殿――



 二階にある大広間に、シャンリーは妹や重臣達と居た。

 緊張したまま報告をまつ彼らの前へ、大慌てで兵士が駆け込んで来る。

「ししし、シャンリー様! ガイ殿が来ました!」

 小さく頷くシャンリー。

「そう。やっぱり突破したのね。ほんの数人で……」

 だが兵士は血相をかえて叫ぶのだ。

「数人どころではございません!」



――首都の中――



 正門が砕け散った。そこから雪崩れ込んで来る、分身分身、また分身。

 サバイブキマイラの姿は呪文の発動とともに、数体が十数体、そして百体以上に増殖した。それに留まらずガイ達の他の機体も、運搬機さえもが同様に分身したのだ。

 【リバーサル】側の機体はモニターのMAPさえ幻惑され、ガイ達の機体反応で画面が埋め尽くされた!


 それでも流石に練度は高く、【リバーサル】の軍は多少の動揺はあれど突っ込んでいった……のだが。

 彼らの機体が、その攻撃が触れると、虚像は泡のように消えてしまう。

 そのくせ消えた端から次々とまた生み出されるのだ!


 そして幻の軍団は走り出した。いっせいに、宮殿へと。

 正門が破壊された事で実体が紛れているのは確実。だからグスタは叫ぶ。

『と、止めろ!』

『そうしようとは思うのですが!』

 【リバーサル】の兵達はそう叫ぶしかなかった。剣を振り回し、弾を撃ち、魔法で薙ぎ払おうとするが、これだけの虚像を全て捉える事はできない。そして破壊する端から虚像は増える。

 必死で足掻きながらも、幻の軍団が街中へ、そこを通り抜けて宮殿へ向かうのを止める事が誰にもできなかった。



――宮殿――



 大騒ぎと大混乱の中、無数の幻影が宮殿の庭を駆け抜けていく。

 しかし一機、サバイブキマイラが足を止めて窓にとりついた。操縦席のハッチが開き、ガイが二階の大広間――シャンリーの前へ跳び込んで来た。


「俺は今! 戻って来た!」

「きたよう!」

「そうみたいね、ガイ」

 叫ぶガイにはしゃぐイム。それに落ち着いて対峙するシャンリー。


 重臣達は慌てふためき、護衛の兵は決死の思いで抜刀する。

 しかし窓から次々と跳び込むガイの仲間達。彼らは兵達の前に立ちはだかった。

 熱線がほとばしり、兵士達の足を止める。

「しばらくでいい、邪魔はするな!」

 レレンの声が凛と響いた。



 イムを肩に乗せたガイ。それと向き合うシャンリー。

 二人の間には誰もいない。

 人は多けれど、阻む者は無かった。


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