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25 この結末は間違っているけれど 2

登場人物紹介


ガイ:主人公。冒険者の工兵。在籍していたパーティを追い出されたが、旅で妖精と記憶喪失の女性に出会った。なんやかんやあって今では村一つを丸ごと所有する地主。


イム:ガイが拾った妖精。世界樹の木の実から生まれた分身体。


ミオン:戦場跡で出会った記憶喪失の女性。貴族の子女だろう彼女から護衛を頼まれ、ガイは行動を共にしている。表向きは夫婦を装って。その正体はケイト帝国の第一皇女だった。

 ガイはイムを見上げる。

「シャンリーの事……好きか?」

「うん! 大好き」

 ()()()()()世界樹の分身である妖精イムは。屈託ない笑顔で。はっきりと言いきった。



 それを横目にララが聞えよがしに呟いた。

「未練があるなら今からでも泣きついてヨリを戻してくればいい。さよならバイバイ幸せにね」



 それに背を向けたままで。しかしガイは吐露する。

「俺の本当の気持ちは、許されない事かもしれない……」

 だがそれを、横からタリンが「はっ!」とせせら笑うのだ。

「どこの誰のどんなルールでだ? 帝国の法律なら別の国に行けばいいだろ。つまんねーコト考えてんなオメーも」


「正しいのか間違っているのか……正当性って物を、考えはしないのか?」

 タリンへと険しい視線を向けてガイは問う。

 だがしかし。

 タリン「はぁ?」と首を傾げる。

「セートーセー? なんだそりゃ食った事ねーな」


 そんなタリンを前に、ガイは考える。

(こいつを見習う事は、人間として間違っているから無いとして……俺はもう一度、考える必要があるんじゃないのか?)

 ふと、ガイは気づいた。

 微かに感じていた、自分への違和感の正体に。

 そしてそれを自覚した今――それは薄れて消えつつあった。



 自分の正直な気持ちは何だ?

 なぜ、自分はシャンリーの要求を断った?

 なにが受け入れられなかった?

 結局は、どうしたい?


 そして今……これから、どう動く?


 一つ一つ考えて。

 ガイの意思は決まった。


 改めて一同を見渡す。

 先日までの……いやそれ以上に確固とした意思をもった、ギラつきさえある瞳で。

「もう一度ケイトの首都へ行く。絶対に一悶着あるから……タリン、お前も来い」

「はぁ? お前のオンナ連れ戻すのを手伝えってか。馬鹿じゃネーノ」

 一転、呆れて顔をしかめるタリン。他人の色恋のために協力する気なんかさらさら有りはしねぇ。


 だがガイは眉一つ動かさない。

 こいつがそんな奴だという事は、とうの昔に承知の事実。

 だからこう付け加えるのだ。

「わかっている。報酬(ギャラ)なら出す」

「ビジネスの話か! OK、オレに任せやがれ」

 またまた表情一転、活き活きと叫んでサムズアップ!

 銭になるなら話は別だ。夜の店にも金は要る。

 まぁそのくせ値段交渉などした事は無く、昔から金銭の契約は他人に投げっぱなしなのだが。



 そんなガイに目をキラキラと輝かせ、スティーナが両の拳を握った。

「師匠! 奥さんを取り戻しに行くんですね!」

「ああ。()()()()にな」

「?」

 ガイの言い方に少々ひっかかる物を感じたが、ともかく、スティーナは大賛成だった。

 愛し合う二人が結ばれる事こそ、この世で最も尊い事なのだから。



 そんな中……いつの間にか家の壁に腕組みしてもたれている男が一人。

 彼は「フッ……」と静かに笑いながらガイへ告げる。

「決まったようだな。私も同行しよう」


 振り向き、驚く一同。ガイが男の名を呼ぶ。

「ユーガン!?」

 ガイ達が帰還した日、直前で別れた男がそこにいたのだ。


「お前の考え、薄々想像はつく。お前に挫かれた身としては、ぜひやらかしてもらいたい物だ」

 物静かにガイへ告げるユーガンを遠目から見つつスティーナは思う。

(この人、どこでタイミングを窺っていたの?)



 こうした騒ぎの輪の外で。

 レレンは皆に背を向け、黙々と己が作った弁当を食っていた。

「姉さん……」

 寂しさと悲しさの漂う背中に、小さな声をかけるララ。

 いったん箸を止め、振り向かず、レレンは沈んだ声を返す。

「行くさ、私も。ガイが好きな人と結ばれるのを手伝うために」

 そしてまた黙々と弁当を食べるのだ。

(ちょっと塩が多かったかな)

 彼女にそう思わせるのは、舌なのか、心なのか。


 まぁ涙のしょっぱい味でメシを食った経験がなければ、人生の本当の味は分からない物なのだ。


設定解説


【ビジネスの話か! OK、オレに任せやがれ】


 仕事に私情を挟まないのは社会人としてある意味正しいと言える。

 友達ヅラしてタダで人をコキ使おうなんて奴がいたら、そいつが友達なわけねーしな。

 このキャラも随分と人間ができてきたなーオイ。

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